SSブログ

ウルトラQの四脚怪獣の王道・パゴス ~形態学的怪獣論22 [怪獣論・怪獣学D]

『ウルトラQ』シリーズにおいて、ペギラ、ガラモンと並ぶ人気怪獣と言えば、パゴスではないだろうか。東宝映画「フランケンシュタイン対地底怪獣」のバラゴンの改造で、堂々たる個性をたたえた四脚怪獣の王道を行く出来映えである。

成田亨氏のデザインを見ると、パゴスの原形はウインタテリウムであることが分かる。恐竜などの巨大爬虫類が全滅した後、第三紀と呼ばれる時代に現れたサイの先祖である。目の上と頭頂部から生えた一対の突起やキバの位置、頬のたるみなどの共通点が多い。

しかし実際の造形は、ウインタテリウムとは著しく異なる印象を与える。バラゴン譲りの見事な背びれの影響も大きいが、顔だけとってみても、成田デザインのパゴスの基本形態が四角であるのに、造型物は三角形を基本形態としているためでもある。それにしても、パゴスの顔の造型は素晴らしい。

一言でいえば、あらゆる角度から見てバランスが取れている。側面から見ると、頭頂部から後方に伸びる二本のツノと、長く伸びた上あごの先端が、まるで二等辺三角形のように配置されている。目の上の小突起は上唇から下方に生えるキバとほぼ同一線上にあり、すっきりした印象を与える。

正面から見ると、顔全体は横に扁平なことがわかるが、さりとて、シャープな印象は損なわれていない。ㇵの字型に伸びるキバと眉間の突起は、顔の中心で交差するかのようなバランスを保っている。

上方から見ると、この顔面は単に突起だけではなく、目の上の隆起部も含め、様々な凹凸が付与されているのがわかる。凹凸による陰影で味わい深く見せるという点では、パゴスもペギラに通じる魅力を持っている。

頭頂部から後方に伸びるツノは、真っ直ぐな長円錐ではなく、微妙な不整形を呈している。バラゴンの改造とはいえ、頭部と胴体を違和感なくつなげた点も含め、造型家佐々木明氏の手腕も実にみごとである。

アンギラス、バラン、バラゴンと続いた東宝の四脚怪獣の伝統は、パゴスによってブラウン管の中に正式に継承された。恐竜のバリエーションや爬虫類のデフォルメにとどまらず、もはや怪獣としか呼び得ないような存在に昇華した点、パゴスは歴史的な傑作といっても過言ではない。

この成功を機に、ネロンガ、マグラ、ガボラと改造と重ねていく中で、四脚怪獣のイメージは定着していくことになる。 (おわり)


★★★★★★★★★★★★
目の前にサイの先祖、ウインタテリウムの絵が描いてある。成田亨デザインのパゴスは、このサイの先祖によく似ている。唯一の違いは、頭頂部のツノがカモシカのように多めに生えているのだ。それに対して、佐々木造型は、基本的に全体像は成田デザインを踏襲しているが、細かい部分は佐々木氏の好きなようにアレンジして造ったとしか思えないほどの違いが見られる。これも造型家の手腕の見せ所なのだろう。

なお、造型家・佐々木明氏は、ウルトラマンの顔を作った造型家として有名である。マイカテゴリー『ウルトラマン』の初代ウルトラマンの思い出(2)に書かれていますので、ご参照ください。


スポンサーリンク



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:テレビ

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました