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帰ってきたウルトラマン(20) ~座談会;振り返ってみたウルトラマン/シーモンス・シーゴラスの巻 [新マン座談会・2]

ウルトラマンのスーツアクター・きくち英一氏が、聞き手の某映画監督とふたりでビデオを見て、当時の記憶を思い出しながら各話のエピソードを語るシリーズ。第11弾は、南海の孤島に住む伝説の夫婦怪獣が産卵のために日本へ上陸する・・・
第13話『津波怪獣の恐怖 東京大ピンチ!』
第14話『二大怪獣の恐怖 東京大竜巻』の二本立てです。


  ***第13話『津波怪獣の恐怖 東京大ピンチ!』***
脚本;上原正三
監督;冨田義治
特殊技術;佐川和夫


◆宝石の原石を満載した海神丸が日本へ向かって航海途上、謎の沈没事故をおこす。高村船長だけが助かり病院に収容されたものの、事故のショックか記憶を失い廃人同様になってしまっていた。

娘の陽子は子供の頃から聞かされてきた「シーモンスの歌」を披露し、事故の原因はこの怪獣に襲われたためだと主張するが、MATは信じようとはしなかった。やがて怪獣シーモンスが日本へ上陸しセメント工場に居座るが、歌の解析をしたMATは怪獣攻撃を躊躇する。

工場を占拠された工場長は、シーモンスを攻撃しないMATをあきらめ自衛隊に攻撃を依頼したが、それが怪獣シーゴラスを呼ぶ結果となり、シーゴラスが起こす大津波が東京を呑み込む勢いで迫っていた・・・。


★★★★★★★★★★★★

《冒頭、船の上での宴会シーン》
きくち氏;
「これはボク、素顔で出てるんです。小林昭二さんが船長で私の役は操舵士でね、残りの船員はみなウチトラ(*)ですよ。東條(助監督)さんもハチマキして踊ってる」
(*)内輪のエキストラのこと。主にスタッフたち。

聞き手;
「踊ってますね、良い芝居してる。あ、きくちさん死んじゃった。顔出しはこれで終わりですか?」

きくち氏;
「「ウルトラマンあるから。(笑) 本編の冨田義治監督は現場でいろいろ考えられる方で、東條助監督がよく文句を言っていたのが、印象的ですね」

《押し寄せる大津波の前に立つウルトラマン》
聞き手;
「名シーン中の名シーン、波の壁のシーンです。これは何と、本当の波の画撮ってるんですよね。きれいですよね、本物は迫力が違います。この波を待ち受けるウルトラマンは人形かと思ってたけど、違うんですね。合成像ですね」

きくち氏;
「この夫婦怪獣は、大きい方のシーゴラスが遠矢で、小さい方のシーモンスが森平。ツインテールをやってた奴ですね」

聞き手;
「大津波が東京を襲い、それにひとりで立ち向かうウルトラマン!という画で、次回に続くんですね。テレビ映画としては、最高の引きですよね」

きくち氏;
「いいですねぇ。これも予算がかかってましたからね。名作です」

◆◆◆怪獣役者;遠矢孝信氏の証言◆◆◆
僕はこの時シーゴラスでしたが、単独の時はシーモンスにも入りました。ちょっと動きがいまいちということだったんで。この話は水落としがあるんですが、一番深い所は2メートルあるんで、怖かったです。歩いていくと『あ、水が入ってきた。ヤバい』と思ったとたんワーッときて、後はもうわからない。流されてしまったんです。誰かがチャック開けて助けてくれたんですが、もうほとんどおぼれてましたね。


   ***第14話『二大怪獣の恐怖 東京大竜巻』***
◆シーモンスの助けを呼ぶ声に応えて、シーゴラスが大津波をおこしながら東京へ迫ってきた。ウルトラバーリアでこの大津波をはじき返したウルトラマンであったが、エネルギーが残り少なく、戦い続けることはできなかった。

歌にある「天と地の怒り」を何としても回避したいMATであったが、自衛隊の攻撃に怒ったシーゴラスはシーモンスと「天と地の怒り=大竜巻」をおこし、東京は壊滅状態になってしまう。MATは新兵器レーザーガンSP70でシーゴラスの角を破壊し、竜巻発生を防ぐことに成功。

夫婦怪獣に占領され壊滅状態の東京を救うため、ウルトラマンは最後の戦いを挑む・・・。


★★★★★★★★★★★★

《ウルトラマンがウルトラバーリアで津波をはねかえす》
聞き手;
「このアクションがカッコイイですよね」

きくち氏;
「ウルトラマン一人の見せ場ですから、気合が入りました。こういうシーンはひとり芝居ですから役者冥利に尽きるという反面、ウケないことは許されないんですから怖いです。シーゴラスの角で上空に突き上げられるカットを、トランポリンを使ってやりました。これも今まで無かったカットで、良かったですね」

聞き手;
「竜巻の特撮もすごかったですね。現場が気合入れてやってるわけですよね。こんなとき主役としては、じっと待ちながら見てるわけですか?」

きくち氏;
「いや、まだスーツを着てませんからね。進行状態を見てます」

聞き手;
「帰ってきたウルトラマンは、ヤラレタ怪獣の姿が痛々しいですね」

きくち氏;
「怪獣のやられた目にシエン化酸をいうのを落とすんです。すると煙が出て、いい感じになる。これが臭いんですよ。目にしみるし」

《戦いのさなか、ウルトラマンがコケる》
聞き手;
「今コケましたね」

きくち氏;
「こけたね。失敗だね。『いい、大丈夫』なんて言われてね。『編集でやる、編集でやるから』って(笑)」

聞き手;
「編集で何とかするって言われて、なんともなってなかったこともありましたか?」

きくち氏;
「ありましたけどね、それに対する文句は言えませんね。映画はあくまで監督のものなんです。僕らは、料理の素材みたいなもんです。素材がマズかったら、いくら料理人(監督)がうまくてもどうにもならない。素材がマズイのを、料理で誤魔化してくれとは言えませんよね。我々はとにかく、一生懸命やるだけなんです」

◆◆◆怪獣役者;遠矢孝信氏の証言◆◆◆
シーゴラス・シーモンスの時の監督の冨田さんは、隊長役の塚本信夫さんとかいろいろな俳優さんの動きをみてから、カット割りしておられました。

ですから撮影時間が凄くかかって、現場が大分終わるのが遅くなって、文句を言うスタッフが多かったです。でも面白いことに、そんな監督だと案外いいものができるんです。現場で粘る監督は、30分番組では喜ばれない。でもそういう時でも熱意が伝われば、スタッフが協力していいものができるんですね。


★★★★★★★★★★★★
確か過去のウルトラシリーズで、複数怪獣が出てきた回では、兄弟または夫婦の関係にある怪獣同士が出たことは一度も無いと記憶する。このシーモンス、シーゴラスが初めてのつながりがある怪獣同士の共演になると思う。

大概は敵対関係にある。ミイラ怪人とドドンゴの関係は、いったい何だろう?師弟関係か?少なくとも兄弟ではあるまい。後になって、兄弟怪獣は出てくる。レッドギラスとブラックギラスは双子怪獣。ガロンとリットルは兄弟怪獣。だが夫婦怪獣は、このシーモンス・シーゴラスしか記憶に無い。

もっとも、ウルトラマン80以降と平成ウルトラシリーズの内容は分からないので、その辺に登場しているかもしれないが。貴重な存在である。西イリアン諸島に住む夫婦怪獣という設定であった。
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帰ってきたウルトラマン(23) ~座談会;振り返ってみたウルトラマン/パラゴン・ストラ星人の巻 [新マン座談会・2]

