仮面ライダー1号秘話(10) ~1号ライダー本郷猛こと藤岡弘、氏が語るライダー撮影秘話! [仮面ライダー1号・その2]
《オートバイのアクションも「自前」》
変身前の大型バイクや、変身後のサイクロン号に乗ってジャンプしたりスピンしたりするシーンも、「自前」で撮影に臨んだ。元々あのバイクは、現場にはそれぞれ一台ずつしか用意されてなかった。あれだけ激しいアクションをこなすのに1台だけとは、今だったら考えられない条件だ。
それでもバイク担当の室町レーシングの室町さんや、同じくバイク担当の大橋さんが、撮影が終わるたびに修理してくれて、撮影可能な状態を維持してくれていた。番組の冒頭で、サイクロン号ごと高く飛ぶシーンがある。あれはさすがにトランポリンを使うので、スタントの方にやってもらった。
でも、ちょっとした壁から跳ぶシーンは自分でやっていた。大阪の万博会場を使ったロケで、階段をサイクロン号で駆け上がるシーンがあった。あれに挑戦したのは私だ。もちろんスタントの方がやって下さった方が、ラッシュを見るとカッコイイ。けれど私自身が乗れば、画面に顔を映し出すことができる。物語にリアリティが出る。そういう意味でも、アクションも「自前」の方が効果的だった。
《最初のロケ地、小河内ダム》
忘れられないのは、撮影が始まった最初のロケだ。1971年2月、場所は小河内ダム。とても寒い日だったことを覚えている。当時ダムはまだ完成しておらず、水が入っていなかった。私は仮面を被ってジャンプスーツを着、数人のショッカーに取り囲まれて立ち回りをやらされた。
大野剣友会の人達は厳しく仕込まれているから、最初だからといって容赦はしてくれない。彼らはすでに『柔道一直線』や他の番組でアクションを経験しているから、要領はわかっている。ところが私は、撮影開始前に大野剣友会の道場で稽古を積んでいたとはいえ、カメラの前でアクションをするのは初めてだった。
しかも仮面の中では、視界がままならない。繰り出されてくるパンチやキックを必死に防御し、とにかく「しゃにむに」両手両足を動かしていた。次の撮影は、初日にも関わらずなんとエンディングのシーンだった。
緑川ルリ子役の真樹千恵子さんを助けるために、サイクロン号でダムのコンクリート堤防を走り、彼女の肩を抱いて「これから大変な状況が起こるぞ!」という感じで振り返る。撮影の順序がメチャクチャで、アクションからいきなり余韻を感じさせる芝居になるから、その切り替えが難しい。
しかも1日に何十シーンも撮影していたのに、このロケは日帰りだった。いよいよ俺の主演の番組が始まるという高揚感よりも、こんなシンドイ撮影がこれから毎日続くのかという恐怖の方が、先に立っていたような気がする。
★★★★★★★★★★★★
特撮ドラマ『牙狼』は、役者さん本人ができるだけ「自前」でアクションをやっているのが番組の売りでもある。ただ、激しいシーンでは、殺陣師の方が役の衣装を着てやられていることは、なんとなく判る。
『仮面ライダー』の撮影当時と今のアクション作品とでは、比較にならぬほど条件面が違うと思うが、殺陣師の方々が体を張ってアクションをするという部分は、それほど変わっていないだろう。危険なアクション・シーンはCG技術を使うという選択肢もあるだろうが、人間が体を張ることによってでる緊迫感には敵わないと思う。
ましてや、スタントマンでもない人が乗り物に乗ってスタントをするとなると、命がけとなる。その作品にかけられる予算との関係もあるだろうが、リアルにこだわるか安全を取るか、そこの所は監督にとって悩ましい所であろうと思う。
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変身前の大型バイクや、変身後のサイクロン号に乗ってジャンプしたりスピンしたりするシーンも、「自前」で撮影に臨んだ。元々あのバイクは、現場にはそれぞれ一台ずつしか用意されてなかった。あれだけ激しいアクションをこなすのに1台だけとは、今だったら考えられない条件だ。
それでもバイク担当の室町レーシングの室町さんや、同じくバイク担当の大橋さんが、撮影が終わるたびに修理してくれて、撮影可能な状態を維持してくれていた。番組の冒頭で、サイクロン号ごと高く飛ぶシーンがある。あれはさすがにトランポリンを使うので、スタントの方にやってもらった。
でも、ちょっとした壁から跳ぶシーンは自分でやっていた。大阪の万博会場を使ったロケで、階段をサイクロン号で駆け上がるシーンがあった。あれに挑戦したのは私だ。もちろんスタントの方がやって下さった方が、ラッシュを見るとカッコイイ。けれど私自身が乗れば、画面に顔を映し出すことができる。物語にリアリティが出る。そういう意味でも、アクションも「自前」の方が効果的だった。
《最初のロケ地、小河内ダム》
忘れられないのは、撮影が始まった最初のロケだ。1971年2月、場所は小河内ダム。とても寒い日だったことを覚えている。当時ダムはまだ完成しておらず、水が入っていなかった。私は仮面を被ってジャンプスーツを着、数人のショッカーに取り囲まれて立ち回りをやらされた。
大野剣友会の人達は厳しく仕込まれているから、最初だからといって容赦はしてくれない。彼らはすでに『柔道一直線』や他の番組でアクションを経験しているから、要領はわかっている。ところが私は、撮影開始前に大野剣友会の道場で稽古を積んでいたとはいえ、カメラの前でアクションをするのは初めてだった。
しかも仮面の中では、視界がままならない。繰り出されてくるパンチやキックを必死に防御し、とにかく「しゃにむに」両手両足を動かしていた。次の撮影は、初日にも関わらずなんとエンディングのシーンだった。
緑川ルリ子役の真樹千恵子さんを助けるために、サイクロン号でダムのコンクリート堤防を走り、彼女の肩を抱いて「これから大変な状況が起こるぞ!」という感じで振り返る。撮影の順序がメチャクチャで、アクションからいきなり余韻を感じさせる芝居になるから、その切り替えが難しい。
しかも1日に何十シーンも撮影していたのに、このロケは日帰りだった。いよいよ俺の主演の番組が始まるという高揚感よりも、こんなシンドイ撮影がこれから毎日続くのかという恐怖の方が、先に立っていたような気がする。
★★★★★★★★★★★★
特撮ドラマ『牙狼』は、役者さん本人ができるだけ「自前」でアクションをやっているのが番組の売りでもある。ただ、激しいシーンでは、殺陣師の方が役の衣装を着てやられていることは、なんとなく判る。
『仮面ライダー』の撮影当時と今のアクション作品とでは、比較にならぬほど条件面が違うと思うが、殺陣師の方々が体を張ってアクションをするという部分は、それほど変わっていないだろう。危険なアクション・シーンはCG技術を使うという選択肢もあるだろうが、人間が体を張ることによってでる緊迫感には敵わないと思う。
ましてや、スタントマンでもない人が乗り物に乗ってスタントをするとなると、命がけとなる。その作品にかけられる予算との関係もあるだろうが、リアルにこだわるか安全を取るか、そこの所は監督にとって悩ましい所であろうと思う。
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初めまして。
俳優さんの生の言葉が見れるのは貴重ですね。
by 師子乃 (2021-03-07 00:41)