キングジョーのデザイン法 ~形態学的怪獣論10 [怪獣論・怪獣学B]
人頭の人間型宇宙人のバリエーションとして、成田氏は2体のロボットを生み出した。当初はどちらも、怪ロボットとしか呼ばれていなかったキングジョーとユートムである。このうちユートムについて成田氏は、「ごく普通のロボットです」と簡単に画集の中でコメントしている。
眉や耳をデフォルメしてヘルメットにうまく融合させたデザインはみごとな出来映えだとおもうが、一方でなぜか懐かしい印象もうける。
思い起こせば、半透明なドーム型の頭部や上半身の処理などは、どことなく洋画「禁断の惑星」に登場したロボット・ロビーを彷彿とさせる。(途中省略)いかにもロボットらしいあの形態は、ブリキの玩具として子供の頃から親しんでいたものだった。
その当時の記憶が、懐かしさの理由かもしれない。今にして思えば、それほどロビーは画期的デザインだったということか。
先の成田氏のコメントも、外国作品を意識したことへの謙遜ともとれよう。これに対してキングジョーは、まさにオリジナリティー爆発の作品である。何とも不思議な形態を持つこのロボットは、初稿をみると「人面」のデフォルメがあり、当初は明確な顔が考えられていたようだ。
しかしこれを消去し、必ずしも明確な顔が無くてもデザイン的には十分成立するのだということを納得させたのは、ほかならぬ両肩の円筒形の突起である。
しかし、この円筒形のために、キングジョーの両腕の動きは相当に制限されてしまう。同様に腰の円筒形の突起も、身体の屈曲にとっては邪魔なだけである。自然界のいかなる生物にも無い、この異様な突起は、ではいったいどんな必然性を持つのだろうか。
昭和43年初頭の少年雑誌に、成田氏のデザイン法が紹介されたことがあった。手元にその記事がないので、記憶を頼りに再現してみると、キングジョーのデザインは、まず初めに人間の形を描き、次にこのシルエットに変化を与えるため、両肩と腰に円筒を描きこんでみる、という趣旨のものだった。
つまり、それは機能的な必然性によってではなく、あくまでも純然たる「形態的な必然性」によってのみ付与されたものだ。今でも忘れない衝撃である。それは怪獣デザインの過程(発想の過程)を「具体的」に解説された初めての体験だったからである。
斬新な形態を追及する姿勢。発想を完成品にまでまとめ上げていく力量。人間の想像力のすばらしさに感動して、改めて怪獣デザインの奥深さ、面白さを心にはっきりと刻み付けた瞬間だった。
キングジョーはこの円筒形によって、確固たる独自性を獲得し、蛇腹やビスや電飾を施して、より洗練されたデザインになり、さらには4体に分離・合体するという空前のアイデアを実現して、視聴者を驚嘆させた。このときから「スーパーロボット」という言葉が、この巨大ロボットにも導入され、誰もがそれに納得した。 (つづく)
★★★★★★★★★★★★
キングジョーと言えば、好きな怪獣ランキング・アンケートでも常に上位に位置し、強さ、カッコよさともに、抜群である。初稿デザインをみると、頭部の両側にあるふたつの円筒形に挟まれるように、横長につぶれた人面が描かれている。
この後、決定稿では人面はふたつのボタン(目)とT字型の凹み(鼻と口)に簡略化され、オデコに当たる部分には電飾が光るようになる。
子供の頃に見た怪獣図鑑の、オリジナル怪獣募集の最優秀賞に選ばれた作品に書いてあったコメントを、思い出す。怪獣の顔というものは、顔らしくしないほうが、より怪しい感じが出るのだという。このキングジョーも、決定稿は人面を止めている。怪獣を描くときの一つのポイントであることは、間違いない。
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眉や耳をデフォルメしてヘルメットにうまく融合させたデザインはみごとな出来映えだとおもうが、一方でなぜか懐かしい印象もうける。
思い起こせば、半透明なドーム型の頭部や上半身の処理などは、どことなく洋画「禁断の惑星」に登場したロボット・ロビーを彷彿とさせる。(途中省略)いかにもロボットらしいあの形態は、ブリキの玩具として子供の頃から親しんでいたものだった。
その当時の記憶が、懐かしさの理由かもしれない。今にして思えば、それほどロビーは画期的デザインだったということか。
先の成田氏のコメントも、外国作品を意識したことへの謙遜ともとれよう。これに対してキングジョーは、まさにオリジナリティー爆発の作品である。何とも不思議な形態を持つこのロボットは、初稿をみると「人面」のデフォルメがあり、当初は明確な顔が考えられていたようだ。
しかしこれを消去し、必ずしも明確な顔が無くてもデザイン的には十分成立するのだということを納得させたのは、ほかならぬ両肩の円筒形の突起である。
しかし、この円筒形のために、キングジョーの両腕の動きは相当に制限されてしまう。同様に腰の円筒形の突起も、身体の屈曲にとっては邪魔なだけである。自然界のいかなる生物にも無い、この異様な突起は、ではいったいどんな必然性を持つのだろうか。
昭和43年初頭の少年雑誌に、成田氏のデザイン法が紹介されたことがあった。手元にその記事がないので、記憶を頼りに再現してみると、キングジョーのデザインは、まず初めに人間の形を描き、次にこのシルエットに変化を与えるため、両肩と腰に円筒を描きこんでみる、という趣旨のものだった。
つまり、それは機能的な必然性によってではなく、あくまでも純然たる「形態的な必然性」によってのみ付与されたものだ。今でも忘れない衝撃である。それは怪獣デザインの過程(発想の過程)を「具体的」に解説された初めての体験だったからである。
斬新な形態を追及する姿勢。発想を完成品にまでまとめ上げていく力量。人間の想像力のすばらしさに感動して、改めて怪獣デザインの奥深さ、面白さを心にはっきりと刻み付けた瞬間だった。
キングジョーはこの円筒形によって、確固たる独自性を獲得し、蛇腹やビスや電飾を施して、より洗練されたデザインになり、さらには4体に分離・合体するという空前のアイデアを実現して、視聴者を驚嘆させた。このときから「スーパーロボット」という言葉が、この巨大ロボットにも導入され、誰もがそれに納得した。 (つづく)
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キングジョーと言えば、好きな怪獣ランキング・アンケートでも常に上位に位置し、強さ、カッコよさともに、抜群である。初稿デザインをみると、頭部の両側にあるふたつの円筒形に挟まれるように、横長につぶれた人面が描かれている。
この後、決定稿では人面はふたつのボタン(目)とT字型の凹み(鼻と口)に簡略化され、オデコに当たる部分には電飾が光るようになる。
子供の頃に見た怪獣図鑑の、オリジナル怪獣募集の最優秀賞に選ばれた作品に書いてあったコメントを、思い出す。怪獣の顔というものは、顔らしくしないほうが、より怪しい感じが出るのだという。このキングジョーも、決定稿は人面を止めている。怪獣を描くときの一つのポイントであることは、間違いない。
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