ウルトラマンのスーツアクター・きくち英一氏が、聞き手の某映画監督とふたりでビデオを見て、当時の記憶を思い出しながら各話のエピソードを語るシリーズ。第12弾は、ウルトラマンの数百倍の大きさの怪獣が富士山麓に出現か?戦えるのか、ウルトラマン!
第42話『富士に立つ怪獣』を取り上げます。

◆富士山の頂上に奇妙な笠雲がかかってから、富士山麓ハイウェイ付近では自動車事故が多発するようになった。調査に出かけた郷も、事故を起してしまう。やがて事故と笠雲の関係に気付いたMATは、山頂の笠雲に隠れていた怪獣パラゴンを発見する。

これまでの異常な事故は、パラゴンの持つ太陽光線を屈折させる能力が原因だったのだ。MATは出動するものの、ストラ星人が出現してレーダー電波を攪乱、翻弄されてしまう。郷はウルトラマンに変身しパラゴンに立ち向かうが、巨大なパラゴンの出現に攻撃する術はあるのか・・・。

脚本;石堂淑朗
監督;佐伯孚治
特殊技術;佐川和夫


★★★★★★★★★★★★

聞き手;
「これもよく出来ている回だ。シブい特撮があるんですよね」

《山頂にパラゴン登場》
聞き手;
「あっ、これふたり入っているんですよね」

きくち氏;
「そう。うしろが遠矢で、前が(後輩の)有川」

聞き手;
「初代ウルトラマンに登場したドドンゴと同じタイプの、二人で一組の造形ですね」

《爆発の中を、郷秀樹駆け抜ける》
聞き手;
「これでしょう?団さんが怖いって言われたの」

きくち氏;
「いきなり爆発ですからね」

聞き手;
「これスパイナーか何か、撃ち込まれたんですか?」

きくち氏;
「そんな感じだな」

《超巨大な怪獣の前に立つウルトラマン。怪獣の何分の一の大きさしかない》
聞き手;
「でかい。幻像だから」

きくち氏;
「今のウルトラマン、GIジョー(*)くらいの大きさ」
(*)昭和40年代前半から発売されていた、アメリカ兵をモデルにした男の子向けの着せ替え人形。軍服や武器、戦車などの軍事アイテムが発売され、大人気であった。大きさは30センチ程。

聞き手;
「これレールでしょ?」

きくち氏;
「今映ってたね、上の方に。ライトのね」

聞き手;
「これ後ろが遠矢さん?前の方が演技のバランスが大きいから、遠矢さんとも思いますが」

きくち氏;
「前の奴、(背が)小さいんですよ」

《掛け声とともに、ウルトラマンがハイジャンプ》
聞き手;
「これが帰ってきたウルトラマンだってイメージありますよね。体ひねり空中回転」

きくち氏;
「これは後ろでこうやって・・・」

《宇宙人、あっさりやられる》
聞き手;
「この回の話の宇宙人の存在感は少々弱い感じがありますが、逆に怪獣の存在が大きいですね。この怪獣の能力によって、ドラマ的にはかなり手ごわい相手になってますね。MATを解散に追い込もうとした」

きくち氏;
「怪獣にふたり入ったのは、初めてだった」

聞き手;
「新マンでは。初代マンだったら、ペスターとかね、ドドンゴなんかがいた。あとブルトンでしょ。それで、パラゴンだな。この後は
ブロッケン、ジャンボキング・・・」

きくち氏;
「よく知ってるなぁ。でもこの回は、有川と遠矢がガムシャラに動いてるだけって感じ。動き回って大変だったって。前足上げるのも、入ったまま。『せぇえの』って感じで」

聞き手;
「それはギックリ腰になるわなぁ。だから遠矢さんが後ろに入ったんですかね」

きくち氏;
「そうだね。あれは、有川じゃ無理」


★★★★★★★★★★★★
ウルトラセブンの時には宇宙人がメインだったため、ふたりで操演する怪獣は出現しなかった。新マンになっても、後半になって初めての登場である。ストラ星人のデザインは、池谷仙克氏、熊谷健氏のあとを引き継いだ高橋昭彦氏。パラゴンは資料がないが、たぶん同氏であろう。

