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帰ってきたウルトラマン(4) ~座談会;振り返ってみたウルトラマン /ベムスターの巻 [新マン座談会・1]

ウルトラマンのスーツアクター・きくち英一氏が、司会の某映画監督とふたりでビデオを見て、当時の記憶を思い出しながら各話のエピソードを語るシリーズ。第一弾はウルトラ怪獣の中でも人気が高い宇宙怪獣ベムスターが登場する話・・・
『第18話 ウルトラセブン参上』です。

◆MATステーションを丸ごと呑み込んでしまった宇宙怪獣ベムスター。親友・梶隊長のかたきを取るため加藤隊長以下MATは全力で戦うが敗れ、ウルトラマンのスペシウム光線さえも歯が立たない。失意のウルトラマンの前にウルトラセブンが現れて・・・

脚本;市川森一
監督;鍛冶昇
特殊技術;佐川和夫


★★★★★★★★★★★★

聞き手;
「ウルトラマンもシリーズ20本近くになると、スタッフも段々わかってくるでしょうね」

きくち氏;
「ウルトラマンの背中のチャックを開ける係で助監督のS君ってのがいまして、この頃には指に『チャックだこ』ができてましたね(笑)。ホントですよ、ぺんだこみたいにチャックだこが出来るんです」

聞き手;
「さすが、プロ。しかしこのベムスターはめちゃくちゃ強い、宇宙怪獣だから」

きくち氏;
「そう、スペシウム光線なんか吸い込んでしまうもん」

聞き手;
「この回はウルトラマンの全話数の中でも、比較的重い冒頭部分の様な感じがしますね。そういえば、この回がオンエアされるという日に飛行機墜落事故が起きて、特番で放送が一週間延びちゃって。やっと見られた時の感激は、大きかったな」

きくち氏;
「よく覚えてますねぇ(笑)」

聞き手;
「やっとオンエアされたこの回のオープニングの時に、団次郎さんの声で『先週はすまなかった。今日はウルトラセブンも出ます!』って言ったんですよ。感動したなぁ」


《太陽の引力圏に引きずり込まれる新マンの前にウルトラセブンが現れて》
聞き手;
「ここからが最高ですよね。あのセブンに入ってる方もJFAの方ですか?」(JFA ;ジャパン・ファイティング・アクターズ)

きくち氏;
「ええ、望月君。甘いマスクのヤツだったけど、すぐ辞めちゃったんです」

聞き手;
「こんないい役やったのに、勿体ない(笑)」

きくち氏;
「18歳くらいだった。背は高くはなく、細かったですね」


《ウルトラマン、ベムスターに敗れながらも帰ってきて加藤隊長のマットアローを救う》
聞き手;
「このセリフが最高なんですよ。隊長が言うんです。『ウルトラマンが帰ってきた』俳優生活最高のセリフですよね(笑)」

きくち氏;
「これからが親友の敵討ちですよね」

聞き手;
「いいセリフですよ、ここから『帰ってきたウルトラマン』は始まったと言っていいと思う。ここで始めて初代ウルトラマンを超えてね、最高のカタルシス(快感を感じること)です」

きくち氏;
「涙がでてくるね」

聞き手;
「この回は熱いものがある」

きくち氏;
「うん、泣けてくる」

聞き手;
「ウルトラブレスレットは、金属でできているようですが」

きくち氏;
「母体は真鍮(しんちゅう)です。今でも大切に持ってますよ」

聞き手;
「この世にひとつしかないんですから、宝物ですね」

きくち氏;
「こうやって改めて見ると、いろいろあるんですねぇ。放送時にはわからなかったことが」


★★★★★★★★★★★★
いわゆる『ウルトラ兄弟』を作るきっかけとなった回であり、これ以降、ウルトラマン同士がゲスト出演しながら増えていき、ファミリーやら幻の戦士(ウルトラマンキング)など、様々なタイプのウルトラマンが生まれる。このドル箱のようなウルトラ家族を持っていて、どうして円谷プロは潰れたプロ(支援を受けるよう)になってしまったのか・・・。

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帰ってきたウルトラマン(5) ~座談会;振り返ってみたウルトラマン/グドン&ツインテールの巻 [新マン座談会・1]

ウルトラマンのスーツアクター・きくち英一氏が、司会の某映画監督とふたりでビデオを見て、当時の記憶を思い出しながら各話のエピソードを語るシリーズ。第二弾は素晴らしいプロポーションを持つ怪獣グドンと、数ある怪獣の中でも二つと同じシルエットは無い怪獣ツインテールが登場する第5話『二大怪獣東京を襲撃第6話『決戦!怪獣対MAT』です。

