SSブログ

革命的怪獣デザイン1・ガラモン ~形態学的怪獣論24 [怪獣論・怪獣学D]

成田亨氏によるウルトラ怪獣のモチーフは、それまで王道であった「生物」の枠を大きく踏み出し、「日用品」から「完全空想型」に至るまで一挙に拡大した。既存生物からヒントを得て、これをデフォルメ・合成し、前代未聞の生物を創造することに成功した傑作ガラモン

これはペギラと並ぶ「Q」の看板怪獣であるとともに、東宝怪獣の概念を根底から覆して、まったく独自のカイジュウというキャラクターが登場した事を印象づけた、記念碑的名怪獣である。

ヒントはコチのくちびるであるというが、魚の原形をとどめるのはこの口だけで、他はまったくの創造である。人間の体形を基本に置きながらも、全体を独特の海草のヒレ(あるいは樹状突起とでもよぶべき物)で覆ったために、シルエットは著しく人間から離れた。

2本の足は直立だが、柱状ではなく環状の骨が連なる形に処理され、両手は体側ではなく正面に近い所から生えており、どちらも尋常ではない。さらに造型家・高山良策氏によって完全に身体の正面から突き出る形に造られ、奇怪な形態になって行った。

このような極端に制限された動きしかできない腕が、果たして何の役に立つのかという疑問を、見る者に抱かずにはおかない。骨をデフォルメするという発想も、後年映画『エイリアン』のギーガーらのデザインに先んじている。

魚の唇、海草、骨というほとんど脈絡のない素材を結合して、しかもどんな生物にも似ていないシルエットを持つこの怪獣が、美しくないかと問われれば、断じて否である。ガラモンのデザインは、高山良策氏によって命を吹き込まれ、見事な「美」としてこの世に誕生した。

ユニークな口、きりりと引き締まった顔は、知的でさえある。背をかがめて入る着ぐるみのシルエットはさらに人間離れし、動きを制限されておぼつかない手足は、ユーモラスですらある。

ヒョイと上を向いた尻尾と上部からたれさがる手とが、側面から見るとS字を形成して、さりげなくバランスを取っている。ガラモンの形態には我々が知っている生物の秩序は当てはまらないが、それとは違う秩序が確かに備わっていると納得させられるものがある。

新たな「美」の創造が行なわれたのである。ロボット怪獣という設定にもかかわらず、メタリックな機械怪獣をまったく無視したセンスもスゴイが、侵略者の先兵でありながら、人を食ったような形態や仕草が、逆に不気味でもある。紛れもなく怪獣デザインの頂点に君臨する、偉大なデザインといえよう。(おわり)


★★★★★★★★★★★★
ガラモンは、ペギラと比べるとかなり小さい着ぐるみである。おそらく、ミニラと同じ人が入っているのではないかと思われる。パチパチと長いまつ毛でまばたきし、パクパクとどら焼きのような口をひらく仕草は、どう見ても地球侵略の先兵とは思えない。だが、地球防衛軍のいないウルトラQの世界では、自衛隊の火力が頼みの綱であり、科学者の頭脳が事件解決のカギを握る。人類の知恵も、捨てたものではないね!



スポンサーリンク



タグ:怪獣 成田亨
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:テレビ

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました