ウルトラセブン(34) ~『それは・・・血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ・・・』 [ウルトラセブン・ドラマ3]
今回は、第26話『超兵器R1号』を取り上げます。
監修;円谷英二
脚本;若槻文三
特殊技術;的場 徹
監督;鈴木俊継
◆地球防衛軍基地内の秘密工場で造られている,、惑星攻撃用超兵器R1号。その設計図を見て感心しているフルハシ、ソガ、アンヌ、アマギ。だが、ダンだけは腕組みをして、穏やかではない。フルハシやアンヌは、この超兵器R1号が完成すれば地球の防衛は完璧だと考えていた。
しかも、新型水爆8千個分の爆発力を持つこのR1号は実験用だという。48時間後にこの防衛軍基地から打ち上げることが決まっていた。
『我々は、ボタンの上に指を乗せて、侵略しようとするヤツを待っていればいいんだ』
『それよりも、地球に超兵器があることを知らせればいいのよ!』
『そうか!そうすれば、侵略してこなくなる』
『そうよ!使わなくても、超兵器があるだけで平和が守れるんだわ。ねぇダン!』
みんなが喜んでいるその中で、一人浮かない顔のダン。ダンはフルハシと一緒に作戦室を出た時、フルハシに訊いた。
『フルハシ隊員。地球を守るためなら、何をしてもいいのですか?』
超兵器製造には、切り札を持つことで、地球侵略をしようとしても無駄であることを相手に悟らせる狙いもある。だが、ダンは決心した。
『実験の中止を、参謀にお願いしてきます!』
ダンの言葉を聞いたフルハシは、強引にアンヌのいるメディカルルームへダンを押し込めた。
『忘れるな、ダン。地球は狙われているんだ。我々の力では守り切れないような強大な侵略者がきっと現れる。その時のために・・・』
『超兵器が必要なんですね?!』
『決まっているじゃないか』
『侵略者は超兵器に対抗して、もっと強力な破壊兵器を造りますよ!』
『我々は、それよりももっと強力な兵器を造ればいいじゃないか!』
『それは・・・血を吐きながら続ける・・・悲しいマラソンですよ』
しかも、この実験が成功すれば、R1号の十数倍の爆発力を持つR2号の組み立てにとりかかることになっている。参謀室ではタケナカ参謀が、この実験に妨害が入らないよう十分警戒することを、キリヤマ隊長に指示した。
タケナカ参謀やキリヤマ隊長と一緒に参謀室にいるのは、このプロジェクトの責任者として名を連ねる地球防衛国際委員会の瀬川委員と宇宙生物学の第一人者・前野博士であった。実験場にギエロン星を選んだのは前野博士であった。
『シャール星座の第七惑星。あの星でしたら、地球への影響は全くありません。それに、生物もいません』
『生物がいないというのは、確実なんですか?』
キリヤマ隊長が訊いた。
前野博士らが6か月かけて検討した結果、ギエロン星の環境は、生物の棲めない環境であることを確かめたというのだった。
『実験が成功すれば、ギエロン星は宇宙から姿を消すでしょう』
笑顔でそう話す、前野博士。
予定通りR1号は打ち上げられ、大爆発と共に吹き飛んでしまうギエロン星。
『成功です、大成功です。巨大な炎が吹きあがり、ギエロン星は完全に粉砕されました』
宇宙観測艇からの実験成功の報告を、作戦室で受けたタケナカ参謀やウルトラ警備隊の面々は大喜びだった。ただ一人ダンだけは、その余韻から逃げるように、宇宙パトロールに出発していくのだった。
そのうしろ姿をみたアンヌは、さっきのフルハシとダンとのやりとりを思い出していた。悲しい顔をしてダンが言っていた「悲しいマラソン」という言葉を、アンヌは思い出していた。
『こちら、宇宙観測艇8号。緊急情報、緊急情報。ギエロン星から・・・ギエロン星から攻撃を受け・・・』
そのあとの通信は、妨害電波のように聞き取れ無くなってしまった。観測艇8号との通信が途絶えたことを受け、タケナカ参謀と前野博士、瀬川委員が作戦室へ入ってきた。
そして、観測艇8号との通信記録を再生して、顔色が青ざめる三人。
『・・・ギエロン星から、攻撃を受け・・・』
『攻撃?そう言ったな、今!』
タケナカ参謀は、最悪のケースを早くも想定しているようだった。
『そんなバカなことはありません。ギエロン星には生物は棲んでいません!』
ギエロン星のあった方角から、真っ直ぐ地球へ向かう飛行物体をキャッチした本部のレーダー。宇宙パトロール中のホーク1号へ連絡を取るキリヤマ隊長。ダンは、ホークを操縦しながら後悔していた。
『僕は絶対にR1号の実験を妨害するべきだった。地球を愛していたのなら。それができたのは、僕だけだったのに・・・』
やがてホーク1号は、真っ直ぐにこちらへ向かって飛んで来る巨大な生物を発見する。連絡を聞いて、驚く前野博士。ギエロン星の環境は過酷だった。
『信じられません。ギエロン星は温度270度、酸素0.6パーセント、金星とよく似た燃えない焦熱地獄です。そんな所に生物が棲めるはずがありません!』
しかし、そこに生物がいた。しかも、R1号の放射能で変異してしまったのだ。
ギエロン星から飛行してきた巨大生物は、隕石と衝突しても隕石を砕いて、何事も無かったかのように飛行を続け、遂に地球へ到達した。
防衛軍は、ただちに特殊ミサイルをホーク3号に積んで出撃した。ギエロン星獣はその爆撃で粉々に散ってしまう。だが、キリヤマ隊長は、この結果に納得していない。惑星が吹き飛ぶ超兵器の爆発でも死ななかったものが、あの程度のミサイルで死ぬだろうか。
その夜。キリヤマ隊長の不安は当たってしまう。ギエロン星獣の体液が肉片を繋ぎとめ、ギエロンは復活した。ギエロン星獣は口から放射能の灰を噴き出しながら、東京方面へ進んでいく。
『風に乗って放射能の灰がどんどん広がっています。東京に警報を出してください!』
瀬川委員は、R2号の破壊力に期待したいというが、前野博士はR2号の放射能で、より巨大な生物に変異することを恐れた。今はホーク1号で攻撃するほかは無い。だが、ギエロン星獣の攻撃でホーク1号は不時着し、キリヤマ、フルハシ、ダンの3名は、地上攻撃に移るのであった。
ギエロン星獣の吐く灰を避け、風上へ向かう指示を出すキリヤマ。だがダンはそれを無視して風下に回り、灰を浴びながらウルトラセブンに変身した。
セブンの超兵器・アイスラッガーが効かない。ギエロン星獣の体のどこに当たっても、跳ね返されてしまう。ギエロンの多彩な光線攻撃に、セブンは苦しむ。
だが、太陽光線を吸収して最後の力を振り絞り、セブンはギエロンの右腕を引きちぎる。倒れて起き上がれないギエロン星獣の喉元をアイスラッガーで切り裂き、暴れていたギエロン星獣は目を閉じて、静かに死んでいくのだった。
超兵器の開発は、相手にも破壊兵器を造らせるきっかけを持たせることになる、ということに気づいたタケナカ参謀や前野博士たち。多量の放射能を浴びていたダンは、ひとりメディカルセンターで休んでいた。
タケナカ参謀と前野博士がダンの見舞いに来て、防衛委員会で「超兵器開発の中止」を提案することを、ダンに約束するのだった。それを聞いたダンは笑顔になり感謝するのだが、しかし表情は暗い。ギエロン星を救えなかった負い目が、ダンの心に残っていたからだ。
人類は、血を吐くマラソンを続けるほど愚かではないと信じたい・・・ (終わり)
★★★★★★★★★★★★
今年はウルトラシリーズ生誕50年を迎える。NHKでドラマと怪獣・宇宙人のNo.1を決める投票をおこなっているが、筆者の思うNo.1ドラマは、この「超兵器R1号」か「さらばウルトラマン」だと思っている。ストーリーが抜群に面白い。
30分の中に面白要素がたっぷり詰まっている。「さらば・・・」も、同様だ。そして、No.1 怪獣は、もちろんエレキングである。
