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ウルトラマンエース(16) [ウルトラマンA・ドラマ2]

「ヤプールの地球総攻撃三連発」の最終回は、第23話 『逆転!ゾフィ只今参上』を取り上げます。

脚本;真船 禎  
特殊技術;高野宏一
監督;真船 禎
ナレーター;岸田 森

〖ヤプール老人〗
〖異次元超人ヤプール〗 登場


◆地球征服を狙うヤプール人は、これまでに様々な計略を巡らしたが、TACとウルトラマンAによってことごとく阻止されてきた。ヤプール人は遂に、自らが手を下す作戦に出てきた!

日中の買い物客でごったがえす都内某所に現れた、みすぼらしい身なりの老人。ボサボサの髪に薄汚い着物を着て、右手には杖を持ち、終末予言の街頭演説を始めたのだが、ほとんどの客は無視して買い物を続けていた。

だが、話が終わると、奇妙な歌を歌いだすのであった。
『お前はかーみ(神)を信じなさい ホレ信じなさい ホレ信じなさい♫ 』

この老人の歌にすぐ反応したのは、親と一緒に買い物に来ていた小さな子供達だった。老人のこの歌は、まるでドリフの志村けんのギャグのように、たちまち全国の子供達の間に広まっていった。しかも、流行り出しただけではない。

その老人が現れると、子供達はその歌を歌い踊りながら、老人の後を追いかけてどんどん集まってくる。そして集まった子供達は、老人と共に忽然と消えてしまうのだった。

老人は、やがて日本各地のありとあらゆる場所に現れるようになった。鹿児島、秋田、千葉、愛媛・・・転々と現れ、目撃される老人はみな同じ風体であった。みな同じひとりの人物なのか、それとも同じ人物に似せた別人なのか・・・。

『お前はおーれ(俺)を信じなさい ホレ信じなさい ホレ信じなさい♬ 』
その老人は子供達を集めては、演説をするのだった。

『海は青いか?』 と老人が問う。
『青い!』    と子供達は答える。
『違う!海は真っ黄色だ!見ろ!』
子供たちの目に、黄色い海が広がって見える。

『そうだ、海は青くない。真っ黄色だ!』
子供たちはそう答えて、老人に同意するのだ。

『山は緑か?』
『緑だ!』

『違う!山は緑ではない、真っ茶色だ!』
子供たちの目に、木々の緑がまったく無いただの土の山が見える。
『そうだ、山は真っ茶色だ!』
子供たちは復唱して、老人に同意するのだ。

『お前はお前を信じなさい ホレ信じなさい ホレ信じなさい♬ 』

洗脳されてしまった子供たちには、老人の本当の姿が見えてはいない。老人の目は鋭く吊り上がり、真っ赤な唇の端もまた吊り上がっていた。集まってくる子供たちは、老人を中心にして、円を描く様に回りながら歌い踊っていた。

パトロール中の北斗が、ポイント・XYZ地点で崖の上から付近一帯を双眼鏡で眺めていると、下に見える海岸で歌い踊っている老人と子供達が見えた。特に異常も無く、定時連絡を済ませた北斗は、もう一度崖の上から海岸の様子を見ていた。すると、双眼鏡の中の老人と子供達が一瞬にして消えてしまったのだ。

消えた子供達は、いったいどこへ行ったのか?老人と子供達を探すため、北斗は海岸へ下りてみた。すると、夏だというのに激しく雪が降ってくるではないか!吹雪の中であの老人ひとりだけが、海岸で踊っている姿を見つけた北斗は、老人を走って追いかけていく。

追い着いた北斗に振り向いたその男の顔は、ゴリラの顔をしていた。男は口から火炎を吐きながら、北斗に襲いかかってくるのだった。本部へ連絡したが、通じない。海岸に降りたはずの北斗は、いつしかゴリラ男に断崖絶壁へ追い詰められ、転落してしまうのだった。
『あーっ!』

あの断崖から落ちて、左手骨折と頭部打撲だけで済んだのは、不幸中の幸いと言うしかない。ヤケドも負っていた。このヤケドはゴリラ男が吐く火炎で負ったものにちかいないと、北斗の報告を信じる夕子は他の隊員達の前で断言した。

だが、他の隊員たちや竜隊長さえも、北斗の報告を信じてはいなかった。なぜなら、XYZ地点は断崖絶壁だが、すぐ下は海で砂浜など無いのだ。そこで実況見分をするために、XYZ地点に北斗を連れていく夕子。

現場では山中隊員と今野隊員が待っていた。
『この崖の下に、砂浜が見えるでしょう?』

そう言いながら、断崖へ立つ北斗がそこで見たものは、荒波と岩に散る波しぶきであった。唖然とする北斗。北斗にいたわりの言葉をかける山中隊員。
『お前は疲れているんだよ・・・』

しかし、子供達が消える事件は、日本だけに止まらなかった。世界中の子供達が集団で消えているという情報が、世界各国からTAC本部にもたらされていたのである。フランス、スペイン、アメリカ・・・主要各国の子供たちが、それぞれの言語で歌われるあの歌と共に消えてしまっていたのである。

竜隊長の姉の子供が二人消えたという情報が、もたらされてきた。竜隊長は、北斗に言う。
『北斗。これはこの世の出来事ではないんだ。夜空の星の数が、ここの処、急に増えたと思わないかね?』

空を見上げて、「そういえば・・・」と感じる所がある北斗。子供の消える数だけ、夜空の星が増えているのではないか。子供達が消えて星になる。これはこの宇宙ではない、他の超能力の仕業としか思えないという竜隊長。つまりヤプールの仕業としか思えないというのだ。

