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訃報 飯塚定雄氏 亡くなる [訃報]

光学作画の第一人者として多くの特撮作品で活躍した光学合成技師・飯塚定雄(いいづか・さだお)さんが、2023年3月24日に誤嚥性肺炎のため逝去されました。享年88

飯塚さんは1934年東京生まれ。愛称は「デンさん」。高校時代に洋画家・東郷青児に絵画を学び、19歳の時に東宝撮影所のアルバイトとして『ゴジラ』(1954)から『空の大怪獣ラドン』(1956)までさまざまな映画の美術助手を担当されました。当初はミニチュアの建物に「汚し」を付ける仕事などを担当していましたが、1957年より円谷英二の奨めで室内合成の光学作画を担当し、『地球防衛軍』以降の東宝特撮独自の光線表現を確立しました。
『ウルトラマン』のスペシウム光線、怪獣が吐く破壊光線や火炎、ロケットの噴射などの合成を多く手掛けて、光学作画の第一人者となりました。キングギドラの引力光線を手掛ける際は、太平洋戦争中に間近で目撃した米軍機の曳光弾(えいこうだん)射撃が参考になったと発言しています。
(曳光弾は発光体を内蔵した特殊な弾丸で、飛んでいく間に発光することで軌跡がわかる)

円谷英二の死後、1972年に円谷プロを退職して、高野宏一や中野稔と共に『デン・フィルム・エフェクト』を設立します。2015年には、長年にわたって光学合成に従事した功績から「平成27年度 文化庁映画賞 映画功労部門」を受賞しています。後進の指導にも携わり、近年では『シン・ウルトラマン』(2022)で光学作画を担当しました。

《人物》
「デンさん」という愛称は、飯塚氏が漫画『デンスケ』の主人公に似ていたことからつけられたそうです。この呼名が広く定着していたことから、自社名にも「デン」を冠しています。

飯塚氏によれば、円谷英二からの発注は「感じを作れ」という一言のみで、自身の経験の引き出しから何を使うか考える必要があったと語っています。これまでで最も難しかった合成として、キングギドラの引力光線を挙げています。

東宝の契約では他社での仕事は禁止されていましたが、円谷英二の依頼で参加した円谷プロダクションの『ウルトラマン』をはじめ、第一次怪獣ブームの頃はガメラシリーズ(大映)、『大巨獣ガッパ』(日活)、『宇宙大怪獣ギララ』(松竹)などの他社作品の合成も多数手がけたそうです。飯塚氏によれば、当時は東宝側も円谷英二の威厳により何も言わなかったと述懐しています。

特技監督の中野昭慶によると、飯塚氏は明るく茶目っ気があり、クランクアップ前の多忙な時期でも現場を明るくしていたと証言しています。一方、痔を患っていたため、一日中座りっぱなしの作画作業では顔をしかめていることもあったといいます。ファンタジックで夢のある幸隆生(みゆき・たかお;元円谷プロ特撮スタッフ)の動画に対し、飯塚氏のそれは立体的で力量感があったと中野昭慶は評しています。また、中野稔は飯塚氏の傑作として、『三大怪獣 地球最大の決戦』でのキングギドラの誕生シーンを挙げています。

謹んで、ご冥福をお祈りいたします(合掌)


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《主な作品》
映画
【ゴジラシリーズ】
ゴジラ(1954年、東宝)- 美術助手
ゴジラの逆襲(1955年、東宝)- 美術助手
空の大怪獣 ラドン(1956年、東宝)- 美術助手
地球防衛軍(1957年、東宝)- 光学作画
キングコング対ゴジラ(1962年、東宝)- 光学作画
宇宙大怪獣ドゴラ(1964年、東宝) - 光学作画
モスラ対ゴジラ(1964年、東宝)- 光学作画
三大怪獣 地球最大の決戦(1964年、東宝)- 光学作画 他多数
怪獣大戦争(1965年、東宝)- 光学作画
怪獣島の決戦 ゴジラの息子(1967年、東宝)- 光学作画
ゴジラvsメカゴジラ(1993年、東宝)- エフェクトアニメーション
ゴジラvsスペースゴジラ(1994年、東宝)- エフェクトアニメーション
ゴジラvsデストロイア(1995年、東宝)- エフェクトアニメーション
ゴジラ FINAL WARS(2004年、東宝)- エフェクトアニメーション

宇宙大怪獣ギララ(1967年、松竹)
大巨獣ガッパ(1967年、日活)
怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス(1972年、円谷プロダクション、東宝) - 視覚効果

【ウルトラシリーズ】
ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団(1974年、富士映画)
ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説(1990年、松竹)
シン・ウルトラマン(2022年、円谷プロダクション/東宝/カラー) - 光学作画

【石坂浩二の金田一耕助シリーズ】
犬神家の一族(1976年、東宝)
悪魔の手毬唄(1977年、東宝)
獄門島(1977年、東宝)
女王蜂(1978年、東宝)
病院坂の首縊りの家(1979年、東宝)

宇宙からのメッセージ(1978年、東映)
夜叉ヶ池(1979年、松竹)
宇宙怪獣ガメラ(1980年、大映)

【仮面ライダーシリーズ(東映)】
仮面ライダー 8人ライダーVS銀河王(1980年)
仮面ライダーJ(1994年)[14] - 視覚効果[注釈 1]
劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE(2004年) - デジタルエフェクト
劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!(2007年) - デジタルエフェクト ほか多数

テレビ
ウルトラシリーズ - 光学作画
ウルトラQ(1966年)
ウルトラマン(1966年)
ウルトラセブン(1967年)
帰ってきたウルトラマン(1971年)
ウルトラマンタロウ(1973年)
ネオ・ウルトラQ(2013年)
ウルトラマンX(2015年)

怪奇大作戦(1968年)
シルバー仮面(1971年)
ミラーマン(1971年)
トリプルファイター(1972年)
緊急指令10-4・10-10(1972年)
アイアンキング(1972年)
恐怖劇場アンバランス(1973年)
ファイヤーマン(1973年)
ジャンボーグA(1973年) ほか多数



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