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実相寺監督とウルトラ・カーその1 [実相寺監督が語るウルトラ2]

ルトラシリーズには、隊員たちが乗るウルトラ・カーが出てくる。鉄道が好きだった監督には、どうもこのウルトラ・カーがあまりお気に召さないようだった。なにが嫌だったか・・・それは読んでからのお楽しみである。


★★★★★★★★★★★★
私が子供の頃、時速100キロというのが一つの憧れだった。陸上を疾駆する乗り物では、何と言ってもスピードの象徴は“超特急つばめ号”だった。展望車付の豪華列車が大阪へ8時間で突っ走るイメージが、夢につながっていたのである。実際につばめ号が最高速度100キロで走っていたかどうかは知らないが、100キロという速さが夢のスピードであったことは確かである。ところが、現在では“時速100キロ”は夢の座から降ろされてしまった。

現在(この本が書かれた当時)のシンボルはJR西日本の500系新幹線である。最高時速300キロで疾走している。航空便との関係で、また速度競争が復活しかかっている。JR東日本も北海道を頭に入れながら、東北新幹線の更なる延伸に伴って、速度への挑戦に乗り出したようだ。東名高速などでふと気が付くと、自分の運転している車のメーターが、遥かに100キロを超えていることがある。そんな折に、時代のスピード感も大きく変化したのである。

でも不思議にウルトラシリーズでは、自動車だけはどうしようもない代物だった。「怪奇大作戦」のトータス号をそれに加えてもいい。各シリーズには、必ず隊員たちの利用する自動車が登場するのだが、「ウルトラマン」ではリアー・エンジンのコルベアー、次の「ウルトラセブン」のポインターはクライスラー改造であった。

ちなみに「怪奇大作戦」では、ぐっとおもむきが変わって、スバル360がベースである。トータスという名称だった。これが「ウルトラマンタロウ」のようなのちのシリーズになると、もっと異様というか、派手な改造を施されて登場しているから、そのあたりを担当した人達の苦労は大変なものだったろう。「ウルトラマンタロウ」のウルフ777にしろ、ラビットパンダにしろ、まあチンドン屋風のやけくそである。

でも今フィギュア屋で模型を手にすると、それもまたけっこう機能美の対極で面白い感じがする。すべて中古車を改造していたから、初期のシリーズの乗り物はロケ中によく故障をした。もっとも改造のせいばかりとは言えないかもしれない。最初のコルベアーなど、ほとんど原形のままで、ドアに科学特捜隊のマークを付けていただけだったから。それでも、調子の悪い車だった。

だからせっかちな私は、すぐに車が絡んだシーンを止めてしまったのである。後年「ウルトラマンダイナ」を撮った際、車のシーンについては、セットの人物ショットにつながる疾駆する全体像は、すべて劇画にしてしまった。加藤礼次朗君に作画をお願いしたのである。でも世間的には無視され、何の反応も無かった。まぁ私の回ばかりでなく、車がカッコ良く走っている情景はほとんどない。

だいたい怪獣や宇宙人は、そう都合よく舗装された道路状態の良い所に現れるわけではないから、劇用車を使う場合も、道なき道ということが多い。そうなると、ウルトラの車はお手上げだった。悪路にはめっぽう弱いので、何の役にも立たないのである。あれだけの組織で、進んだ技術を駆使している集団のくせに、自動車に関してだけはひどくお粗末だったのである。  (つづく)



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