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帰ってきたウルトラマン(1) [新マン・ドラマ]

第一回目は、第39話《冬の怪奇シリーズ 20世紀の雪男》を取り上げます。この年は、絶対零度の星が240年ぶりに地球に最接近する年。そして、12年ぶりにイエティが姿を現すと言われる年と重なる。何かが起きる・・・

  脚本;田口成光
  音楽;冬木 透
  美術;高橋昭彦 (井口昭彦)
  監督;筧 正典
特殊技術;真野田陽一

◆雪の権現山で登山をしている二人がいた。権現山はヒマラヤの気候によく似ている山で、ヒマラヤの資料では、この年は12年ぶりにイエティが出現する年に当たっている。ヒマラヤと条件が酷似しているこの権現山にも、必ず雪男が出現するはずだ。

吹雪の中にかすかに見える雪男らしき影を指して、陽子が叫ぶ。
『英雄さん。あれ見て!』

しかし、そのとき陽子は雪に足を取られてしまう。津村英雄が陽子を救出している間に、雪男らしき影は消えていた。急いで写真を取るために雪男らしき影の後を追った津村は、その後行方不明になってしまう。

この事件を知ったMATの伊吹隊長は、岸田隊員と郷隊員を捜索に向かわせた。遭難した片岡陽子は発見され、権現山のふもとの山荘で休んでいた。

片岡陽子のもとを訪れる岸田と郷。村人達に聞き込みをしたところ、冬山にイエティを探しに行ったまま戻らない若者が、春には死体で発見されることがあるという。この村では雪男のことをイエティと呼ぶのだ。

姿を見られたイエティは、片岡陽子を殺害しにくるに決まっているという村人の言葉が気になる郷であった。山荘で身体を休めている片岡陽子は、窓ガラス越しに覗く何者かの影を見たと言って、怯えた。

すると陽子のもとに、行方不明だった津村英雄が現れた。
『雪男なんか実在しない。あれは人間がこしらえた伝説だ』

人が変わったように冷たい表情で「雪男の論文」の発表中止を言いだす津村。あとは写真さえ撮れば資料は完璧だと言っていた津村の言葉とも思えなかった。陽子は津村の言葉に、何か釈然としないものを感じていた。

坂田兄妹が宇宙人に殺害され一人ぼっちになってしまった坂田次郎を、引き取って面倒を見てくれているのが隣室のルミ子一家だ。

正月休みにルミ子一家のもとで話をしているうちに、調査している事件の当事者・片岡陽子がルミ子の友人であることを知った郷は、東京に帰っていた片岡陽子に、ルミ子を通じて会うことができた。

詳しい話を聞こうと陽子に会った郷は、津村英雄が雪男の資料と共に東京から消えてしまったことを告げ、津村の身に何かあったのではないかと心配していた。雪男伝説は240年前から始まっている。

12年周期の寒い年になると雪男の目撃情報が必ずあること、丁度この年はその寒い年に当たることから、雪男は必ず現れることを信じて疑わない津村だった。その津村が資料と共に失踪した。郷は何か釈然としないものを感じる。

天文台へ行って、絶対零度の星の最接近について調べる郷。それはあまりに冷たすぎて物質が透明な状態になっており、目視観測できなかったことが接近に気付かなかった理由だという。その冷たい星が地球に最接近する日は、今日だ。

東京に現れた津村は、バルダック星人に乗り移られていた。津村から分離したバルダック星人は、東京を氷漬けにするために巨大化した。MAT本部から宇宙人出現の一報が入る。

郷と一緒に天文台に行った陽子は、ふとつぶやく。
『冷たい星の接近で現れた宇宙人って、雪男のことみたいね』

郷はその正体を確かめるために、陽子を連れて現場へ急行した。
『私が見たのは、あれです!』

陽子が権現山で見た雪男は、バルダック星人だった。バルダックは雪男の名を借りて権現山に住みつき、地球侵略の機会を狙っていたのだ。巨大化したバルダック星人を、マットアロー1号2機が攻撃を開始する。一方、地上からは南隊員と上野隊員がマットバズーカで攻撃する。

東京をバルダック星と同じ環境にするために、バルダックは口から冷凍光線を吐き続ける。郷隊員も地上からマットシュートで攻撃するが、冷凍光線を浴びた南、上野両隊員は全身氷漬けになっていた。陽子を助けようとして冷凍光線を浴びてしまった郷隊員は、その瞬間ウルトラマンに変身した。

寒さに弱いウルトラマンは、バルダックの口から吐きだす冷凍光線をバック転で避けながら攻撃の機会をうかがうが、破壊されたビルの残骸に足を取られ、倒れたところに冷凍光線を浴びて動けなくなってしまう。

カラータイマーが赤色に点滅をはじめた。エネルギーが残り少ない。マットアローのナパーム弾攻撃を受けてもひるまないバルダック星人だったが、その爆弾の熱でウルトラマンの身体に自由が戻った。

ブレスレットを空に飛ばすと、それが火の玉となってバルダックの真上で炎の輪を作り、バルダックの身体を包んだ。氷の星の住人バルダックは、溶けるように消えてしまった。バルダックの宇宙船も、絶対零度の星も、ウルトラマンのブレスレット攻撃によって壊滅し、地球は救われた。   (おわり)