◆ビルの工事現場で見つかった岩石。「怪獣の卵かもしれない」郷の超能力がそうささやくが、MAT岸田隊員の判断で捨て置かれた。やがてその工事現場付近から怪獣グドンが出現。グドンを逃がしてしまった後に怪獣ツインテールも出現し、首都東京は二大怪獣に蹂躙されてしまう・・・

脚本;上原正三
監督;冨田義治
特殊技術;高野宏一


★★★★★★★★★★★★

聞き手;
「ツインテールは、名獣ですね」

きくち氏;
「これはMくんという日大芸術学部で僕の後輩の学生が入ってるんです。このツインテールは、カットによって人間が前と後ろ逆に入ったりして、撮影したんです」

聞き手;
「そうすることにより、まったく人間が入っているとは思いない効果を生んだんですね。すごいアイデアです」

きくち氏;
「我ながらこの殺陣は傑作だね。一番好きな怪獣です」

《独特の夕陽をバックに》
聞き手;
「あの太陽は、10キロワットのライトなんですね?」

きくち氏;
「そう。これカッコイイね。本編より特撮の方があとの撮影ですから、本編撮影の時が夕景だったんでしょうね。それとも夕陽狙いにしなのかな?とにかくいいカットです。劇場用(東宝・昭和46年夏公開)にもなりましたしね。この時の映画のポスター、大事にとってありますよ」

聞き手;
「この回で、ウルトラマンが側転してますね」

きくち氏;
「とにかく、自分の出来ること持っているものは全部出していこうという心構えで、やっていましたから」

聞き手;
「プロレスの影響なんか、ありましたか?」

きくち氏;
「力道山の頃から。街頭テレビなんかで、結構見てました」

聞き手;
「この回でグドンに、ブレーンバスターを使ってます」

きくち氏;
「この頃は馬場さん、猪木さんの全盛期。プロレス中継は欠かさず見て、研究したものでした。確かこの時だったと思いますが、肝っ玉母さん(故・京塚昌子氏)とTBSの番組宣伝用ポスター撮りで会ったんです。『暑いでしょ、私も中に入ったら痩せられるかしら』って言われました。

でも肝っ玉母さんが痩せたら、細っ玉母さんになっちゃうって言おうとして、やっぱり止めました。その頃京塚さんは、大スターだったですからね」

聞き手;
「このウルトラマンと京塚さんの写真が、やっぱりスゴイですよね。ウルトラマンのスーツも出来たてで」

きくち氏;
「駅のあちこちに、このポスターが貼ってありましたからね。それだけTBSが力を入れてくれてたんですねぇ」


★★★★★★★★★★★★
『肝っ玉母さん』はこの頃のTBSの人気番組で、筆者のうちでも毎週見ていた記憶がある。この『ウルトラマンと肝っ玉母さんの写真』が欲しいばかりに、テレビガイドのような雑誌を買ってもらい、ワクワクして見た記憶がある。

ウルトラセブンが終了してブームは収まっていたかもしれないが、子供たちの中ではフツフツと沸いていたと思う。『帰ってきたウルトラマン』は、筆者も他の子供たちにとっても、待ち焦がれていたヒーローだったことは確かだと思う。

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帰ってきたウルトラマン(6) ~座談会;振り返ってみたウルトラマン/アーストロンの巻 [新マン座談会・1]

ウルトラマンのスーツアクター・きくち英一氏が、司会の某映画監督とふたりでビデオを見て、当時の記憶を思い出しながら各話のエピソードを語るシリーズ。第三弾は恐竜型怪獣の代表格アーストロン他3匹の怪獣が暴れまくる第1話『 怪獣総進撃』です。

◆異常気象により、怪獣たちが一斉に目を覚ました。東京湾ではタッコングとザザーンが戦っていたが、その争いに巻き込まれたカーレーサー志望の郷秀樹は、子供の命と引き替えに自分の命を落としてしまう。その様子を見ていたウルトラマンは、郷秀樹に自分の命を預けて地球に留まることを決心する。ウルトラマンの超能力でいち早く怪獣出現を知った郷秀樹は、すぐに行動を起こした・・・

