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仮面ライダー1号秘話(8)~1号ライダー本郷猛こと藤岡弘、氏が語るライダー撮影秘話! [仮面ライダー1号・その2]

《スタッフの執念、「不死身のメッセージ」》
仮面ライダーが画面に復帰してから、視聴率は再びポンと跳ね上がった。しばらくの間、1号と2号ふたりの勇士がブラウン管を席巻していた。この視聴率は、平山さんをはじめとするスタッフたちの『ライダーは不死身でないといけない』というイメージが、子供たちにきちんと受け止められた結果だと思う。

世界的にみても、一度事故で登場しなくなった主人公がふたたび現れるというのは、珍しいという。子供たちにしてみれば、1号ライダーが約束通り戻ってきてくれた、ライダーは約束を破らなかった、不死身だったんだ、とよろこんでくれたのだ。視聴者と番組が信頼関係で結ばれて、その結果が高視聴率となって表れたと思っている。

だから、仮面ライダーを見つめる子供たちの目は、本郷猛が復帰したあたりから痛いほど真剣だった。撮影現場に来る子供たちはもちろんのこと、実演ショーに集まる何千何万という子供たちも、自分たちのヒーローとしてライダーのことを真剣に応援してくれた。その声援があったから、藤岡は怪我をおして撮影に戻ることができたと思っている。


《毎日が命がけのロケ》
復帰して視聴率が右上がりにカーブを描き始めてからの撮影は、スタッフのノリも違ってきた。より高度に、より真に迫ったものになっていった。そうなると活動屋のエンジンはフル回転だ。監督たちもさらに上の視聴率を目指そうと、どんどん難易度の高い演技を要求してくるようになる。

一度、浜松のロープウェイのゴンドラにぶら下がった時は怖かった。地上数百メートルの高さのゴンドラだ。命綱は付けていたが、本番の時はそれも見えないように身体の陰に隠すのだから怖い。関西の六甲山ロープウェイにもぶら下がった。

下を見たらダメだと思ったから、見ないようにして文字通り必死の撮影だった。その時の命綱は、ロープ二本を足に巻いてそれをガムテープで留めただけ。よくあんなものだけで本番に臨んだものだと思う。

この撮影のとき、ショッカーが格闘に敗れて落下していくシーンがあった。それはさすがに人形を使ったが、それが途中で電線に引っかかってしまった。スタッフが慌てて取りにいったが、手が届かずにそのままにして帰ってきた。ところが、その人形がロープウェイから見えてしまい、死体が電線に引っかかっていると思われて、大騒ぎになったそうだ。

高い場所といえば、ゴンドラの屋根の上に登らされたこともある。ライダーブーツは革靴だから、ゴンドラの鉄の屋根がツルツルすべる。危うくロープにつかまると、こちらにも潤滑油が塗ってあってヌルリと心もとない。結局自分でバランスを取るしかなくて、生きた心地がしなかった。

万国博の鉄塔の上での格闘シーンもあった。確か「太陽の塔」(*)の近くだったはずだ。70年に終わった当時の一大行事だったから、その跡地ではよくロケが行われた。残された高台や階段、コンクリートの建物、広場などが撮影の条件に合っていたのだろう。
(*)1970年に行われた大阪万国博覧会のシンボルとして建てられた塔

ライダーは等身大のヒーローだから、大きな動きを見せたい時には自分が高い所に登らないといけない。自然と高所のロケが増えた。私は自分が落ちない様に気をつけていればよかったが、ショッカーを演じていた大野剣友会の面々は、その高い所から飛び降りたり転落したりさせられていた。あれは相当怖いことだったと思う。

毎日が命がけだったから、私や大野剣友会の若手たちは撮影が終わっても酒を飲むことができなかった。翌日のことを思うと、身体を休めることが先決で酒に手が伸びない。そのことひとつをみても、いかに過酷なロケだったが分かろうというものだ。そういう必死の生活の中で生まれた迫真の演技の一つ一つが、高い視聴率につながったことは言うまでもない。


★★★★★★★★★★★★
当時仮面ライダーを見ていた子供たちは、高い所から飛び降りるマネをして、怪我をすることが多かった。筆者も同じで、怪我こそしなかったが、近所の公園にある休憩場所の屋根の上から砂場めがけて、飛んだりしていたことを思い出す。

番組内でも、「危険だから、高い所から跳ぶのは止めるように」と、本郷猛にしゃべらせている。
同時代にやっていた「タイガーマスク」というアニメでも、タイガーの必殺技を作る際には、子供にマネができないような技に工夫したという。

このように、幼児よりも対象が高い子供番組では、その伝える内容を考えるとき、下手なことはできないという点で、製作スタッフのご苦労はたいへんなものがあったと思う。そういう素晴らしい番組を幼少時に観て育った者のひとりとして、とても感謝をしている。

スタッフのみなさん、良い作品を創ってくださり、本当にありがとうございました。



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