★★★★★★★★★★★★
物語の冒頭、権現山に雪男が現れて遭難者が出たという電話がMATに入る。岸田隊員は、警察の仕事だと言う。南隊員は小説の読み過ぎだという。そんな二人の隊員に伊吹隊長は、「結論を急ぐな」と言って二人をたしなめる。

そこに丘隊員から、絶対零度の星の接近報告が入る。伊吹隊長の総合的判断が、それは警察ではなくMATの仕事だと判断させたのだろう。雪男を、頭から作り話だ・小説だと決めてかかるのは簡単だ。だがどんな小さなことでもおろそかにせず、真実探究の判断材料にするためには、「結論を急ぐな」は心しておきたい言葉である。

帰ってきたウルトラマン(2) [新マン・ドラマ]

今回は、第5話 《二大怪獣東京を襲撃》を取りあげます。

   脚本;上原正三
   音楽;冬木 透
   美術;池谷仙克
 特殊技術;高野宏一
   監督;冨田義治

【地底怪獣 グドン】
【古代怪獣 ツインテール】登場


▼地下ショッピングセンター近くの工事現場から、今日も多量の土砂がダンプカーで運び出されていく。1台のダンプカーが落としていった長さ1メートル程の落花生の形をした岩石を、学校帰りの坂田次郎君達が見つけた。

怪獣博士の異名を持つ次郎君は、この岩石に付着しているものが約1億年前のジュラ紀に生息していたアンモン貝の化石であることを、友達二人に説明してあげるのだった。

危険な工事現場に近づかないように追い払おうとする係員に、次郎君は告げた。
『これ、怪獣の卵かもしれないんだ!』

次郎君はすぐにMATの郷隊員に電話をして、この岩石の調査をするように進言するのだった。郷は、岸田隊員と共に工事現場へ駆けつけて、岸田隊員の分析の様子を見ていた。

付着している物がアンモン貝の化石であることは間違いないと岸田は判断したが、スコップで2~3回叩いた音や反応を見て、岸田はそれをただの岩石だと判断した。

常時携帯しているマットシュートで焼く処理をしただけで現場を去ろうとする岸田隊員に、郷はウルトラマンの超能力でかすかな鼓動を耳に感じ取っていた。そして、岸田隊員にもう少し詳しく調査するよう依頼をするが、自分の処理に満足した岸田は基地へ帰っていくのだった。

基地へ帰ってきた岸田は、自分の判断に配慮が足らないと言った郷とケンカになってしまう。だが二人の仲裁に入った加藤隊長は、隊歴の浅い郷に、現場では即断即決の判断を迫られることが多いMATの仕事では、隊員一人一人の判断を信じることが必要だと郷を説き伏せるのだった。

突然警報が鳴り、第二砕石場で異常な微震が発生しているため、マットジャイロで偵察に行くよう命令された南隊員と上野隊員。現場はものすごい砂塵で何も見えなかったが、やがて収まりかけた時に崩れた採掘場斜面から姿を現す赤目の大怪獣を発見した南と上野。

マットジャイロが装備するロケット弾では歯が立たず、本部へ応援を要請した。やがて、MN爆弾を積んだマットアロー1号がやって来た。アローには、先程までやり合っていた岸田と郷が搭乗していた。

採掘現場の作業員は全員避難したとの連絡を受けた岸田は、MN爆弾投下の準備に入ろうとする。岸田の知識が、怪獣の正体を明かす。
『そうだ、こいつはグドンだ』

『なるだけ正面に向かって接近するから、顔面を狙って発射しろ。慎重にな!』
『了解』
『俺がヨシというまで、撃つな!』
『了解』

マットアローがグドンにかなり接近した時、郷は現場付近で虫取り網をもって走る少女の姿を、コックピットから目撃した。
(今ここで発射しちゃ駄目だ)

その時、岸田の命令が下った。
『発射!・・・どうして発射しない、郷!』

岸田は操縦しながらMN爆弾のスイッチを押そうとするが、郷はそれを阻止した。
グドンの顔の、すぐ横をかすめるように飛行していくアロー1号。

『バカヤロウ、なぜ発射しない!』
『子供がいたんです!』
二人が言い合っているうちに、怪獣グドンは地底に逃げてしまうのだった。

基地へ戻った岸田は、加藤隊長に郷の処置を願い出た。郷のように個人的感情で動かれては、任務遂行に支障がでると思ったからだ。

『郷は俺に反感を持っていた。岩石の一件以来、俺に反発する機会を待っていたんだ!』
『違います。俺は本当に・・・(子供を見たんです)』

郷は、岸田の命令に背き怪獣を取り逃がした責任を取らされ、3日間の自宅謹慎を加藤隊長から言い渡されるのだった。謹慎処分を受けた郷は、身元引受人の坂田自動車修理工場へ帰る途中、工事現場へ寄ってあの岩石を引き取りたいと申し出たが、すでに土砂の中に埋まったあとだった。