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監修;円谷英二
脚本;若槻文三
特殊技術;的場 徹
監督;鈴木俊継
◆地球防衛軍基地内の秘密工場で造られている,、惑星攻撃用超兵器R1号。その設計図を見て感心しているフルハシ、ソガ、アンヌ、アマギ。だが、ダンだけは腕組みをして、穏やかではない。フルハシやアンヌは、この超兵器R1号が完成すれば地球の防衛は完璧だと考えていた。
しかも、新型水爆8千個分の爆発力を持つこのR1号は実験用だという。48時間後にこの防衛軍基地から打ち上げることが決まっていた。
『我々は、ボタンの上に指を乗せて、侵略しようとするヤツを待っていればいいんだ』
『それよりも、地球に超兵器があることを知らせればいいのよ!』
『そうか!そうすれば、侵略してこなくなる』
『そうよ!使わなくても、超兵器があるだけで平和が守れるんだわ。ねぇダン!』
みんなが喜んでいるその中で、一人浮かない顔のダン。ダンはフルハシと一緒に作戦室を出た時、フルハシに訊いた。
『フルハシ隊員。地球を守るためなら、何をしてもいいのですか?』
超兵器製造には、切り札を持つことで、地球侵略をしようとしても無駄であることを相手に悟らせる狙いもある。だが、ダンは決心した。
『実験の中止を、参謀にお願いしてきます!』
ダンの言葉を聞いたフルハシは、強引にアンヌのいるメディカルルームへダンを押し込めた。
『忘れるな、ダン。地球は狙われているんだ。我々の力では守り切れないような強大な侵略者がきっと現れる。その時のために・・・』
『超兵器が必要なんですね?!』
『決まっているじゃないか』
『侵略者は超兵器に対抗して、もっと強力な破壊兵器を造りますよ!』
『我々は、それよりももっと強力な兵器を造ればいいじゃないか!』
『それは・・・血を吐きながら続ける・・・悲しいマラソンですよ』
しかも、この実験が成功すれば、R1号の十数倍の爆発力を持つR2号の組み立てにとりかかることになっている。参謀室ではタケナカ参謀が、この実験に妨害が入らないよう十分警戒することを、キリヤマ隊長に指示した。
タケナカ参謀やキリヤマ隊長と一緒に参謀室にいるのは、このプロジェクトの責任者として名を連ねる地球防衛国際委員会の瀬川委員と宇宙生物学の第一人者・前野博士であった。実験場にギエロン星を選んだのは前野博士であった。
『シャール星座の第七惑星。あの星でしたら、地球への影響は全くありません。それに、生物もいません』
『生物がいないというのは、確実なんですか?』
キリヤマ隊長が訊いた。
前野博士らが6か月かけて検討した結果、ギエロン星の環境は、生物の棲めない環境であることを確かめたというのだった。
『実験が成功すれば、ギエロン星は宇宙から姿を消すでしょう』
笑顔でそう話す、前野博士。
予定通りR1号は打ち上げられ、大爆発と共に吹き飛んでしまうギエロン星。
『成功です、大成功です。巨大な炎が吹きあがり、ギエロン星は完全に粉砕されました』
宇宙観測艇からの実験成功の報告を、作戦室で受けたタケナカ参謀やウルトラ警備隊の面々は大喜びだった。ただ一人ダンだけは、その余韻から逃げるように、宇宙パトロールに出発していくのだった。
そのうしろ姿をみたアンヌは、さっきのフルハシとダンとのやりとりを思い出していた。悲しい顔をしてダンが言っていた「悲しいマラソン」という言葉を、アンヌは思い出していた。
『こちら、宇宙観測艇8号。緊急情報、緊急情報。ギエロン星から・・・ギエロン星から攻撃を受け・・・』
そのあとの通信は、妨害電波のように聞き取れ無くなってしまった。観測艇8号との通信が途絶えたことを受け、タケナカ参謀と前野博士、瀬川委員が作戦室へ入ってきた。
そして、観測艇8号との通信記録を再生して、顔色が青ざめる三人。
