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人頭の宇宙人デザイン 産みの苦しみ  ~形態学的怪獣論9 [怪獣論・怪獣学B]

史上類を見ないほどの、バラエティ豊かな「ウルトラセブン」の宇宙人ラインナップ。独自の「面長」の宇宙人をメインイメージに据え、そこに様々なシルエットの操演怪人・多角形怪獣を配したことは、すでに述べた。その根底には、国内外を含めた既存の宇宙人イメージを凌駕してみせるという強烈な意識があったことは、明らかである。

既存の宇宙人とは、すなわち人間と同じ体形をした「人頭」の宇宙人を指す。成田氏の美学は、オリジナル以外のデザインを許さない。だが、「宇宙からの侵略」というテーマを掲げ、週一回以上のローテーションを義務付けられている以上、どうしても「人頭」の人間型宇宙人は登場せざるをえない。

知的生命体という敵役のイメージを堅持するためにも、また怪獣を操り、時として人間に化けるというストーリーの必然性からも、それは避けて通れないことだった。しかし、人頭の宇宙人デザインは、文字通り首から上の部分しか創意工夫を発揮できる場がない。

デザイナーのイメージは極端に制限されてしまうのである。はからずも苦悩の一端は、バド星人のデザインに現れている。悪質、つまりBADから命名されたこの宇宙人について、画集の中で成田氏自身、「外国作品」の影響を受けてしまったと述懐している。

頭頂部をへこませてハート形にしてみても、巨大な脳を持つ舶来宇宙人の典型像と大差はない。成田宇宙人の中でも、バド星人が一種異質のテイストを持つのは、やむを得ないことだった。

シャプレー星人の初稿デザインにも、バド星人と同様な巨大な人頭が現れるが、成田氏は通常の位置にある目を消し、鼻を消し、口の形状を変え、頭部の形を整えて、巨大な複眼を持つ昆虫のイメージに変えて、決定稿に至った。

このどことなく巨大な複眼を持つ昆虫のイメージが、成田氏の人頭デザインのひとつの流れを形成していく。成田氏自身が「最高に気にいている」というピット星人は、トンボをヒントにして抽象化を試みた作品である。シンプルで美しく、印象的なデザイン。

この成田氏のポリシーが発揮された人間型「人頭」デザインは、第1クールではわずかにピット星人のみだったが、第2クールではシャプレー星人をはじめ、カナン星人、ボーグ星人と続いた。

いずれも巨大な眼を抽象化したメタリックなイメージで、ヘルメットと顔が一体化しているという点では、のちの仮面ライダーに通じるものがある。シャプレー星人の発展形ともいえるボーグ星人は、全身を鎧で覆い、キャラクター的にもセブン中期を代表する好敵手となった。

「抽象化」という発想法を一つの型として持っていることは、成田デザインの大きな強みである。単発的な思いつきのデザインでは無く、デザイナーのゆるぎない個性や信念から生まれたデザインなればこそ、他ではマネのできない強烈なアイデンティティーを獲得しうるのだ。

その意味ではシャドー星人も、成田氏ならではのデザインである。彫刻の鋳型の凹凸が実際の造形物とは逆になっていることから、この発想が生まれた。彫刻家ゆえの見事な着眼点である。

凹凸逆のパターンはこれ一回だけで後続が無かったが、言い換えれば、それほどに斬新は発想だった。このモチーフは成田氏の彫刻のテーマのひとつとして、今日まで生き続けているようだ。 (つづく)


★★★★★★★★★★★★
シャプレー星人といえば、子供の頃に東京タワーでやっていた「怪獣大会」の催し物に連れて行ってもらったときに、会場にいたシャプレー星人と握手した記憶がある。普通ならヒーローのセブンやマンが握手するはずだが、なぜか宇宙人だった。

金色に輝く服を着ていたことを、よく覚えている。まだカラーテレビが高値の華だった時代のことだ。どんな色をしているのかということが、子供ながらにも気になっていたのだろうか。

カナン星人、シャプレー星人、ピット星人など、昆虫のイメージを持つ複眼の宇宙人が成田氏のお気に入りだったようだ。画集の中で、シャプレー星人については、『全面を被るマスクではなく、俳優の顔を利用して上半分だけヘルメット状のものを被せることを考えたのですが、

役者を決めて型を取り、さらに修正を加えるというスケジュールは無理なので、あきらめました』と述懐している。もっと複雑なことを考えていたらしい。ちなみに、のちの「突撃!ヒューマン」にも複眼の怪人が出てくる。フラッシャーブルーアイとレッドアイである。

バド星人は、決定稿では首から下がうろこ状の皮膚を持つ身体をしているが、デザイン画ではウルトラマンのようにラインを強調した、どちらかといえば服をきているように見えるデザインとなっている。



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