ストラ星人はあらゆる電磁波を操るという設定で、腹部にパラボラアンテナを持つ。パラゴンに比べて、簡単にやっつけられてしまったのが残念だ。座談会でも発言している通り、パラゴンのように前後にふたりで操演するのは身体が大変なので、出現回数が少ないのかもしれない。
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帰ってきたウルトラマン(25) ~座談会;振り返ってみたウルトラマン/サドラ・デットンの巻 [新マン座談会・2]

ウルトラマンのスーツアクター・きくち英一氏が、聞き手の某映画監督とふたりでビデオを見て、当時の記憶を思い出しながら各話のエピソードを語るシリーズ。第13弾は、霧吹山へ単身乗り込んだ加藤隊長を、二大怪獣が襲ってきた。ウルトラマンにとって初めての試練、1対2のハンディキャップマッチ戦!第3話『恐怖の怪獣魔境』を取り上げます。

◆原因不明の転落事故が多発し、いつしか魔の山と呼ばれるようになった霧吹山。その上空をマットアローでパトロールする上野隊員と郷隊員。ウルトラマンの超能力で怪獣の声を聞いた郷は隊長に進言するが、上野は何も聞かなかったと否定する。

念のため本格的な調査をしたにもかかわらず何も発見できないMATの中で、怪獣の存在を主張する郷と他の隊員との間に確執が生じてしまう。チームワークの乱れを懸念した加藤隊長は自分の目で確かめるべく、単身霧吹山へ登山する。

休暇中に加藤隊長行方不明の連絡を受けた郷は、ひとり霧吹山へ捜索にでかけ、そこで怪獣サドラに襲われ重傷を負った加藤隊長を発見する。やがて怪獣デットンも出現し、二大怪獣に囲まれて絶体絶命のピンチに立つ郷と加藤隊長であった・・・。

脚本;上原正三
監督;筧正典
特殊技術;高野宏一


★★★★★★★★★★★★

聞き手;
「この回はウルトラマンと二大怪獣の対決ということでもう一匹怪獣が出てきますが、このデットンに入っている方は誰なんですか?

きくち氏;
「私が主催していたJFA(ジャパン・ファイティング・アクターズ)というアクションチームの國麿氏という人です」

聞き手;
「ウルトラマンやってられた時は、タバコは吸われていたんですか?」

きくち氏;
「それまでは吸っていましたが、この撮影の一年間は止めてましたね。やはり息切れがしますから」

聞き手;
「さすが、節制されていたんですね。ご結婚は?」
きくち氏;
「してました。長男が2歳ぐらいになってました。よく現場に連れて来て、遊ばせてましたよ。その息子が、今や182センチ。僕より大きいです」

《ウルトラマン、怪獣にキックを決める》
聞き手;
「なかなかいいキックですね」

きくち氏;
「あれ、本当に入っているからね」

聞き手;
「のど元を蹴りましたが、あそこは、本当は顔ですよね。結構蹴られていました?」

きくち氏;
「でも鉄骨が入っているから、大丈夫。逆にこっちが痛い。怪獣からの攻撃としては、サドラの爪。これは硬質ブラスチックなんで、これでたたかれると痛いんですよ」

聞き手;
「この新ウルトラマンは帰って行く時とか、やられて時にスーッと消えていく演出があります。これは初代ウルトラマンと差別化された所ですね」

きくち氏;
「僕の方が弱いから(笑)」

聞き手;
「いやいや。人間に近づいた、新しいウルトラマン像です」


◆◆◆怪獣役者;遠矢孝信氏の証言◆◆◆
当時僕は『宇宙猿人ゴリ』もやってましたから、時にはウルトラマンとスケジュールがかち合うこともありました。先輩のチャリンコを借りて往復したり、むこうの制作さんが迎えに来てくれたりで大変でした。