北斗が見たという砂浜も真夏の雪も、異次元世界の出来事だったのだろう。このままでは、地球上の子供達がすべて異次元に連れ去られて、人類は滅亡の危機にさらされてしまう。だが、どうやってヤプールに攻撃をしかけるというのだ?相手は異次元世界の住人だ。

現世界から異次元世界に突入する方法を、我々はまだ発見してはいないのだ。それを解決する手段を、梶技師は考えついていた。「メビウスの輪」の理論を人間に当てはめるという。「メビウスの輪」とは、裏の無い世界を作る方法のことだ。

ふつう、紙は2次元なので裏と表がある。だが、適当な幅に切った紙を用意して、一度ひねってからつなぎ合わせると、表しかない紙が出来上がるのである。この理論を人間に当てはめれば、異次元世界へ行くことが出来ると梶技師は言う。

ただし、人間は紙とは違い複雑な構造を持っているので、死ぬ危険性もあるという。だが北斗は、ヤプールを倒して子供たちを取り返すために、決死のその役を志願した。

メビウスの輪の理論で異次元へ向かうカプセル型マシンに、北斗は乗り込む。北斗の肉体がこの過酷な試練に耐えられるのか分からないが、すべての希望を乗せて実験は始まった。そして・・・ある時、梶たちが見守る前で、パッと消えて無くなるカプセル。

『どうした!梶君』
『隊長、成功です!』

子供たちを救うという強い思いと強い肉体が、北斗を異次元世界に送り出すことに成功した。いま異次元世界を漂流している北斗星司。だが、ヤプールの狙いはここにあったのだ。なぜなら、北斗だけではエースになれないからだ。その弱点を突いたヤプール作戦!

だが、はるか遠くM78星雲からの指令が、夕子に届く。今こそ二人が、手をつなぐ時だと。
夕子を異次元世界に連れていく役割を、ゾフィが果たす!
『行け、夕子。星司と共に。そしてヤプールを倒せ!』

ゾフィは異次元空間に夕子を放ち、夕子は北斗を探した。
『夕子!』
『星司さーん!』
『ウルトラ ターッチ!』

異次元世界に立つウルトラマンエース。異次元世界に住むすべてのヤプールがいま合体して、真っ赤な巨大ヤプールに変身した。腹部に腹黒い毛がたくさん生えている巨大ヤプール。
『来たな。ウルトラマンエース!』
『ヤプールというのは、お前か!』

エース対ヤプール、一対一の格闘。お互いに光線技を繰り出すが、お互いに弾き飛ばしてしまう。互角の対戦。だが、両手を左右に広げて放ったエースのストレート光線が腹部に命中、弱った所にメタリウム光線でとどめを刺すエース。

『覚えていろ・・・ヤプール死すとも超獣死なず!怨念となって、必ずや復讐せん・・・』

子供たちを誘拐していた謎の老人はヤプールの化身だったが、巨大ヤプールの死と共に消え去った。ヤプールの身体は大爆発して粉々になり、塵のように地球に降り注いでいった。

異次元世界に誘拐されてきた世界中の子供達が、ヤプールの死によって地球へ生還することが出来た。だが、これでは終わらない。ヤプールは最後の怨念を、自分の屍に込めた・・・。 (終わり)


★★★★★★★★★★★★
ウルトラマンAによって粉々になったヤプールの残骸が、地球に降り注いで赤い雨となり、配下のマザロン人の復活(第24話)につながっていく。

自分の身体の欠片を使って人間の女性に寄生したヤプールは、マザロン人と超獣マザリュースを造り上げる。だが超獣は虚像に過ぎず、エースは富士山の地下に隠れていたマザロン人を倒して、ここにヤプールの野望は完全につぶされたのだった。

マザロン人の話はさほど面白くないので、割愛して「三連発」にしました(^^♪
長くなりましたが、お読みいただき、ありがとうございました!
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ウルトラマンエース(17) [ウルトラマンA・ドラマ2]

今回は、第46話 『タイムマシンを乗り越えろ!』を取り上げます。

脚本;石堂淑朗  
特殊技術;田渕吉男
監督;古川卓己
ナレーター;岸田 森

〖タイム超獣ダイダラホーシ〗 登場


◆川にかかる橋の上で、トラックが連なって渋滞している。マンションの建設ラッシュ、工場の煙突から出るばい煙、太陽が出ていい天気の昼日中、超獣ダイダラホーシはA9地点に突如出現した。

目撃者の話では、突然空から出現して、地面に下りてきたという。町を破壊して、まるで笑っているかのようなダイダラホーシの鳴き声が響く。

通報を受けたTACは、タックファルコンとタックスペースで出撃した。ミサイル攻撃を仕掛ける両機。弾は確実に超獣に当たっていた。超獣はそれを嫌がるように、突如、街中を走り出した。

小型機タックスペースがミサイル攻撃して背中に火が付いた超獣は、ものすごい勢いである地点に向かうように爆走した。超獣ダイダラホーシが着いた場所は、街はずれというよりも村であった。

そこでくるりと反転すると、後から追いかけてくるタック2機に向かって、おいでおいでをするような仕草をする超獣。ヒザを曲げジャンプした超獣ダイダラホーシは、赤い光を発して空間に消えてしまった!

『あっ、消えた!』
『あれ、やっつけたのかなぁ?』

超獣を見失った両機のパイロットたちは、そうつぶやいた。大型機ファルコンに乗っている竜隊長は、基地へ戻るようスペースに指示を出した途端、本部から通信が入った。

『こちら本部。DX地点に超獣が出現しました。現地へ急行してください』
『了解、すぐ行く』

『今ここで消えた超獣でしょうか?』
ファルコンを操縦している北斗が、隣の席の竜隊長に訊ねた。
『わからん。DX地点はここから北へ100キロもある・・・』

今ここで消えた超獣が、100キロも時空を飛び越えて出現したとは考えられない。だが相手は、超獣なのだ。何があってもおかしくはない。進路を北へ取るファルコンとスペース。予想通りというべきか、DX地点に出現したのは、さっきの消えた超獣だった。

吉村と美川を乗せたタックスペースが、ロケット弾攻撃を先に仕掛けた。すると、ダイダラホーシはまたもや猛スピードで走りだし、タックの追跡を振り切るように逃げて行く。小型機スペースが先に追い着き、ロケット弾攻撃をする。

後からファルコンも同様に攻撃して、フラフラになったダイダラホーシ。すると、またしてもジャンプして赤い光を発しながら、空間に逃げ込んでしまうのだった。

だが今度は、超獣が空間に逃げ込むタイミングとスペースが突っ込んでいくタイミングが一致して、超獣が逃げ込んだ空間に巻き込まれてしまうタックスペース。

『隊長、スペースが消えました!』
『なに!』

スペースが超獣の前に回り込んでから、見えなくなったスペース。北斗は、不時着したのではないかという。ファルコンは着陸して、スペースの捜索をすることにした。

ファルコンが着陸した場所は、足窪村という地名であった。隊長以下、北斗、山中、今野がいくら探しても、スペースが不時着した形跡を見つけることは出来なかった。すると、隊長の通信機に吉村から連絡が入るのであった。

『よしむら、吉村か?どこに居るんだ?無事なのか?』
『はい、無事です』

『どこに居るんだ?』
『判りませんが・・・恐らくここは過去です。隊長達のいる時代から何百年か昔なんです!』

超獣ダイダラホーシは、過去の世界から現代にやって来て、危なくなると過去に逃げ込んでいたようであった。吉村と美川がいる場所は、ススキが生い茂る広い場所で、周りを見渡してみても、雑木林とススキしかない。

向こうの方から、豪族のような武者が数十人やって来て、囲まれてしまった。
『アカオニだ!ダイダラホーシの手下だ。やっつけるべぇ!』
『よせ。俺たちはダイダラホーシとは関係ない!』

刀やヤリを振りかざして、ふたりに襲いかかる豪族たち。通信は切れてしまった。
『ダイダラホーシって、なんだろう?』
『富士山を一晩で造ったとか、榛名山に腰かけて利根川でスネを洗ったとかいう、伝説上の巨人だよ』

足窪村のある盆地は、「ダイダラホーシの足あと」だという言い伝えや、ダイダラホーシを祭る神社があった。あの超獣はダイダラホーシで、足窪村のあるこの場所の過去と現代の時間を、行き来しているのだろうか。吉村と美川を助ける手段は、あるのか?

春木宇宙科学研究所で、極秘にタイムマシンを製作していることを竜隊長は知っていた。その試作品が出来上がっている頃だという。

だが、研究所へ行ってみると、ウサギを乗せて5年前に送る実験をしているだけで、吉村と美川のいる数百年過去に戻るには、大変危険でしかも未解決の問題もあると、春木博士は言う。

仮にタイムマシンで過去へ行き、そこにあった小枝1本を折ったことが原因で、現在のこの世界が存在しなくなる可能性もあると説明する博士。意識的に過去の世界へ行くことは、歴史を壊すことにつながると危惧する博士であった。

なんとかして、実験中のタイムマシンを借りられるように食い下がる北斗だったが、春木博士の説明で、この方法は無理だと悟った竜隊長は、研究所を後にする。だが、竜隊長には考えがあった。

竜隊長は、タックスペースに新装備を大至急付けておくように、北斗に命令した。再び、超獣ダイダラホーシが出現した。新装備を付けたタックスペースが出撃する。新装備は、先端が矢じりのようで突き刺さると抜けない、ロープが付いた特殊ミサイルである。

超獣は足窪村のある場所から、過去の時代へ逃げようとしていることは明白だった。超獣はジャンプして、空間へ逃げようとしていた。
『今だ、撃て!』

ミサイルの先端が超獣に突き刺さり、ロープに引っ張られてタックスペースも、超獣の消えていく空間に一緒に消えていった。竜隊長と北斗を乗せたタックスペースは異空間を通過して、吉村と美川のいる奈良時代に着いた。

豪族が現れ、タックスペースの北斗たちを見て、「アカオニ」と呼んだ。過去の時代を変えること無く、吉村達を救出することが目的だ。豪族たちから馬を奪い、吉村と美川を探す竜隊長と北斗。大仏開眼供養の場所で、磔にされている吉村と美川を発見する。

村人たちは、二人をダイダラホーシの生贄(いけにえ)にしようとしている様子だ。ダイダラホーシが出現して、村人たちは退散していく。二人を助けだすなら、今がチャンスだ。だが超獣が吐いた火炎によって落馬した竜隊長は、気を失ってしまう。

北斗はこのピンチに、ウルトラマンAに変身して超獣と戦うのであった。Aとの格闘の末に、開いた両手に発生したエネルギーを凝縮して相手に投げつけるエネルギー光線を受け、大爆発するダイダラホーシ。