坂田自動車修理工場へ戻った郷に、坂田は子供の頃の自分の経験を話して聞かせ、謹慎処分を食らったって、自分を信じていればいいと言われて勇気をもらう。そこに坂田の妹・アキが友人二人と通りかかり、地下ショッピングセンターへ買い物に行くから付き合ってほしいと言われる郷。

謹慎処分を受けているため、むやみに外出できないことを説明して断る郷。アキ達の行き先が地下ショッピングセンターだと聞いた郷は、そこへ行かないように頼むのだが、郷のサイズがそこの店にしかないと言って、アキ達は出かけてしまうのだった。

あの岩石を埋めた場所が、地下ショッピングセンター近くであることに懸念を抱いている郷。やがて、地下ショッピングセンターで買い物をしているアキ達を地震が襲い、アキ達は地下に閉じ込められてしまう。

坂田と二人で自動車の修理をしていた郷は、巨大な卵が出現したという話を聞いて現場へ走っていく。郷の懸念は的中してしまう。
『やはりコイツか!そうだ、アキちゃん達がこの下にいるかもしれない!』

地下街へ通じる階段を降りると、ガレキが邪魔をしてこれ以上進むことが出来ない。応援を要請して、ピッケルでガレキを破壊しようとするが埒が明かない。

非常招集命令が出て、郷はマット本部へ戻っていく。MAT本部では、地球防衛庁の岸田長官が参謀二人を連れて現れ、岸田長官の指示で、甥の岸田隊員から説明されたことは、想像だにしないことであった。

『第二採石場に出現した怪獣グドンとあの巨大な卵とは関係あるということです。あの卵はツインテールの卵だと思われます。怪獣グドンは、ツインテールを常食としていたんです』

ツインテールを食うために、グドンは東京にやって来たということであった。直ちにツインテールの卵を焼き払うためにMN爆弾を使うよう、長官の指示が出た。だが、あの卵の下には5人の人間が生き埋めになっていることを、郷は知っている。

『彼らの救出を終えるまで、MN爆弾の使用を待ってください!』
だが、岸田長官は地上で使うMN爆弾は地下には影響が出ないという。郷は、もしもの事があったらどうするのかと、長官に問う。

『東京一千万都民の安全のためだ。この際、五人のことは忘れよう』
『五人も一千万人も、命に代わりはありません!』

郷と上野は、長官の命令に反抗する意見をし、郷はMATのバッジを置いて部屋を出ていってしまう。部屋を出た郷の後を追う上野は、郷をたしなめるのであった。

『お前、何か気に食わないことがあるとすぐ辞めるのか!腹が立つのは、お前だけじゃない!お前、マットに入って何をしたっていうんだ!』

だが、アキ達があの卵の下に閉じ込められているかもしれず、五人の命を何とも思わない冷たい長官の下では働けないと、郷は思った。

『なーに、いざという時はウルトラマンが来てくれるさ。心配いらんよ、ハハハハ』
岸田長官は笑いながらそう言うと、MATを去っていった。

加藤隊長はMATの隊長として、長官命令に背くつもりであった。
『五人の救出が終わってから、行動に移る。MATが犯した不始末は、MATのやり方で収拾を付ける』

MATを辞めた郷は、地下道へ続く階段で必死にガレキを取り除こうとしていた。その時、巨大な卵に亀裂が入り、中から怪獣ツインテールが生まれてしまった。

郷はツインテールに向かっていき、ツインテールの鼻息が起こす砂埃の中に消えた郷に替わり、ウルトラマンが出現した。上部にあるツインテールの2本のしなる腕がウルトラマンの首に巻き付き、下部にある顔がウルトラマンの左足に噛みついた。

沈みゆく夕陽の中で、ツインテールと格闘するウルトラマンのカラータイマーは赤く点滅を始め、ツインテールを食べに、怪獣グドンが地底から土を舞い上げて出現した。

二大怪獣の為に、都会の機能がほぼマヒ状態の東京。ウルトラマンは、この二大怪獣とどう戦うのか・・・。 (つづく)


★★★★★★★★★★★★
新マンのスーツアクターは、ご存じきくち英一(当時・菊池英一)氏だが、怪獣のスーツアクターについては、「帰って来たウルトラ座談会」を読んでいただけば分かりますヨ!

帰ってきたウルトラマン(3) [新マン・ドラマ]

今回は、第6話《決戦!怪獣対マット》を取りあげます。

  脚本;上原正三
  音楽;冬木 透
  美術;池谷仙克
特殊技術;高野宏一
  監督;冨田義治

【地底怪獣 グドン】
【古代怪獣 ツインテール】登場

【前回までの話は・・・ 地下ショッピングセンター近くの工事現場で掘り出された岩石は怪獣ツインテールの卵であり、マットシュートで焼いたことで命を吹き返してしまう。地下ショッピングセンターで買い物途中のアキ達は、巨大化したツインテールの卵の為に地下街に取り残されたアキは友人をかばって大怪我をしていた。ウルトラマンが現れてツインテールと戦っている時、グドンがツインテールを食べに現れる。沈む夕陽を背に、ウルトラマンのカラータイマーは赤く点滅を始めていた・・・】