東條昭平助監督さんが、僕が帰ってくるまでサドラに入ってたこともありましたね。ウルトラマンとの絡みはボクですが、サドラの出現シーンとかは東條さんが入ってたと思います。


★★★★★★★★★★★★
この新マンに出てくる「デットン」は、「テレスドン」のアトラクション用スーツをそのまま撮影に使用したものであることは、今日よく知られている。

驚いたことに、当初は「テレスドン」そのものが再登場する予定で学習雑誌にもそう予告がされていたのだが、肝心のテレスドンの着ぐるみがアトラクションでの酷使や保存状態の悪さも手伝って、どう見ても「テレスドン」には見えなくなってしまった。

着ぐるみの補修により鼻先が盛り上がり、「テレスドン」とは似ても似つかない別物になったため、急きょ「テレスドンの弟」として「デットン」がデビューしたという訳であった。従ってデットンは新規に製作された着ぐるみでは無く、またテレスドンとの兄弟関係も何の根拠もない後付けであった
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帰ってきたウルトラマン(26) ~座談会;振り返ってみたウルトラマン/ダンガーの巻 [新マン座談会・2]

ウルトラマンのスーツアクター・きくち英一氏が、聞き手の某映画監督とふたりでビデオを見て、当時の記憶を思い出しながら各話のエピソードを語るシリーズ。
第14弾は、南隊員の乗ったマットアロー機が遭難した。本来なら自分が行くべき任務、それを代行してくれた南隊員を何としてでも助けなければならない。整備解体中のマットアロー機の組み立てを郷隊員は手伝い、南隊員の救助へ向かった・・・
第9話『怪獣島SOS』を取り上げます。

◆今度の次郎君の誕生日にはピクニックに行く約束をしていた郷隊員だが、その前日にニューヨーク本部へ飛ぶよう、加藤隊長から指令を受けていた。怪獣探知機モンスターソナーを受け取りに行くためだ。次郎君との約束を叶えるため、南隊員は隊長には無断で、郷隊員の代わりにニューヨークへ飛んだ。

その帰途、暴風雨圏を回避した南隊員のアロー機は無人島に不時着、無人島で海底資源探査をしていた3人に救助される。

地質調査をしていた3人は、調査の過程で洞窟内に怪獣が眠っていることを知る。地質調査用ダイナマイトを使って怪獣を封じ込めようとする南隊員たちだったが失敗、帰って怪獣を怒らせてしまう。しかも南隊員は破傷風にかかっているとの情報が、無人島からMATに入る・・・。

脚本;伊上勝
監督;本多猪四郎
特殊技術;高野宏一


★★★★★★★★★★★★

聞き手;
「この辺になると、原野や岩場で戦うのが多くなったんですね」

きくち氏;
「一番予算、かからないんからじゃないかな(笑)」

聞き手;
「なるほどね。でもこれだけ見せ場を持たせる役者も大変ですね。この回からウルトラマン、きれいになってます。ここで新調したのかな?」

きくち氏;
「そうかもしれません。身軽だったな」

聞き手;
「動きがシャープですよ。脇の電池って、痛くなかったんですか?」

きくち氏;
「痛くは無かったですね。重たいのは重たかったですが。両脇の下に4個ずつ、計8個の単一電池が入っていて、それで目とカラータイマーを付けていました」

聞き手;
「目が消えたりカラータイマーが付かなかったりということは、ありましたか?」

きくち氏;
「ありました」

聞き手;
「初代ウルトラマンでは目が消えているカットがありましたが、きくちさんのウルトラマンにはあまりありませんね」

きくち氏;
「慣れた頃には、監督の『ヨーイ!』がかかると、自分でスイッチ入れてましたね。あと怪獣の口が動かなかったりもしましたね。これはメカですから、いくら機電(*)の倉方さんが仕込んでても、切れる時は切れますよ。そういう時には、ひたすら待つしかないです」
(*)怪獣の目の光や飛行機のライト点灯など、特撮に必要な光をすべて司るパートのこと