歴史を混乱させること無く、歴史を救ったエースは、奈良時代に迷い込んだ2機のタックスペースに気絶している3隊員を乗せ、時間の流れを飛行して20世紀の現代へと戻ってきたのである。  (終わり)


★★★★★★★★★★★★
ダイダラホーシの鳴き声は、『帰ってきたウルトラマン』に登場した台風怪獣バリケーンと同じだ。

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ウルトラマンエース(18) [ウルトラマンA・ドラマ2]

今回は第48話 『ベロクロンの復讐』を取り上げます。

脚本;市川森一  
特殊技術;田渕吉男
監督;菊池昭康
ナレーター;岸田 森

〖ミサイル超獣 ベロクロン二世〗 登場


◆北斗は、タックスペースに乗って宇宙パトロールに出ていた。前方からやって来る流星群を発見し、緊急事態を本部へ知らせようとするが、本部からの反応が無い。よくよく見ると、それは流星群ではなくシャボン玉であることが判り、笑って謝りの通信を入れる北斗星司。

だが、そのシャボン玉の内の1個が巨大化して、中からベロクロン二世が出現する。北斗はエースに変身して戦うのだが、ベロクロンの口から吐きだしたミサイルがエースに当たり、エースは左の奥歯が痛み出すのだった。

左ほおを手で押さえながら、ベロクロン二世と必死で戦うエース。
『恨めしや、ウルトラマンAよ!たとえこの身が地獄へ落ちようとも、ヤプールの恨み晴らすまでは、幾たびとも蘇らずにはおくものか!復讐しろ、ベロクロン!』

あざ笑う女ヤプールの声が聞こえる中で、エースは歯の痛みをこらえながら、必死にベロクロン二世と戦っていた・・・。

ふと気が付くと、北斗はタックスペースに乗って宇宙パトロールをしていた。助手席で眠っていたらしく、汗だくであった。操縦しているのは山中隊員で、山中によれば、北斗は夢でうなされていたらしい。

『ベロクロンの夢を見てました・・・』
先輩として数々の超獣と戦ってきた山中隊員にとっても、ミサイル超獣ベロクロンは強敵として記憶に残っているという。だが、北斗にとっては、生涯忘れることが出来ない超獣なのである。

北斗はベロクロンによって命を奪われ、ウルトラマンAの命を得てよみがえり、今がある。北斗は、「ベロクロンが復讐に来た」という夢の内容を、山中に告げた。山中は、冗談交じりにこう言うのだ。
『(宇宙から見て)見ろ、もうすぐ日本は夜明けだ。明け方の夢は正夢になるというぞ』

二人は笑い合って、この冗談交じりの話が気に入っていた様子だった。北斗には、ひとつ気になることがあった。左の奥歯がさっきから痛いのだ。どうやら虫歯のようだが、今まで虫歯になったことなど一度も無かった北斗だった。

宇宙パトロールから戻ってきた北斗に、定時のB地区パトロール勤務が待っていた。TACの仕事は激務であった。他の隊員達と虫歯の話で盛り上がっていたところに、隊長命令の声が飛ぶ。早速タックパンサーで出発する北斗。

話を聞いた竜隊長は、パトロール中の北斗に虫歯の治療許可を出すのだった。
『北斗より本部へ。Q歯科医院というのがあったので、そこで治療します』

古いビルであった。エレベータで登って行き暗い廊下を歩いていくと、Q歯科医院の扉をノックした。
『どうぞ・・・』
扉の向こうは、窓から明るい光が射していた。真っ白な部屋の真ん中に、イスが一つだけある。

『歯が痛むんですか?』
カーテンの向こうから出てきた女医は、抑揚の無い言い方でそのように訊いた。北斗は、美人の女医さんに少々喜びを隠せない。

『そこへおかけになって・・・』
『口を開けて・・・』
『痛みを止める薬を詰めておきましょう』

北斗の歯に何か詰め物をした女医。銀色に輝く何かが見えた北斗は、何気なく今の治療内容について女医に尋ねた。
『先生、今のは?』

『痛み止めの薬を詰めて、その上をカプセルで覆っておきました。すぐ痛みは止まるはずです・・・』
北斗は礼を言って、Q歯科医院を後にした。タックパンサーに乗り、B地区のパトロールを再開した途端、痛みは止まったものの、何か視界がおかしいのだ。

ゆらゆらと陽炎のように視界が揺れている。北斗は車と止めて、外へ出てみた。すると、前方のビルの影から、突如ベロクロンが出現した。
『北斗より本部へ、B地区にベロクロン出現!直ちに出動願います!』

驚いたのは、山中隊員だった。北斗の見た夢が正夢になったのか・・・。
『ベロクロンが!?』

竜隊長はレーダー反応を美川隊員に尋ねたが、何もキャッチされてはいない。竜隊長もう一度、北斗に様子を確認させた。
『今ボクの目の前で暴れてるんです!』

北斗はそう言って、ビルの向こうに見えるベロクロンにタックガンを発射した。北斗の目には、ビルの谷間に暴れるベロクロンが見えていた。

B地区の様子を映しだすTACのモニターには、ベロクロンなど映ってはいなかった。そのうちに、北斗隊員がタックガンを乱射しているという通報が、警視庁から入った。

北斗は超獣が出現するとやるように、通行人に避難を呼びかけならが、超獣に向かってタックガンを連射していた。
『早く逃げろ!逃げるんだ・・・』

だが、普通の人が見ると、何もいない空に向かってタックガンを連射している北斗隊員にしか、見えなかった。気が付くと、北斗の周囲を警視庁の機動隊十数人が盾を持って取り囲み、拡声器を持って北斗に叫んでいた。