脚本;上原正三
監督;本多猪四郎
特殊技術;高野宏一


★★★★★★★★★★★★

司会;
「(テーマ曲が流れて)やっぱりいいですよね~。ウルトラマン『菊池英一』というテロップ。当時ボクが子供でも、ここできくちさんがウルトラマンをやってると解ったんです。憧れました。第一話のクオリティの高さは、さすが本多猪四郎監督、今見てもカッコイイ」

きくち氏;
「ビックリしました。今見返しても手前みそながら、迫力ありますね」
司会;
「スタッフの、『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』を超えようという意欲が画面に出てます」

《郷秀樹の死体とウルトラマンが一体化する》
きくち氏;
「郷秀樹との合体シーンか。この合体で前に倒れる時に、どうしても手をついてしまうんですよ。監督の注文は、手を脇に付けたまま前に倒れろってことだったけど、うまくいかなかった。この時のウルトラマンの声をやらせてくれと頼んだんですが、だめだったなー」

司会;
「どうしてですかねー、*国分さんっていう声優さんがやられてましたが。きくちさんは、中でしゃべってましたか?」
*国分さん→筆者の調査では、ウルトラマンの声を担当したのは「谷津勲」氏である

きくち氏;
「ええ、しゃべってました。やっぱり役者ですからね」

司会;
「このアーストロン以降、怪獣はほとんどきくちさんの大学の後輩の遠矢孝信さんが演じてらしたんですね?」

きくち氏;
「このアーストロンとの格闘は、全部撮り直ししたんですよね。ウルトラマンのデザインが変更になって。全く同じ殺陣で、もう一回やったわけです」

司会;
「正直、ムッとしましたか?」

きくち氏;
「そりゃあ、しましたよ(笑)」

司会;
「それだけ、いつも気合が入った殺陣をしてるってことですよね。しかしこのアーストロンって、実にいいデザインしてますよね」

きくち氏;
「本当、そうですね」


◆◆◆怪獣役者;遠矢孝信氏の証言◆◆◆

アーストロンには最初うちの若いヤツが入っていて、それを本多猪四郎監督さんが見ていらしたんです。それでどうも動きがよくないってことになった。それでボクはタッコングとスケジュールがダブらないんで、アーストロンも演じることになったんです。

そしたら、こりゃスゴイって誉められましたよ。その時は動きなんて何にもわからないんですけど、やたら動いたことが評価されたんでしょう。ボクは出来上がった怪獣を、見たイメージで動きを考えるんです。それを高野・佐川両特技監督は認めてくれてたんです。だからかなりひょうきんな怪獣もあった。飛び上がったり、あぐらをかいたりとかね。


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
第一話はお祭り騒ぎのように、怪獣が三体も出てくる。ザザーンはすぐに倒されてしまうが、子供にとってはたくさんの怪獣を見られるだけで、うれしいものだ。アーストロンとゴーストロンは兄弟か?というような質問があったように思う。

演じていた方が同じだということが分っただけでも、筆者はうれしい。ところで、筆者は2匹は親戚同士だと思う。理由は肌つやが全然違うから・・かな(笑)。2匹の関係、皆さんはどう思われますか?
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帰ってきたウルトラマン(7) ~座談会;振り返ってみたウルトラマン/タッコングの巻 [新マン座談会・1]

ウルトラマンのスーツアクター・きくち英一氏が、司会の某映画監督とふたりでビデオを見て、当時の記憶を思い出しながら各話のエピソードを語るシリーズ。第四弾はツインテールと同様に数ある怪獣の中でもシルエットが珍しいタッコングのエピソード、第2話『タッゴング大逆襲』です。

◆MATに入隊した郷秀樹は、ウルトラマンの超能力を過信して勝手な行動をとり、怪獣を逃がしてしまう。坂田自動車工場にさえも居場所がなくなった郷は、やがて自分が全力を尽くした時に初めてウルトラマンになれることを悟る。再び石油コンビナートにタッコングが現れると、郷は全力で立ち向かっていった・・・

脚本;上原正三
監督;本多猪四郎
特殊技術;高野宏一


★★★★★★★★★★★★

司会;
「第二話のセットも派手で、劇場映画並みのスケールですね」
きくち氏;
「これは東宝の広い第一ステージ一杯に港を作って、やりました。第一話と第二話は同時に撮ってますんで、ぼくはウルトラマンと、ザザーンにも入ってたんですが、特撮の合間にすごいことがありましてね。