『・・・ギエロン星から、攻撃を受け・・・』
『攻撃?そう言ったな、今!』
タケナカ参謀は、最悪のケースを早くも想定しているようだった。
『そんなバカなことはありません。ギエロン星には生物は棲んでいません!』
ギエロン星のあった方角から、真っ直ぐ地球へ向かう飛行物体をキャッチした本部のレーダー。宇宙パトロール中のホーク1号へ連絡を取るキリヤマ隊長。ダンは、ホークを操縦しながら後悔していた。
『僕は絶対にR1号の実験を妨害するべきだった。地球を愛していたのなら。それができたのは、僕だけだったのに・・・』
やがてホーク1号は、真っ直ぐにこちらへ向かって飛んで来る巨大な生物を発見する。連絡を聞いて、驚く前野博士。ギエロン星の環境は過酷だった。
『信じられません。ギエロン星は温度270度、酸素0.6パーセント、金星とよく似た燃えない焦熱地獄です。そんな所に生物が棲めるはずがありません!』
しかし、そこに生物がいた。しかも、R1号の放射能で変異してしまったのだ。
ギエロン星から飛行してきた巨大生物は、隕石と衝突しても隕石を砕いて、何事も無かったかのように飛行を続け、遂に地球へ到達した。
防衛軍は、ただちに特殊ミサイルをホーク3号に積んで出撃した。ギエロン星獣はその爆撃で粉々に散ってしまう。だが、キリヤマ隊長は、この結果に納得していない。惑星が吹き飛ぶ超兵器の爆発でも死ななかったものが、あの程度のミサイルで死ぬだろうか。
その夜。キリヤマ隊長の不安は当たってしまう。ギエロン星獣の体液が肉片を繋ぎとめ、ギエロンは復活した。ギエロン星獣は口から放射能の灰を噴き出しながら、東京方面へ進んでいく。
『風に乗って放射能の灰がどんどん広がっています。東京に警報を出してください!』
瀬川委員は、R2号の破壊力に期待したいというが、前野博士はR2号の放射能で、より巨大な生物に変異することを恐れた。今はホーク1号で攻撃するほかは無い。だが、ギエロン星獣の攻撃でホーク1号は不時着し、キリヤマ、フルハシ、ダンの3名は、地上攻撃に移るのであった。
ギエロン星獣の吐く灰を避け、風上へ向かう指示を出すキリヤマ。だがダンはそれを無視して風下に回り、灰を浴びながらウルトラセブンに変身した。
セブンの超兵器・アイスラッガーが効かない。ギエロン星獣の体のどこに当たっても、跳ね返されてしまう。ギエロンの多彩な光線攻撃に、セブンは苦しむ。
だが、太陽光線を吸収して最後の力を振り絞り、セブンはギエロンの右腕を引きちぎる。倒れて起き上がれないギエロン星獣の喉元をアイスラッガーで切り裂き、暴れていたギエロン星獣は目を閉じて、静かに死んでいくのだった。
超兵器の開発は、相手にも破壊兵器を造らせるきっかけを持たせることになる、ということに気づいたタケナカ参謀や前野博士たち。多量の放射能を浴びていたダンは、ひとりメディカルセンターで休んでいた。
タケナカ参謀と前野博士がダンの見舞いに来て、防衛委員会で「超兵器開発の中止」を提案することを、ダンに約束するのだった。それを聞いたダンは笑顔になり感謝するのだが、しかし表情は暗い。ギエロン星を救えなかった負い目が、ダンの心に残っていたからだ。
人類は、血を吐くマラソンを続けるほど愚かではないと信じたい・・・ (終わり)
★★★★★★★★★★★★
今年はウルトラシリーズ生誕50年を迎える。NHKでドラマと怪獣・宇宙人のNo.1を決める投票をおこなっているが、筆者の思うNo.1ドラマは、この「超兵器R1号」か「さらばウルトラマン」だと思っている。ストーリーが抜群に面白い。
30分の中に面白要素がたっぷり詰まっている。「さらば・・・」も、同様だ。そして、No.1 怪獣は、もちろんエレキングである。
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