『北斗隊員。大人しく銃を捨てなさい・・・』
『君達には、あのミサイル超獣が見えないのか!』

竜隊長達が現場に到着し、ベロクロンなどいないことを北斗に説得して、その場は収まった。もしもタックガンの乱射で人身事故でも起こしていたら、北斗はもうおしまいである。しばらくの間、北斗に謹慎を云いつける竜隊長。

帰投後に行った北斗の精神鑑定は正常であること、山中が聞いた宇宙パトロール中でのベロクロンの夢の話、そして歯痛のこと。北斗の回りに起こったことを、聞き取り調査する竜隊長。

そこで竜隊長は、北斗が歯痛を治療するために、B地区にあるQ歯科医院に寄ったことを思い出した。そこでQ歯科医院に問い合わせて、北斗の態度に異常が無かったか調査するよう、今野隊員に指示した。

ところが、B地区にQ歯科医院は1件も無いことが判明する。そんな時、超獣ベロクロンの出現を告げる緊急連絡が、TACに入った。

その頃、謹慎中の北斗は、自分の行動がどこでおかしくなってしまったのかを論理的に思考していき、B地区のQ歯科医院で治療を受けた後からであることに気付く。

タックパンサーでQ歯科医院を目指す途中、北斗の目にベロクロンの姿が映った。だが、あれは幻覚だと自分に言い聞かせる北斗は、車を降りてベロクロンに向かってゆっくりと歩いていく。だが、ベロクロンが口を開けて放ったミサイルが付近に着弾して、北斗は爆風で吹き飛ばされてしまう。

通報を受けて出撃したTACは、ベロクロン一世の録画テープから口の中のミサイルを誘爆させれば勝てると、ロケット弾を口の中に撃ち込む作戦を立てて、タックアロー2機で出撃していく。

だが、ベロクロン二世は口内に撃ち込まれたロケット弾を、くわえたまま吐き出してしまう。逆に鼻先のツノから出す破壊光線で、2機のアローは撃墜されてしまうのだった。

爆風で吹き飛ばされたショックで、歯に埋め込まれた幻覚を見せるカプセルが外れ、北斗は正常な状態に戻る。だが、北斗を踏みつぶそうと狙うベロクロン二世の巨大な足が、すぐそこまで迫っていた。必死で逃げながら、北斗はウルトラマンAに変身する。

あらゆる物体を溶かしてしまうベロクロン液を、体内の毒袋から泡状にしてブクブクと吐き出すベロクロン二世の攻撃に、エースは苦しむ。

しかしエースは、ベロクロンの鼻先に生えた2本のツノをへし折ると、2本のツノをベロクロンの腹部に突き刺し、腹部が爆発を起こしてとどめを刺されてしまうのだった。

北斗は、武器を携帯してQ歯科医院へ向かった。女医の正体を暴くためであった。
『ベロクロンそっくりの超獣を操りオレの命を狙うからには、ヤプールの生き残りにちがいない!』

女医の顔は目と口元が吊りあがり、いつの間にか、白い着物を着た般若の形相であった。
『これで勝負が着いたと思ったら大間違いだよ。お前は勝った。勝った者は生き残り、負けた者は地獄へ落ちる。

勝った者は常に負けた者の恨みと怨念を背負って、生き続けてゆくのだ。それが戦って生き残っていく者の定めだ。よく覚えておくがいい・・・』

逃げようとする女ヤプールに北斗の銃弾が炸裂し、悲鳴と共に女ヤプールは消滅した。女ヤプールの消滅と同時に、Q歯科医院の真っ白な内装は、長いこと使われずに薄汚れた倉庫へと変貌していた。 (終わり)


★★★★★★★★★★★★
突然ボクシングの格好をしたり、相撲の四股を踏んだり、わけのわからぬ行動をするウルトラマンA。何なんだこれは?

ウルトラマンAのメインライターに抜擢された市川森一氏は、ある理由からAに対する情熱を失い、第14話を最後にメインライターを降りてしまう。エースも終盤が近くなり、メインライターの責任として最終回は書くべきだという橋本プロデューサーからの助言により、最終回と、その前に一本書いたシナリオが、このベロクロン編である。

なお、残念なことに着ぐるみの出来は、第一話のベロクロンと比べると各段によくない。新マンの最終回で登場した「ゼットン二世」と初代マンの「ゼットン」を比べて、いかがなものか?と思うような出来具合の差が、「ベロクロン二世」と「ベロクロン」の間にもある。

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ウルトラマンエース(19) [ウルトラマンA・ドラマ2]

今回は、第51話 『命を吸う音』を取り上げます。

脚本;石堂淑朗  
特殊技術;高野宏一
監督;筧 正典
ナレーター;岸田 森

【バイオリン超獣 ギーゴン】 登場


◆小学生のハルオは、草野球では4番でピッチャーというスポーツマンであった。だが、他界した父が有名なバイオリン奏者だったため、母親のスパルタ教育でキライなバイオリンを習わされているのである。

今日もホームラン性の当たりを飛ばしていながら、ホームベース間近で足が止まってしまったハルオ。それは、アンパイヤの後ろに母の姿をみたからであった。

外野から返ってきたボールを捕ったキャッチャーは、立ち止まっているハルオにタッチした。
『あーあ、なにやってんだよ~』

草野球をしている所へ母がやって来て、バイオリンのレッスンへ行くよう、うるさく言うのだった。
『ハルオちゃん。バイオリンのレッスンを忘れちゃ駄目でしょ!』

母のキツイ言葉に、イヤイヤ従うハルオ。
『ごめんなさいね。ハルオはバイオリニストにならなければいけないのよ』
母はチームのみんなにそう言うと、ハルオを無理やり連れて帰るのだった。

