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革命的怪獣デザイン2・カネゴンとケムール人 ~形態学的怪獣論25 [怪獣論・怪獣学D]

カネゴン
日用品をモチーフにし、怪獣の素材があらゆるところに存在し得ることを知らしめた、代表的傑作怪獣カネゴン。形態ばかりか、その名前も示唆に富み、これ以降教育怪獣ママゴンなどの傍流を産み続けた。(つまり、〇〇怪獣××ゴンという形で様々な場所に使われるようになったということ)

頭はガマグチ(ファスナーが付いているので正確には財布か?)、胴体は妊婦であるという。劇中に伝説の怪獣カネゴンの形態に関する詳しい描写のセリフがあるが、脚本が先か、デザインが先かは定かでない。脚本家とデザイナーの協議の中から生まれたと考えるのが妥当だろうか。

財布はともかく、これに巻貝のイメージを重ね合わせたところが、もはや成田氏の独断場である。当初はカネ=金属という発想からか、全身ロボットのようなデザインもあったが、全身の装飾もどうやら巻貝のイメージで統一されているようだ。

チブル星人をはじめ、成田氏のモチーフにはしばしば貝殻が登場し、そのユニークなデザインに一役買っている。胸にはレジスター、かかとには豆電球と、すでにデザインの段階で指示されており、芸の細かさも見逃せない。

荒唐無稽の形態でありながら、無条件に受け入れられる説得力をもち、違和感がない。側面からみれば、尻尾と前方に突き出た口あるいは目が、デザイン上バランスを取っている。

着ぐるみのバランスも申し分ないが、目玉のハマり方は実にシュールリアリズムの作品を思わせ、高山造型の奥深さが感じられる。カネゴンは、怪獣という概念の無限の地平を提示した、空前絶後の名デザインである。

ケムール人
「完全空想型」とでも呼ぶべき、純粋に机上から生まれたデザインの原点であるケムール人。ピカソらが多用したエジプト絵画の技法を取り入れた半抽象の芸術作品とも言え、成田氏みずから会心の作と言っている。

ここに至って怪獣デザインは、頭の中から湧き上がるいかなるイメージをもその範疇にとらえたのであり、一切の制約を取り払い、ある意味では純粋芸術の世界に限りなく近づき始めたのである。そこには、ただ芸術家の意匠が、哲学が、真情が吐露されるばかりだ。

怪獣デザインと純粋芸術とは、発表の仕方と対象が異なるだけに過ぎない。成田デザインが普遍の生命力を持つ秘密は、芸術家(成田氏)が渾身の力で、おのれの魂に恥じない作品を創るというところにあるのではないだろうか。この国が、怪獣デザインという素晴らしい文化を持ちえたことに誇りを持ちたい。そして、成田氏に対して、心から感謝したい。(終わり)


★★★★★★★★★★★★
男の子なら、子供時代に怪獣の絵を描いたことが一度はあるのではないだろうか。テレビで観た怪獣をマネして最初は描いているが、やがて自分の考えた怪獣というものを、一度は描いてみたくなる。だが、なかなか思うように描けなかった。オリジナルを生むことの困難さを思い知らされたものだ。このことで、筆者は絵の才能の無いことに、気付いたのである。



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タグ:怪獣 成田亨
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