タッコングに入っている遠矢とプールに入って出番待ちをしていたら、照明のコードがプールの中に垂れていて電気が流れてたんです。もちろんふたりとも感電して、シビレちゃったんですよ。でもスタッフには、ぼくらがふざけて踊りを踊ってるように見えたらしいんです」

司会;
「それは、面白い(笑)」

きくち氏;
「『何ふざけてんだよ』って言って、助けてくれない。スーツの中から『助けてくれーッ』て必死に叫んで、やっと出してもらって。もう少し遅れてたら、ふたりともあの世行きでしたね」

司会;
「命がけの撮影だったんですね」

きくち氏;
「そうなんです」

司会;
「スペシウム光線の出し方が、少し変わりましたよね」

きくち氏;
「初代はすこし猫背でしゃがんでたのを、ぼくは手の構えを大きくして、背筋を伸ばしたんです」

司会;
「正直、ボクはこっちの方がカッコいいと思ってましたよ(笑)」

きくち氏;
「ありがとうございます(笑)」

司会;
「ウルトラマンが最後に飛んで帰っていく所は、どうやって撮ってるんですか?」

きくち氏;
「これがイヤでね。小さな板の上にぼくが乗って、6人で下から押し上げるんですが、タイミングがなかなか合わないんで難しいんですよ。何度落っこちたかなぁ。周りにトタン板の山がある所でやってましたから、一歩間違えば大怪我という状況だったんです」

司会;
「さっきのは、ちょっと左に傾きましたね(笑)。ただジャンプするのとは違うんですねぇ」

きくち氏;
「そうなんです。もう初代ウルトラマンの頃からずっとやってましたから、円谷プロだけの伝統ですよね。一度、上からロープでぶら下がって降りてくるのを逆回しで撮ったんですが、1回やったきりで不採用でした。あまりよくなかったんでしょうね。ウルトラマンの飛行シーンは、伝統芸能の世界なんです」


◆◆◆怪獣役者;遠矢孝信氏の証言◆◆◆

タッコングは姿が丸いんで、水が入ると重いんですよ。水から出てくると伸び切っちゃって、背中の部分にボクの頭の形が出ちゃうんです。形もだんだん変わってくるし、この怪獣は他の怪獣に比べて、安定が悪かったです。


★★★★★★★★★★★★
タッコングとかツインテールとか、新マンにはこれは素晴らしい(珍しい)形をしているなぁと思う怪獣がいる。池谷仙克(いけやのりよし)氏の作品だ。ウルトラセブンの途中で円谷プロを去った成田亨氏のあとを継いだ男、成田亨の後継者である。

ダリーから池谷氏が描いてるが、ダリーも宇宙細菌という今までに無かった怪獣であり、秀作だと思う。池谷氏は四足怪獣について、人間が入ると後足が前足より長くなるという点に考慮して、デザインに工夫を凝らしている。ちょっとしたことだが、こういった点が円谷作品を優れた物にしているのだろう。


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帰ってきたウルトラマン(9) ~座談会;振り返ってみたウルトラマン/ムルチとメイツ星人の巻 [新マン座談会・1]

ウルトラマンのスーツアクター・きくち英一氏が、司会の某映画監督とふたりでビデオを見て、当時の記憶を思い出しながら各話のエピソードを語るシリーズ。第五弾は巨大魚怪獣ムルチとメイツ星人が登場する第33話『怪獣使いと少年』です。

◆河原で、毎日穴掘りをしているひとりの少年がいた。何が目的なのか、雨の日も風の日も休まずに穴を掘っている。いつしかその少年が宇宙人であるという噂が立ち、街の人々は恐れるようになった。ついにある日、町中の人々が彼を排除するために集団で襲い掛かろうとすると、彼の保護者を名乗る老人が廃屋の中から現れた。が実は・・・

脚本;上原正三
監督;東條昭平
特殊技術;大木淳


★★★★★★★★★★★★

聞き手;
「これは上原正三脚本、東條昭平監督作品の問題作です。ウルトラマンのコンセプトを超えている」

《ボロボロの学ランを着た学生が登場》
きくち氏;
「こんな学生、この時代にはいないよね」

聞き手;
「東條さんの思い入れのようです。時代考証より、イメージ優先だったんでしょうね」

《みんなで少年を肩まで土に埋めて、頭から泥水をかけるシーン》
聞き手;
「どんな感じで見てました?当時」

きくち氏;
「割と普通にね。ドラマをみるよりは、ウルトラマンが出てからの3分間が俺の命って感じが強いから、それで頭がいっぱい。それに現場にいたわけではないし」

《とばっちりを恐れて、商店街の誰も物を売ってくれない。肩を落として帰る少年に、パン屋の娘だけが普通に振る舞ってくれる》
聞き手;
「ここは小田急線の祖師谷商店街。このシーンが名作と言われる所以なんです。ここが人間に希望を持たせてくれる。この娘さんに憧れたヤツが多かったんですよ」