内山音楽教室の前に来たハルオは、入口で足が止まってしまう。後から来た女の子に背中を押されて、イヤイヤ入っていくハルオ。レッスンで内山先生に指名され、バイオリンを弾くハルオ。

『先生、ボク弾けません・・・』
ヤル気の無いハルオは、レッスンを投げ出して家へ帰ってしまうのだった。

家へ帰り、窓からそっと野球道具を持ちだそうとしたハルオを、内山先生から連絡を受けた母が鬼の形相で待ち構えているのだった。

仏壇の前へハルオを連れて行き、亡き夫の遺影に手を合わせたあと、母はハルオにこう言った。
『ハルオちゃん。お父様はね、天才的バイオリニストだったのよ。天才と言われたお父様の息子に、素質がないわけはないでしょ!』

ハルオはもう何度もその言葉を母から聞かされて、うんざりしていた。
『だって僕、バイオリンが嫌いなんだ。素質が無いんだ!』

だが、ハルオをバイオリニストにすることは、亡き夫との約束でもある。母はハルオを無理やり立たせると、バイオリンケースを持たせて家から送り出すのだった。

道端にバイオリンをそっと置いて、途中でバイオリンを無くした言い訳にしようとしたら、親切な男性が持ってきてくれるのだった。いっそのこと壊してしまえばいいと思い、地面にケースごとバイオリンを投げつけるハルオ。ぶつかったショックでケースのふたが開いて、バイオリンが露わになった。

その時急に、雷がバイオリンを直撃して、バイオリンは黄金色に明るく輝いて止んだ。すると不思議なことに、バイオリンと弓がひとりでに浮き上がってハルオの手に収まり、ハルオは素晴らしいテクニックでバイオリンを演奏し始めたのだ。

レッスン仲間の女の子二人が後ろからやって来て、こんな所で練習しなくてもいいのにと、ハルオに声をかけた。ハルオは演奏を止めると、気力が無くなったかのように座り込んでしまうのだった。

それを見ていたA子がハルオのバイオリンを取りあげて、またも素晴らしいテクニックで演奏し出した。すると、同じように気力を無くしてぱったりと座り込んでしまうA子。B子は、自分達の実力をはるかに超えるテクニックで弾けるこのバイオリンを疑問に思い、ハルオの母を呼びに行くのだった。

その頃、TAC本部のレーダーに異常な反応があった。タックパンサーで現場へ向かった北斗と美川は、座りこんでいる子供2人を見かける。
『おい、君。大丈夫か?』

『よかった。もうこれで、バイオリンのレッスンに行かなくて済む・・・』
そう言ってうつろな目つきで空を見上げているハルオ。その目の先には、空を飛んで行く大きなバイオリンと弓が見えた。

空を飛んで行くバイオリンと弓らしきモノを、北斗も見た。B子がハルオの母を連れて戻ってくると、北斗は事情をB子に聞いてみた。

『バイオリンを弾いたら、ふたりとも変になっちゃったの・・・』
『そうか。じゃ、あれはやっぱりバイオリンだったのか・・・』

ハルオの母は空っぽのケースを見て、バイオリンの行方をハルオに訊ねるが、ハルオの代わりに北斗がその問いに答えた。

『お母さん。バイオリンは空へ飛んで行ってしまいましたよ。恐らくあのバイオリンには、超獣がとりついています・・・』

ハルオの母は、そんな馬鹿げた話は信じられないと言って本気にしない。だが北斗は、あのバイオリンを追いかけるつもりでいた。B子があのバイオリンの音が鳴れば判るからと、同乗してくれることになった。

ハルオの母は高額なバイオリンのことが心配で、ハルオを連れてタックパンサーで追いかけると言い出すのだった。A子を病院へ収容した美川隊員からの連絡で、A子は考える力や筋力を抜かれてしまっていることが判明した。

あのバイオリンを演奏した者は、魂を吸い取られてしまうのだ。人間の魂を吸って、バイオリンは今やコントラバス程の大きさに成長していた。

タックパンサーで追っていた北斗らは、巨大になったバイオリンが公園に着陸するのを見た。巨大なバイオリンは池のほとりに静かに着陸すると、一人の男性を呼び寄せて彼に演奏をさせるのだった。

北斗は、男性が演奏を止めたら、あれをタックガンで撃とうと考えていた。ところが撃たれることを恐れたハルオの母は、北斗のタックガンを奪ってしまうのだった。やがて魂を抜かれた男性は、静かに座りこんでしまった・・・。

さらに巨大になったバイオリンは、今や勝手に弓が弦を弾いて音楽を奏でるようになっていた。もはや奏者は必要なく、バイオリンは公園内を散策する人々の魂を吸い取り、増々巨大化していった。

耳をふさいで音楽を聞かないよう三人に指示した北斗だったが、ハルオの母だけは奏でる曲に聞き惚れてしまうのだった。タックファルコンとタックアローが出撃して、巨大な空飛ぶバイオリンを攻撃する。

北斗もタックガンをハルオの母から奪いかえして地上から攻撃を加え、空飛ぶバイオリンを撃墜することに成功した。だが時すでに遅く、撃墜した巨大バイオリンは地上に激突して爆発しながら、超獣ギーゴンになってしまった。