▼二大怪獣の為に、東京の都市機能はマヒ状態に陥っていた。カラータイマーが赤く点滅を始めたウルトラマンは、遂に夕陽を浴びながら消えていくのだった。

『ウルトラマンが敗れた・・・こうなったら我々が戦うしかない。行くぞ!』
『はい!』

加藤隊長を先頭にして、岸田以外の隊員がマットシュートを片手に怪獣に立ち向かっていく。かなり近くまで接近した時、二大怪獣が戦っているすぐ下で郷が倒れているのを発見した上野は、隊長の承諾を得て南と共に郷を救出に向かうのだった。

戦い合う怪獣が飛ばす人の頭ほどの大きさの岩石が降ってくる中、負傷している郷に肩を貸して救出に成功した南と上野。

『MATを辞めた俺を・・・すみません』
『何を言ってるんだ、俺たちは仲間じゃないか!』

ツインテールは海に向かって逃げて行く。それを追うグドン。二大怪獣の恐怖は、とりあえず去った。地下ショッピングセンター内に閉じ込められていた五人は救助隊に助けられたが、坂田アキは友人をかばって大怪我をしていた。

都市機能が完全にマヒして、電気が来ない病院に収容された坂田アキ。真っ暗な病室に発電機で光る電燈1本が照らされて、坂田、次郎、アキの友人二人と郷が見守る中で、医師はアキの絶対安静を坂田に告げるのだった。

大怪我をしても、郷のために買ったセーターの袋だけは最後まで放さなかったアキ。南・上野の両隊員が坂田アキの病室を訪れてMATを辞めた郷にチームへ戻るよう説得するが、アキの愛情に応えようとする郷は、今はアキのそばにいてやりたいと戻ることを拒否する。

郷の言葉を耳にしたアキは、自分のことは大丈夫だからMATに帰るようにと、坂田を通じて小さな声で訴えるのだった。長官命令に従わず、MN爆弾を使わなかった加藤隊長をなじる岸田長官。

怪獣グドンが夢の島へ上陸したという情報が入り、今度こそMN爆弾で仕留めるように命令する長官に、MATチームは動く。だが、グドンにはMN爆弾の効果は無かった。

最後の切り札である「スパイナー」を使うことを決断する岸田長官。スパイナーは小型水爆並みの破壊力がある武器であった。加藤隊長は長官に反対の意を唱える。

『そんなものを使えば、東京は廃墟と化してしまいます』
『日本の首都を怪獣に蹂躙されて、黙って見ておれというのか!』

長官は自分の指揮のもと、東京決戦を行うことを独断で決めてしまうのだった。直ちに避難命令を出すことを指示する長官。東京には大勢の人間と動けない病人がいるので、避難誘導には時間がかかることを訴える加藤隊長。

だが、ことを進めたい岸田長官は、ゴリ押しで、緊急避難命令を東京都全域へ発令した。アキが入院している病院は、伊豆に移動することが決定した。

病院事務員に促される坂田は、アキの病状では伊豆までの長旅は無理だとして、郷、次郎共々自宅へ帰ることを決断するのだった。避難を拒否した坂田一家の事を聞き付けて、加藤隊長以下全隊員が坂田のもとへやって来た。

『こんな所にいると、死んでしまいますよ』
避難しない坂田一家に岸田が冷たく、そう言った。スパイナーの威力を話す岸田の言葉を聞き、郷は加藤隊長にスパイナー使用を断固反対した。

『あんなものを使えば、東京は一体・・・』
スパイナーの使用で、廃墟となった東京の町を想像する郷。強く使用を反対したのだが、長官の決定を覆せなかったと、無念そうな加藤隊長。

坂田は郷に、次郎だけでも安全な場所へ避難させるように頼んだ。坂田はアキと共に東京に残るつもりだ。それを感じた次郎は、自分も残ると言い張るのだった。

自分の為に、幼い弟や足の不自由な兄を巻き添えにしてしまうことにベッドの上のアキは心を痛め、一筋の涙を流すのだった。断固として、東京を廃墟にしてはならない。郷は、そう思った。

『MATの使命は、人々の自由を守り、それを脅かすものと命を賭けて戦う。そのためにMATはあるんじゃなかったんですか、隊長!』
『私と一緒に来てくれ。共にMATの誇りを守り、任務を遂行しよう』

スパイナーを使わずに戦う戦術を考えた加藤隊長は、岸田長官に上申した。10メートルまで接近して怪獣の目に麻酔弾を撃ち込み、動きを止めるという戦法であった。だが、危険すぎるという理由で、却下されてしまう。

しかし、今まで長官の意見に逆らわなかった甥の岸田隊員が、この時ばかりは猶予が欲しいとばかりに長官に頼み込んだ。

『長官、僕からも是非お願いします。隊長の提案通り、麻酔弾を撃ち込んでみるんです。それがダメなら、スパイナーを!』

MATの解散を賭けて行うこの作戦に、加藤隊長は全員に向かって告げた。
『我がMATは今度の戦いに、すべてを賭ける。全力を尽くして戦おう!』

夢の島に朝日が昇ろうとしていた。じっと時を待つ2台のジープ。各ジープには麻酔弾を積んだマットバズーカが装備されている。ツインテールが地底から出現して、鼻息で土を飛ばしながらこちらへ迫ってくる。加藤隊長は、できるだけ接近して目を狙って撃つよう指示した。