《少年を殺そうと、商店街の人間や警官などが迫ってくるシーン》
きくち氏;
「みんな、スゴイ恰好してる。まるで終戦直後だね」

聞き手;
「この作品には強迫観念のある集団の心理的弱さや怖さが、描かれていますね。いくらウルトラマンが怪獣を倒すのが使命とは言っても、守るべき人間がこれではどうしようもないでしょう・・・」

《人々の愚行に怒った郷秀樹は、『勝手なことをいうな』と、怒りを露わにするシーン》
聞き手;
「MATの隊長が、急に托鉢僧となって登場。この回だけ、郷秀樹がウルトラマンであることを知っているかのような、なかなかシュールな演出だ」

《隊長の言葉に考えを変えて、ウルトラマンに変身しムルチに立ち向かうシーン》
きくち氏;
「この回はまだ誰もやったことの無いことをやろうと思って、1カット長回しに挑戦したんです。雨の中でね、スタジオのギリギリの所まで利用してね。ウルトラマンにもセブンにも無かったアクションを1カットで撮ろうと持ちかけたら、監督もスタッフもノッてくれてね。

スタジオ一杯にレールを敷いて、横移動。爆発するので、(ウルトラマン・ムルチの)スーツをふたりとも着ないで何度もテストを繰り返して、雨を降らしていよいよ本番。一発でOKでした。終わった瞬間、スタッフから拍手が出ましてね。早く帰れるから(笑)」



****つづいて、監督の東條昭平氏の監督秘話をどうぞ****

『怪獣使いと少年』では、僕の初監督作品ということもあって、上原正三さんが民族問題やその他いろんなことを考えて脚本を書いていたんですが、実はそのほかにも、『地球には四季がある、でも宇宙には四季が無い』っていうテーマもあるんです。

宇宙には四季が無いはずなので、宇宙人が地球に来るとしたら、夏は良いかもしれないけど、秋がくればその変化についていけずに身体が朽ち果ててしまうと思うんです。だからあの子は、早くおじさんを助けなきゃダメなんですよ。

実は初号のフィルムは、もっと過激な内容でした。TBSが商品として受け取ることができないということで、リテイクしたんです。道を歩く少年に、みんなで石をぶつけるというシーンがあったのをカットしました。

それから最後に警官がおじさんを撃つシーンがありますが、あれは街の人が竹やりでもって刺すはずだったんです。それが通らなかったのは、TBSの橋本プロデューサーが、子供番組である以上は血を見せてはいけないということだそうです。

それから、少年とパン屋の娘の交流のシーンを新たに付け加えました。結果的には、あれが唯一の救いになりましたね。隊長の根上淳さんが托鉢僧姿なのも、脚本には無くて、現場の判断でやったことです。

帰ってきたウルトラマンでは、僕は助監督として多く現場にいましたが、あの頃は助監督でも、監督の言われるままではなく、いろいろと工夫しながらやってたんです。だからこそ面白かった。朝いくら早くても、夜いくら遅くてもよかった。

夜おそくなって電車に乗ったら、寝過ごして遠くまで行ってしまって、翌朝折り返してそのまま会社へ行ったこともありました。そんな滅茶苦茶な生活しててもとにかく面白かったから、懸命にやってたんですよ。


★★★★★★★★★★★★
帰ってきたウルトラマンをよくご存じの方なら、『11月の傑作群』という言葉を知っていると思う。いわゆる、71年11月中に放送された4作品のことを指す。それぞれが特別な評価を受けている作品とでもいえばいいだろう。その中でもこの『怪獣使いと少年』は、映像表現で人気があると同時に、色々と物議を醸す作品となった。

穴を掘る少年に向かって、執拗に陰湿なイジメのたぐいの事をするシーンがある。ホントによく放送できたものだと思う。『(イジメのような)やってはいけないこと』を映像にするには工夫がいるし、観るものに不快な思いをさせないようにしてほしいものだ。表現の自由とは、何をしてもいい事ではないのだから。難しいものだと思う。
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