ハルオの母を助けようとした北斗は、ギーゴンに踏みつぶされそうになりながら、ウルトラマンエースに変身した。超獣ギーゴンから発する音波は、エースの脳を刺激して狂わせる効力があった。魂を抜かれたように何もできなくなるエース。だが、太陽光線がエースに再び力を与えた。

ギーゴンの胸にある4本の弦の1本をエースが斬ると、ハルオの母が突然苦しみだした。残りの3本すべてを斬ると、ハルオの母はさらに苦しみ出すのだった。エースの必殺メタリウム光線を受けたギーゴンは、瞬間的に消滅してしまった。

超獣ギーゴンの身体に音として蓄えられていた人間の魂が、また音になって持ち主のもとへ返っていったためだ。バイオリンを嫌うハルオの心が超獣を呼び、ハルオをバイオリニストにしたいという母の強い執念が、超獣にエネルギーを与えたのだろうと推測する竜隊長。

TAC隊員とハルオの母が見ている前で、草野球で元気いっぱいに遊ぶハルオ。竜隊長が話す。
『子供は、元気で伸び伸び育つのがいちばんです。その上でなら、学問でも芸術でも自分から進んで努力するようになりますよ・・・』 (終わり)


★★★★★★★★★★★★
今回ハルオのバイオリンの先生役で出演しているのは、若き日の冬木 透氏である。ウルトラに携わって50年近い。ウルトラセブン以降、昭和のウルトラシリーズには欠かせない存在であり、まだまだ現役で頑張っておられる。
筆者にとっては、2009年に行われた一夜限りのコンサート「ウルトラセブンの音楽を創った男」を見に行ったことがいい思い出になっている。

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ウルトラマンエース(20終) [ウルトラマンA・ドラマ2]

今回は、第52話 『明日のエースは君だ!』を取り上げます。

脚本;市川森一  
特殊技術;高野宏一
監督;筧 正典
ナレーター;岸田 森

【サイモン星人の子供】
【最強超獣 ジャンボキング】 登場

◆正体不明の2機の円盤が地球に飛来して戦っていたが、1機が撃墜され森に落下した。TACは全員で捜索に当たり、撃墜された円盤の残骸を町はずれの森の中で発見したが、生存者は見つからなかった。

探知機を使って捜索していた北斗は、生物反応があったため隊長達を呼び寄せ、反応がある辺りを探していると、1匹の宇宙人をイジメる3人の子供たちに出会うのだった。

子供達はウルトラ兄弟のお面を着けて、宇宙人をイジメていた。宇宙人と言っても明らかに子供であるらしく、幼い姿をしていた。だから子供達は恐れること無く、その宇宙人をイジメていた。子供たちの話では、墜落した円盤に乗っていたらしい。

ゾフィ、ウルトラマン、ウルトラセブンのお面を着けた子供達3人は、宇宙人は悪いやつだと決めつけてイジメていた。竜隊長は、この子供の宇宙人を基地へ連れて帰ると言った。3人の内の一人が尋ねた。

『ねぇ。そいつ、死刑にするの?』
『どうして?』

『だって宇宙人だろう!』
『宇宙人なら、みんな死刑にしてもいいと思っているのか!』

北斗はムッとして、ウルトラ兄弟のお面を着けた子供たちをたしなめるのだった。
『ウルトラ兄弟は、弱い者イジメはしない!何もしない宇宙人の子供を、訳も無くイジメたりはしない!ウルトラ兄弟は、弱いモノの味方なんだ!』

タックパンサーに乗せたこの宇宙人はサイモン星人で、かつてヤプールに侵略されて宇宙を追放された遊牧星人だという。とても弱い立場の宇宙人なのだ。そのサイモン星人が額にある赤いランプを点滅させて、怯えているように見えた。

するとタックパンサーの進行方向の空に、突如出現した明るい光の輪。それはやがてウルトラマンエースによって敗れ去った超獣たちの影に姿を変え、それらの影が合体して何かの形を成し始めた。

『エースの手で空の塵となった幾多の超獣の怨霊よ、ここに集まり、今一度生き返るのだ!』
ヤプールの声が叫ぶ。

『生まれ出でよ、ジャンボキング!』
空中で合体した超獣たちは1匹の四つ足超獣の影となり、それは実体となって地上の町に出現した。

口からロケット弾を吐いて、タックパンサーに襲いかかる超獣ジャンボキング。北斗はサイモン星人を連れて、炎の中を逃げ回るのだった。だが町はずれの空き地では、隠れる場所が無い。サイモン星人を連れて逃げるうちに、北斗は左足に被弾してしまう。

山へ逃げる途中、さっきの子供達が北斗とサイモン星人を迎えに来た。
『俺たちの基地へ案内するよ!』
『無線機まであるのか!何でもそろっているんだなぁ!』

薬箱の薬で、北斗の足の怪我を治療しようとする子供A。
『さっきは悪かったな。謝るよ』

サイモン星人に握手を求める子供たち。みんないい子達だと、北斗は感心するのだった。
『そうでなくっちゃ。彼はサイモンって言うんだ』
『よろしく。仲よくしような!』

TACを襲っていたジャンボキングから、ヤプールの声が聞こえてくる。
『サイモンを引き渡せ!地球人に用は無い。もしサイモンをかばうならば、地球人も私の敵だ!』

サイモンの引き渡しを要求するヤプールの声を聞いた3人の子供たちは、親や友達がいる町を壊されるのは困ると気持ちが揺らぐ。

だが北斗が言った「ウルトラ兄弟は弱い者の味方」という言葉を思い出し、3人はこの基地でサイモンを守ることを誓うのだった。この子供達の優しい気持ちが、北斗は嬉しかった。