《ウルトラマン、怪獣の頭のコブをもぎ取る》
きくち氏;
「あれ取って、ブルース・リーのヌンチャクやればよかった(笑)」

聞き手;
「まだブルース・リーは、出現してませんよ(笑)」

きくち氏;
「僕の後、ウルトラマンレオに入ってた二家本チャンが、ヌンチャクやってましたね」

聞き手;
「こうずーっと見て来て、この回はちょっとやること無くなったぞって感じでしたね。このあとまた傑作が生まれてくるけど、ちょっとインターバルって感じ」

きくち氏;
「そうですね。背景があまり変化しない岩場みたいな所だと、映像的にもあまり面白くないのかもしれませんね」

◆◆◆怪獣役者;遠矢孝信氏の証言◆◆◆
当時はもうきくちさんは結婚されてて、健康管理面では奥さんの力が大きかったんですが、僕は独身だったんで、食事は出前でした。

いつも二人前頼んでもらってました。あとは先輩から、例えばレモンを切って砂糖をかけたっものとか、ニンニクのしょうゆ漬けとかを作った物をいただいてましたね。ダンガーの頭のコブをもぎ取るのは、きくちさんのアイデアです。ふたりで立ち回りの打ち合わせをしてるうちに、そうしようということになったんです。


★★★★★★★★★★★★
新マン初期の怪獣たちは池谷仙克氏のデザインによるものだが、ストーリー未定のまま、怪獣だけ先に描きあげるケースがあったようで、このダンガーやゴルバゴス、シュガロンもそうであった。

ダンガーの頭についているソーセージのような形のコブはライオンのたてがみから発想されたとのことで、ライオン怪獣として描かれていた。口から出ている一本キバと両の手の一本爪が、コブと同様に特徴あるデザインになっている怪獣であるが、今ひとつ印象が薄い感が否めない。

南隊員に焦点を当てたストーリーとして、池田駿介氏が記憶に残る作品として挙げているので、もう少し何とかならなかったかと思う。

この回の脚本を担当した伊上勝氏といえば、言わずとしれた『仮面ライダー』のメインライターを務めた方であり、平成ライダーシリーズの脚本家・井上敏樹氏の実父である。この『怪獣島SOS』以外に『宇宙戦士その名はMAT』も脚本執筆をしている。
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帰ってきたウルトラマン(27) ~座談会;振り返ってみたウルトラマン/サータンの巻 [新マン座談会・2]

ウルトラマンのスーツアクター・きくち英一氏が、聞き手の某映画監督とふたりでビデオを見て、当時の記憶を思い出しながら各話のエピソードを語るシリーズ。第15弾は、身体の構造が中性子で出来ており、ビルをすり抜ける能力を持った象の様な面構えの宇宙怪獣サータンが登場する第19話『宇宙から来た透明大怪獣』を取り上げます。

◆次郎君の通う学校は、今夏休み。ウサギの飼育のさなか、次郎たちは小型の隕石が落下するのを目撃する。念のために調査をしたMATだが、特に異常がないため、隕石は学校の標本室へ保管された。ところが突然、その隕石は巨大化して校舎を破壊し、ウサギを助けようとした次郎は大怪我を負ってしまう。

見舞いに訪れた郷隊員は次郎から怪獣の存在を聞かされ、死んだウサギの敵討ちを頼まれる。MATは怪獣の存在を赤外線カメラで確認は出来たものの、攻撃すると透明になってしまう怪獣サータンに翻弄されてしまう。次郎は大好きな郷とMATの苦戦を知り、心理的に動揺して容態が悪化してしまう。