1号車のバズーカが左目に被弾して、目が潰れた。すぐにUターンした1号車は、しかし車輪が砂にハマリ動けなくなってしまう。郷が囮になってツインテールの意識をそらしているうちに、無事に脱出した1号車。今度は、グドンがツインテールを食いに地底から出現した。

2号車の前に出現したグドンは、尻尾で2号車を弾き飛ばしてしまうのだった。南、岸田、上野は無事だったが、グドンが近くまで接近していた。それをみた郷は、ウルトラマンに変身した。

グドンとツインテールに挟まれて格闘するウルトラマンを、マットバズーカで援護射撃するMATチーム。ツインテールの右目を狙った隊長のバズーカ砲が見事に被弾し、両目を失ったツインテールはグドンの方へ突進して行き、グドンに捕らえられてしまうのだった。

グドンの尻尾を噛んで抵抗するツインテールだったが、グドンは遂にツインテールを食い殺してしまう。グドンとの一騎打ちをするウルトラマン。側転からのキック、背負い投げ、サイドスープレックスがグドンの動きを遂に止めた。

十字を組んだ手から発射されたスペシウム光線が、動けなくなったグドンにとどめを刺した。激闘は終わった。

『みんな、無事か!』
夕陽を背にして、加藤隊長が叫ぶ。埃まみれの顔で隊長を真ん中にして集まり、無事を喜び合う隊員達。

東京が廃墟となる危機は去り、坂田家ではアキが元気を取り戻していた。窓を開けて明るい陽射しを入れる坂田と次郎。アキの回復を喜ぶかのように、ハトが木の枝にとまってアキの部屋を覗いていた。 (終わり)


★★★★★★★★★★★★
新マンの前後編は5つ(第一・二話を含む)あるが、全編を通してみてもかなり見応えのある作品として、筆者は大好きな作品である。ウルトラマン頼みの岸田長官のアホさ加減が際立つ一編である。郷同様、あんな上司の下では働きたくないね。

帰ってきたウルトラマン(4) [新マン・ドラマ]

今回は、第1話 《怪獣総進撃》を取りあげます。

  脚本;上原正三
  音楽;冬木 透
  美術;池谷仙克
特殊技術;高野宏一
  監督;本多猪四郎

【ヘドロ怪獣 ザザーン】
【オイル怪獣タッコング】
【凶暴怪獣アーストロン】登場


▼世界各地が異常気象に覆われ、日本列島でも毎日のように起こる小地震が地殻の変動を進めて、遂に怪獣達が一斉に目を覚ました。東京湾に出現した二大怪獣の為に、勝鬨橋は簡単に破壊されてしまうのだった。

全身が海草のようなヘドロで覆われている緑色の怪獣ザザーンと、赤紫色の体色で全身にタコの吸盤を付けた怪獣タッコング。二匹とも怪獣王は俺だと言わんばかりに、相手との殴り合いをしている。

このような怪獣の出現を想定して組織された怪獣攻撃隊MAT。「マット」と呼ばれるこのチームは、モンスター・アタック・チームの略称で、国際連合の地球防衛組織に属する特別チームであった。加藤隊長と4人のメンバーで構成されるエキスパート集団であった。

『怪獣を都心に入れては大惨事になる。南、岸田、上野。君達は空から攻撃しろ』
『はい、出撃します』

オレンジ色のユニフォームで身を固めた精鋭が、マットアロー1号、2号で出撃した。加藤隊長はチームの紅一点・丘隊員を連れて、マットビハイクルで現場に行き、状況を見極めながら次の作戦を考えるのだ。

その頃、坂田自動車修理工場の小学生・坂田次郎君が騒いでいた。
『怪獣だぁ、怪獣だよ!兄ちゃん、この車怪獣に壊されたらどうするの?』

レースカーの流星号を修理中の年齢の離れた兄・坂田健に、そう問いかける次郎。騒ぎを聞いて、姉のアキも集まってきた。車両の下に潜って修理をしていた郷秀樹が、顔を出して次郎に言った。
『怪獣?』

好奇心が旺盛な次郎は、近くまで行って怪獣を見たくて仕方がないのだ。
『次郎、止めるんだ!』

片足の不自由な兄の健には、次郎を追いかけることが出来ない。郷は坂田の代わりに、次郎の後を追って走っていった。

MATの戦闘機2機が、攻撃を開始した。ロケット弾を撃ち込むマットアロー2号。マシンガンで攻撃するマットアロー1号。だが二匹の怪獣はお構いなしに格闘を続け、どちらかが倒れるたびにビル群はメチャメチャに破壊されてしまうのだった。

ザザーンはタッコングに食いちぎられて、手足をブルブル振るえさせると息絶えてしまった。好奇心の強い次郎は警察の非常線をかいくぐると、怪獣がよく見える所まで行き、そのビル影で2匹の戦う様子を観察していた。郷も次郎の後を追って、やっと捕まえた。

『次郎!』
『郷さん、怪獣!』

ザザーンが倒れた後、タッコングが一匹で大暴れしている。
『さぁ、帰るぞ・・・』

後から郷たちがいる場所に走ってやって来たのは、MATの加藤隊長と丘隊員と女性。女性の子供がアパートの屋上にいるハト小屋のハトを逃がすと言ってアパートに向かって行ったため、MATに救助を求めてきたのだった。