タックファルコンと2機のタックアローで出撃したTACは、ジャンボキングを町から移動させるために巨大な網を用意して包み込む作戦に出た。

網で包んでジャンボキングを動けない様にしておき、3機の戦闘機でそれを引っ張って他の場所へ連れて行くのだ。だが、ジャンボキングは重量があって持ち上がらず、この作戦は失敗に終わる。

ヤプールの声は、明朝8時までにサイモンを渡さなければ、ジャンボキングを使って残りの町すべてを破壊すると告げて、ジャンボキングと共に消えた。

ジャンボキングを倒す手段が今のところ無い以上、ヤプールの要求どおりサイモンを渡すしかないと言う山中。だが、北斗は断固反対し、竜隊長に訴えた。

『あの少年達のサイモンを守ろうとする気持ちは、一度踏みにじったら簡単には元へ戻りません。今彼らが持とうとしている勇敢で優しい気持ちを、大切にしてやりたいのです』

竜隊長は、まだ試作段階の細胞分解ミサイルを、明日の戦いでジャンボキングに使うことを提案した。その晩、北斗は夜空に向かい、明日はエースになってジャンボキングと戦おうと心に決めるのだった。だが、夜空の一角から月星人姿の夕子が現れ、不思議なことを北斗に語りかけた。

『星司さん。もしあなたがウルトラマンエースであることを誰かに知られたら、二度と人間の姿には戻れないのよ・・・』
どうして夕子は、今そんなことを言うために現れたのだろうか・・・。

翌朝8時前に、TACは細胞分解ミサイルの発射準備を終えた。北斗は、サイモンと少年達の基地へ行った。すると、3人の少年のほかにも十数人の少年達が、サイモンを守るために集まっていた。北斗はこの気持ちが嬉しかった。

午前8時、ジャンボキングが出現した。TACは細胞分解ミサイルを発射、見事に命中したがジャンボキングには効かなかった。逆にジャンボキングの光線を受けた細胞分解ミサイル発射台は、大爆発して破壊されてしまった。

午前8時。ジャンボキングの出現と同時にサイモンの額にあるランプが赤く点滅した。北斗は今まで、度々サイモンの額のランプが赤く点滅するのを目撃していた。
『あの点滅はなんだ?!何かを発信しているようだが・・・』

ジャンボキングが、子供達の秘密基地の方へ向かってくる。十数人の子供達に急いで逃げるように言い、北斗はサイモンを連れて後から逃げた。

サイモンがつまずいて倒れた。それを起こそうとした北斗に、サイモンがテレパシーで話しかけた。
(北斗星司よ。私の声に聞き覚えはないか?)
(ヤプール!)

(そのとおり!ジャンボキングを操っているのはこの私だ!まんまとワナにかかったな。早くみんなの前で、エースになったらどうだ!)

北斗がサイモンをタックガンで狙っている姿を見て、少年達が戻ってきた。
『何をするんだ!』

(みんなの前で私を撃つがいい。誰も私をヤプールだと信じてないぞ。私を撃てば、お前は子供達の信頼を裏切ることになるぞ!)

北斗は最初、子供達がいるのでサイモンを撃つことをためらう。
(人間の子供から優しさを奪い、ウルトラマンエースを地上から抹殺することが、私の目的だったのだ・・・)

次の瞬間、北斗はサイモンを射殺した。目の前でサイモンを射殺した北斗に、子供達は怒りを露わにした。

『サイモンを守れと言ったくせに、なぜ殺したんだ!』
『こいつはヤプールだったんだ!』

『どうしてサイモンがヤプールなんだ。証拠を見せろ!』
『テレパシーで、こいつがそう言ったんだ』

『テレパシーがあるのは、ウルトラ兄弟だけだ』
『ボクが奴のテレパシーを解かったのは、ボクが・・・ウルトラマンエースだからだ』

夕子の言葉通り、北斗はウルトラマンエースに変身する姿を人目にさらす時が来てしまった。子供達の前で、TACの仲間達の前で、北斗はジャンボキングを倒すために、両手の指輪を合わせて最後の変身をした。

(彼らに真実を伝えるには、こうするよりほかに無かった。さようなら地球、さようならTACの仲間達、さようなら北斗星司・・・)

これが地球での最後の戦いとなるエースは、ジャンボキングに応戦するが相手は強い。メタリウム光線を放つが効かないため、ギロチンショットで首を切断して、ようやくとどめを刺した。

ウルトラマンエースは、子供達に向けて話すようにメッセージを送った。

『優しさを失わないでくれ。弱い者をいたわり、互いに助け合い、どこの国の人達とも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。たとえその気持ちが何百回裏切られようと。それが私の最後の願いだ・・・』

夕焼けの彼方へ、エースは飛んで行く。やがてそれは一つの星となって輝いた・・・。
ありがとう!ウルトラマンエース。少年達はエースから贈られたこの言葉を忘れずに、大人に成長していくことだろう。 (終わり)


★★★★★★★★★★★★
市川森一氏がメインライターをやるはずだったのに、途中で情熱を失ってライターを降板してしまったことは、非常に残念。正義の男女合体は、無理なのか。悪の方にはたくさんあるのだが・・・アシュラ男爵、ガンダル指令、そうそう、正義の男女合体は、マグネロボ・ガキーン!がいる

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