身体の構造が中性子で出来ているため、物質を素通りしてしまう特徴を持つ宇宙怪獣に対して、MATは怪獣の細胞組織をかく乱させる「原子核放電作戦」を展開するが・・・。

脚本;上原正三、
監督;鍛冶 昇
特殊技術;佐川和夫

★★★★★★★★★★★★

聞き手;
「この回は変わった変身の仕方をしますね。郷秀樹が外を走ってきて、ウルトラマンも同じ場所を走っていて、カットバック(*)しながら変わっていくという。この時はスタジオでは無くて外でロケしていますね。ウルトラマンが外へ行くと大変でしょう、子供たちが集まってきて」
(*)映画の技法。あるカットから別のカットに移り、ついでまた初めのカットにもどすことで事件や心理の表現が強調できる技法

きくち氏;
「でも、そんなには出てないけどね。逆に本編の役者の方がね、大変だったそうです。変身してくれとか言われて。それとあのオレンジ色の衣装でしょ。

昼食事に行くのに、目立って大変。たまに街中での撮影があるとすると、ミニサイン会になっちゃってたりしてました。『おお、ウルトラマンはやっぱりすごい人気なんだ』と実感するのは、実は視聴率なんかより、ファンの人の反応を見た時ですね」

《ウルトラマン、ビル街を走りまくる》
聞き手;
「外がよく見えないのに、すごく走りますね」

きくち氏;
「これね、怖いからうしろ(のチャックは)閉めてないんですよ」

聞き手;
「左手に黒いテープが巻いてありますね」

きくち氏;
「破れてたのかな?本物のブレスレットは先がとんがってるから、自分でスーツにひっかけて破いたりするんです。それでアクションの時は、代わりに銀のテープを巻いて演りました」

聞き手;
「肘のところも巻いてますよ」

きくち氏;
「破けてて、そのままじゃあんまりだけど、時間が無いから、これでやっちゃえって、ことだったんでしょうね」

聞き手;
「普通に見てたんじゃ、絶対に気付かないでしょうしね。アクションですから」

きくち氏;
「このサータンを見たときは、象の様な鼻を武器にしようと、鼻の長いの(4メートル位)を特注して、それに巻かれて苦しんだり、投げられたりしようと、考えたんです。怪獣の特徴をいかに活かすか、そればかり考えていましたね」


★★★★★★★★★★★★
透明怪獣、または忍者怪獣という設定であるサータン。デザインは利光貞三(としみつ ていぞう)氏であるらしい。「らしい」と書いたのは、署名からそう判断されたためと資料にはある。東宝所属の怪獣造形家で特撮美術スタッフ、彫刻家。

『ゴジラ』製作のため円谷監督に招かれて、東宝撮影所に入所。日本初の映画怪獣ゴジラのぬいぐるみ制作を行った。以後、東宝特撮映画の怪獣専門の造形チーフを担当する。1971年にフリーになり、サータンはこの年にデザインされているので、フリーになってから取り組んだ作品の第1号だったのかもしれない。

造形制作に対しては非常に時間をかけ、じっくり作り込むタイプだったそうで、「直付け手法(じかづけしゅほう)」と呼ばれる方法で作り込まれた怪獣の顔は、微妙な陰影を生んで非常に個性深いものだったという。

1973年には、日本テレビの「おはよう子供ショー」内でやっていた『行け!ゴッドマン』の怪獣デザインを担当している。資料によれば、1982年に他界されている。享年74歳。

サータンは、ウルトラマンがベムスターの次に対戦した宇宙怪獣である。ベムスターに比べるとインパクトはいまひとつだが、面構えの怖さや長く伸びた鼻を武器とするところ、また最大の特徴である身体が中性子で出来ていてビルなどの物質を通り抜けるという設定は、

ゴルバゴスやネロンガ、エレドータスなどの保護色で誤魔化す透明化とはまったく違うタイプの透明怪獣であり、地球の生物では無い(つまり宇宙から来た)という設定がよく活きていると思う。
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