アパートの階段を上っていく子供の姿を確認した郷は、助けに行こうとする丘隊員を制して自分が走っていった。郷は屋上で、子供と一緒にハト小屋のハトを逃がすと、タッコングが迫っているアパートから急いで子供を連れて逃げた。

もう近くまでタッコングは迫っていた。狭いビルとビルの間を強引に進んでくるタッコングは、次々とビルを破壊していく。郷と子供は、遂にタッコングの破壊したビルの破片に押しつぶされてしまう。

ガレキの山の中で、子供が潰されないように郷が踏ん張っていたおかげで、子供はかすりキズ程度で済んだ。郷は子供が無事に逃げ出すのを見届けると、重たいガレキの圧力に屈してしまうのだった。

その時。それまで好き勝手に破壊を繰り返していた怪獣タッコングが動きを止め、激しい発光のあと逃げるように海中へ没していった。

『今の光りは何だ!?』
加藤隊長も見た、強烈な光の正体は何か。その頃、郷秀樹は重体で病院へ搬送されていた。

親代わりの坂田が病室に入ってきて、励ますように郷に呼びかける。
『聞こえるか郷!流星号は完成したぞ。いつでも走れるんだぞ!』

今や、郷の命は風前の灯であった。郷の呼吸の様子を示すフラスコの気泡が、遂に出てこなくなってしまう。手術の甲斐も無く、臨終を迎える郷秀樹。

『郷さん!』(アキ)
『郷さん、死んじゃイヤだ!』(次郎)

加藤隊長は、横たわる郷に黙礼をした。坂田は涙を見せまいとして顔を背け、ロザリオを郷の胸の上にそっと乗せるアキ。

その晩、郷が乗るはずだった流星号を、送り火にして天国へ走らせた坂田三兄弟。花束と、アキは写真を、次郎は好きなプラモデルを乗せて、ガソリンを注いで燃やす坂田。
『郷・・・俺がお前にしてやれることは、せいぜいこの程度だ。あんまり飛ばすんじゃないぞ・・・』

同じ日の晩、病院である事件が起きた。郷秀樹が蘇生したのだ。目を開ける郷。
『ここはどこだ?俺は一体どうしたんだ?』
郷は、夢を見たような気がした。夢の中で誰かが自分に語りかけていた。

『郷秀樹!私は君の勇敢な行動に感激した・・・私はこのままの姿では地球上に留まることが出来ない。そこで君に命を預ける。地球の平和と人類の自由の為に、共に頑張ろうではないか!』

あの時タッコングが強烈な光を浴びたあとに逃げるように海へ潜ったのは、ウルトマンがスペシウム光線をタッコングに浴びせたからだった。加藤隊長が見たまぶしい光の正体と、タッコングのおかしな行動の原因はこれだった。

蘇生した郷秀樹は、坂田のもとへ戻って来た。だが流星号はすでに灰になり、ガラクタと化していた。
『流星号にあなたの魂を乗せて、送り火にしたのよ・・・』

坂田アキは生きて戻ってきた郷に嬉しさを隠せない一方で、茫然とした郷に自分の笑顔を見せるわけにもいかないと思った。

郷は坂田に、もう一度流星号を作ろうと願い出るのだが、坂田は話を違う方向へ持っていく。
『君は今日から、あの人所へいくんだ。MATチームの一員として、ぜひ君を欲しいとおっしゃっている』

マットビハイクルで加藤隊長が到着すると、坂田は郷にそう言った。
『君の不屈の精神力と強靭な肉体は、我がMATチームにふさわしい。来てくれるね!郷君』
『急にそんなこと言われても、俺・・・』

そんな時、郷の耳に何かの咆哮(ほうこう;獣などがたけりさけぶこと)が聞こえてくる。「誰かが俺を呼んでいる」と思った郷は、工場に置いてある車に乗ると、自分でもわからないがどこかへ向かおうとしていた。郷はまだ自分にウルトラマンが乗り移ったことを知らない。

郷は一度死んで、ウルトラマンの命をもらって蘇生したことに、まだ気付いていなかった。加藤隊長のもとにも、怪獣出現の連絡が本部から入った。朝霧火山から出現したのは、ゴジラタイプの正統派怪獣アーストロン。口から吐く熱線で村を焼き払っていく。

MATは地上からマットシュートで攻撃するが、熱線を吐かれて炎が周囲に回り、退避するしかなかった。郷秀樹は、ウルトラマンの超能力によって怪獣の出現場所を知り、車で300キロ走って朝霧火山までやって来た。

途中で倒れた家の一部に足をはさまれている老人を郷は自分だけの力で必死に助け出すと、キラキラと輝く「ウルトラマンの光」が出現して郷を変身へと導く。郷は両手を広げてウルトラマンに変身した。

何度もチョップを繰り出すウルトラマンに、アーストロンはひるむことなく向かってくる。アーストロンの吐く熱線がウルトラマンに命中し、劣勢になるウルトラマン。

ナレーション; ウルトラマンのエネルギーは3分間しか続かない。カラータイマーが青から赤に変わると危険信号だ。ウルトラマン頑張れ!

