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仮面ライダー(17) ~帰ってきた不死身の男、佐々木剛2 [一文字ライダー・その2]

(前回から続き)
九州のイベントから帰った後、それまでは江戸村でも、簡単に変身ポーズを見せてあげられていたのが、ファンを意識しプライドが甦って、もう一度役者として生きてみようと思った瞬間から、誰彼かまわず変身ポーズをしてあげられなくなってしまった。

だが本当に見たいと思っている人の前では、いつでも喜んで変身できる。本当に変身を見たいという気持ちは、ちゃんと伝わってくる。おれは変身できるのだし、誰かがおれを心から必要としてくれているのなら、いつでもそれを見せてあげようと思うのだ。

もう大人になった仮面ライダーファンが、子供のような視線で、おれに会えたということだけで素直に感動してくれるのである。そこで、握手してください、変身ポーズをみせてくださいと言われて、どうして断ることができよう。

おれはこんなにも多くのファンによって支えられていたのだということを、思い知らされた。これが他の番組で違う役だったら、「ああ、昔あんな役をやってましたね」くらいのことで済んでしまうだろう。

たくさんのファンからパワーをもらって、壊れかかっていた改造人間は、また力を復活させたのだ。たくさんの熱意が、一文字隼人としてだけでなく、佐々木剛という役者をも、眠りから目覚めさせてくれたのである。

遠い夏の日のことを思い出す。みんな汗だくになって、マイクロバスに揺られ、朝から撮影に出かけた。ワンカットワンカット、撮影は順調に進んでいく。照りつける太陽の下、みんな着ぐるみを着ているので、たくさんの汗をかく。

1本の撮影が終わるまでに、何キロもやせることはザラであった。おれは変身してしまえば、あとは剣友会に任せておけばよかったが、実際にアクションをやっている仲間たちは、本当に大変だったろう。

ある出来事があって、いっとき役者を辞め、そこから再起した。役者として青春スターとして一度は絶頂を味わい、そこから真っ逆さまに転落するという人生の落差を経験し、その間十数年というもの、役者として人間として、心の葛藤にずっと揺れ動いていた。

その間『仮面ライダー』のことで、俺に接触してくるものは誰もいなかった。役者をやっていなかった時期もあったので、昔演じた役のことで、根ほり葉ほり訊かれるのはイヤだったから、意識的にそれを避けていた所も少なからずあった。

このことは、少なからず子供番組のヒーローを演じた役者みんなに、ついてまわることではないだろうか。子供のヒーローを演じてしまった役者は、いつかそのイメージを拭い去ろうと、苦悩する。そしてきっと、そのことについてイヤになってしまう瞬間がやってくる。

人づてに聞いた話だが、『ウルトラセブン』のモロボシダンを演じられた森次晃嗣さんにも、そのような時期があったと聞くし、親友・藤岡弘、君にも仮面ライダー本郷猛のことについて、触れてほしくない時期があったのだという。

だが今の彼らをご覧いただくといい。笑顔で胸を張り、ヒーローを演じたことを口にしている。おれもいっときは、仮面ライダーをやっていることに触れられることがイヤだった。だがなぜ、俺も胸を張って答えられるように変わっていったのだろう。

それは、放送当時ファンだった子供たちが、すっかり大人になってからも俺の前に現れて、『仮面ライダー』のことを笑顔で語ってくれるからだと思う。「ぼくはあなたの作品を観て、今の仕事に就いたんです」その言葉は、俺たちの胸に深く響いてくる。

大人の番組を観ていて、そんなことを考える者は滅多にいないだろうが、子供番組というものは純粋な子供が観ているから、ずいぶん影響してしまうものらしい。

このところ俺は、新聞やテレビで子供達の荒廃ぶりを見聞きするたびに、人類の退化を感じてならない。確かに科学力や物質文明の進歩においては、それは素晴らしい発展を見せてくれている。しかしその進化の中に、俺たちは満ち足りた心を見つけることができたであろうか。

おれたちは表面的な繁栄に酔いしれている間に、人間として最も大切にしなくてはならない心を、どこかに置き忘れてきたのではないだろうか。その結果が子供達を蝕み(むしばみ)、善悪の判断もつかない寂しい人間を創り上げてしまったようにも思われるのだ。 (つづく)

★★★★★★★★★★★★
佐々木氏が最後に話していたことは、みんなが思っているに違いないことだと筆者も思う。筆者が子供の頃は、遊び相手といえば、様々な年齢の子供達がいた。年上、年下、同年齢と、すべてそろっていた。そこでケンカしたり遊んだり、物の貸し借りなんかもした。それらを繰り返していく中で、人との付き合い方を学んでいったと思う。テレビゲームが相手では、その辺の手加減、具合をどこまで学べるのか、分らない。



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