首投げから飛行機投げに持っていき、頭部の一本ヅノをへし折ると、アーストロンは戦意喪失した。スペシウム光線を頭部に受けたアーストロンは、火口に落ちて爆発してしまうのだった。

郷秀樹は、自分でもよくわからないうちに朝霧火山付近の河原で倒れていた。郷の脳裏に声が聞こえてくる。

『郷秀樹、私はウルトラマンだ。君は一度死んだ。そこで私の命を君に預けたのだ。君はもうウルトラマンなのだ!これは君と私だけの秘密だ』

『俺はウルトラマン。俺の使命は、人類の自由と幸福を脅かすあらゆる敵と戦うこと・・・』 (つづく)


★★★★★★★★★★★★
第一話は、三体も怪獣が出てくるという大盤振る舞いの話である。あのカッコいいアーストロンがあの程度で負けてしまうのは、なんとしても勿体ない気がする。久々のウルトラマンの話に、子供時代の筆者もウキウキしたことをよく覚えている。若い人は知らないと思うけど、「肝っ玉かあさん」とのツーショットもあった(笑)

帰ってきたウルトラマン(5) [新マン・ドラマ]

今回は、第2話 《タッコング大逆襲》を取りあげます。

  脚本;上原正三
  音楽;冬木 透
  美術;池谷仙克
特殊技術;高野宏一
  監督;本多猪四郎

【オイル怪獣タッコング】登場

【前回までの話は・・・世界的な異常気象の影響で、日本でも怪獣達が目を覚ましていた。東京湾に出現したタッコングはザザーンを倒し、町を破壊しながら暴れ回るが、地球に帰ってきたウルトラマンによって一度は退けられてしまう。子供や仔犬の命を救うためには危険を顧みず、自らの命を落としてしまった郷秀樹青年の行動に感動したウルトラマンは、死んだ郷に乗り移って自分の命を託すことにした。ここにウルトラマンの超能力を持った人間・郷秀樹が誕生し、平和と人類の自由のために戦うことを決意する・・・】


▼MATに入隊した郷秀樹は、剣道や柔道、射撃などでチームの先輩たちを上回る成績を出した。郷をMATの一員として迎えたことについて、自分の目に狂いは無かったことを喜ぶ加藤隊長。

一方、ウルトラマンが自分に乗り移っていることで身体能力が大幅に向上していることに、郷は嬉しさと同時に自惚れが生じていることに、自身は気づいていなかった。

海中に逃げたまましばらく現れなかったタッコングが、海面に浮くオイルプラント施設を襲った。これ以上被害を出さないためにも、仕留めるつもりで出撃したMATだったが、またしても海中へ逃げられてしまうのだった。

東京湾内を棲みかにしていることが調査で分かり、タッコング撃滅作戦を練るMAT。郷秀樹を入れて6名いる隊員全員が、六角形のテーブルを囲んで作戦会議に臨んだ。

『マットサブで、海底攻撃をするべきだと思う』
『確実に撃退できる作戦が無い限り、海底まで追う必要は無いと思う。失敗して上陸されるよりはマシだ』

いろいろな意見が出たが、加藤隊長の考えはこうだ。
『マットサブ1号と2号で海底を探索し、発見次第、互いに連絡を取り合いながら挟撃作戦だ。Z弾は出来るだけ接近して、口の中へ撃ち込め・・・解かったな、郷』

加藤隊長は、実戦経験の無い郷に念を押した。
『解りました、隊長。安心して見ていてください』

『実戦は射撃場とは違う。甘く見るなよ』
射撃で郷に負けた岸田は、先輩隊員としての意見を述べた。

『任せておいてください』
『こいつ、やけに自信満々だな・・・』

実戦を一度も経験していない郷の言葉や態度に表れる自信は何なのか。剣道で負けた上野は、郷の態度や言葉に不安なモノを感じた。加藤隊長は、最後にもう一度念を押した。
『作戦はあくまで冷静沈着に、協力しておこなうように!』

マットサブ1号に南と郷、2号に岸田と上野が乗り、海底探索を行っていく。1号がタッコングをソナーで発見、すぐに2号へ連絡した。

『南隊員、見つけ次第やっつけちゃいましょうよ!』
『作戦は忠実に守るんだ。俺たちだけでやって、失敗したらどうするんだ。2号を待って、攻撃開始だ』

しかし郷は、目の前に出現したタッコングを見た途端、2号を待たずにミサイルのレバーを引いてしまう。二本のミサイルを撃ち込まれたタッコングは傷を負い、マットサブ1号に襲いかかってきた。払い落とされて海底に激突したマットサブ1号内では、南隊員が負傷したうえに気を失ってしまった。

郷は両手を広げてウルトラマンになれ!と心の中で叫んでみるが、ウルトラマンにならない。
『どうしたんだ!ウルトラマンになれ・・・どうして変身しないんだ!』

作戦が失敗して戻ってきたマットサブ1号と2号。作戦室で岸田が叫んだ。
『勝手に攻撃しておいてその上逃がすなんて、なってないぞ』

2号艇の岸田が、作戦の失敗について南を非難した。
『すまん。1号の艇長は俺だ。俺が撃てと言ったから郷が撃ったんだ。責任はすべて俺にある』

右手と頭に傷を負った南は、自分にだけ処分を下すよう、隊長へ申し出た。
『そうはいかん・・・郷は作戦を無視して、勝手な行動を取った。従って隊員としての資格は無い。直ちに辞めてもらう!坂田さんの所へ帰り給え!』

加藤隊長は、録音されていたマットサブ1号内での南と郷の会話を皆の前で再生して、真実を公表した。

『隊長。郷は初めての出撃で、気が動転していたんです。誰にでもあるミスじゃないですか!』
『郷の取った行動はミスではない。身勝手な思い上がりだ!』

南は、郷にもう一度チャンスを与えようと隊長に食い下がったが、加藤隊長の郷に対する憤りや落胆は大きく、リーダーとしてとても許せるものではなかった。

郷は荷物をまとめて、坂田自動車工場に戻ってきた。あのとき、どうしてウルトラマンになれなかったのか?心の中で広がる疑問。
『加藤隊長から連絡があった。郷を返すと言ってきたよ・・・』

もう一度流星号を作ってレースに出場する夢を持ちかけた郷を、坂田は断った。「お前と一緒に組む気持ちは、もうない」と郷を怒らせる言葉をわざと発して、郷に一人で考える時間を与えようとする坂田健。

坂田自動車工場を飛び出してきた郷は、地面に仰向けになって青空を見ながら、一人になって考えてみた。そして、ウルトラマンであることに思いあがっていた自分、ウルトラマンであることを誇らしく振り回そうとしていた自分に気付く。

まず、郷秀樹として全力を尽くし努力しなければならなかったのだ。今の郷の心に、そう反省する気持ちが芽生えていた。

タッコングが再び上陸して、石油コンビナートを襲撃して来た。郷が抜けて5人となったMAT。さらに南が負傷しており、加藤隊長は南を基地へ置いて4人で出撃した。マットアロー1号で攻撃する岸田と上野。地上から避難誘導をする隊長と丘。そこに怪我をおして、南がやって来た。

地下の機械室に閉じ込められた作業員達を、救出に向かう南。機械室に着いた南は、通ってきた地下通路がガレキでふさがれてしまった事を作業員達に伝え、残りの出口を探した。

地上へつながるマンホールに登るしか手段が無いことが解り、すぐにその方法で脱出を試みるが、タッコングが壊したオイルタンクのオイルが流れ出して、マンホールからオイルが落ちてきた。これでは、すぐにも火が回るかもしれなかった。

自分のやるべきことを見つけた郷は、現場へ駆けつけてきた。郷の姿を見つけた加藤隊長は、心の中で喜んだ。
『郷。必ず来ると思っていた・・・』

地上からマンホールのふたを開けて中の様子を覗いた郷は、南と4名の作業員を確認すると、ハシゴを伝って下へ降りて行った。地下機械室内は煙が立ち込めていて、救助にきた南も呼吸するのがやっとだった。

『南隊員!』
『おお、郷か。この人達を早く・・・』

一人ずつ肩へ担いで、加藤隊長の所まで運ぶ郷。だが三人目を運ぼうとしたところで、室内に炎が広がってきた。郷は必死に炎を消そうとしたが、もう限界が来ていた。その時、「ウルトラマンの光」が郷を変身へと誘った。

両手を広げた郷は、ウルトラマンに変身した。地下にいた残りの作業員と南隊員を助けだしたウルトラマンは、タッコングに向かって行った。タッコングの口からオイルが吐き出された。

一瞬ひるんだウルトラマンだが、タッコングの右手を引きちぎると、少し後ろに下がって必殺スペシウム光線を放った。タッコングは動きを止めると吸盤のような穴から炎を噴き出し、やがて大爆発して粉々になってしまった。

坂田自動車工場に、マットビハイクルで加藤隊長と郷がやって来た。親代わりの坂田のもとへ返して何かをつかんでくれた郷は、今度の事件でMATの隊員に恥じない仕事をやり遂げた。郷を立ち直らせてくれたことにお礼が言いたくて、加藤隊長は寄ったのだった。

坂田はMAT隊員として立ち直った郷に、思いがけないプレゼントを贈るのだった。
『隊長にお願いがあります。休暇の時に郷を貸してください。流星2号を作りたいんです』

坂田に一度断られた流星号で優勝する夢。だが、それは坂田の愛のムチであったことを、今になって知る郷だった。
『俺たちの夢だ・・・大事に育てていこう!』

涙を流して喜ぶ郷に、そっとハンカチを渡すアキ。この一瞬に幸せを感じているアキであった。 (終わり)


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人間は「力」を手に入れると、それまでの生き方がウソのように変わってしまう、弱い生き物だと思う。巨大な権力を持つようになったり、一生かかっても手に入らないような金額のお金が急に手に入ったりしたときなど、自分の環境の急激な変化によって性格までも変わってしまう例が、歴史上の人物にも見受けられる。郷秀樹もウルトラマンの能力を身に着けたことで、一時思い上がってしまうように・・・

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