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実相寺監督と川崎好き [実相寺監督が語るウルトラ2]

相寺昭雄監督は、川崎という町が好きらしい。元々は南部の工場街や、中部あたりに蝟集する(いしゅうする;一か所に多くのものが寄り集まること)町工場のある風景が好きだった。ドラム缶の転がっている空き地というのが、監督にとっての川崎の原風景だった。

テレビのスタジオにいた大昔から、そんな風景に親しんで撮影をしたり、セットに組んだりしていた。「ドラム缶野郎」などと、有り難くない名前で悪口を言われたこともあった。

青春時代は、キャノンカメラの本社に近い、目蒲線(今では多摩川線という盲腸線になってしまった)の「鵜の木(うのき)」に住んでいたのである。『キリがない』『バクたる』というウルトラQの台本を書いたあたりまでは、この鵜の木にいた。

円谷プロ制作作品の『スパイ・平行線の世界』に助監督として入った頃から、川崎北部へ移り住んだのだった。ふり返ってみると、多摩川を軸として生きてきたといえるかもしれない。

さて、そのドラム缶のカットは、ウルトラセブンの『狙われた街』に出てくる。冒頭で、メトロン星人が仕掛ける薬の影響で暴走するタクシーのシーン、それに続く銃撃戦などに片鱗がある。タクシーが暴走するシーンは、川崎の火力発電所に近い、港近くで撮影をした。

千鳥町あたりだろうと思うが、もはや特定はできない。今見返してみると、随分材木が置かれている。これも、自分が好きな風景で撮影をした一例である。

『ウルトラマン』では北部のひなびた場所でしか撮影をしなかったが、『ウルトラセブン』の折は、『狙われた街』と『円盤が来た』の二本で、主な舞台を川崎の中央部あたりに設定していた。『円盤が来た』は溝の口界わいを考えて、実際にずいぶんロケも行っている。

主人公の通う町工場も、高津近辺を想定したもので、撮影もしているが、なぜか借用の都合上、工場内のシーンは対岸の東京側の二子(ふたこ)からちょっと下ったところで撮影をしている。東京側の二子から丸子(まるこ)にかけては、高級住宅街が並んでいるのだが、製作の都合とはいえ、そこで町工場が借用できたのも、面白い話だ。

宇宙人(メトロン星人)がタバコの自動販売機に幻覚剤を仕掛けるシーンは、小田急線向ヶ丘遊園駅前にあった喫茶店から撮影をした。ダンやアンヌ隊員が見張る喫茶店である。駅前のロータリーに面したそれも、今はない。駅前の様子も、ずいぶん変化してしまった。

向ヶ丘遊園も閉園になり、私鉄各線の華でもあった遊園地の閉鎖と同様、街の勢いが陰ってしまった。駅前から出ていた独特のモノレールも営業停止になり、残念なことである。

40年以上も経過すれば、変化するのは当たり前のことだろうが、一度焼き付いた風景の記憶というものは、なかなか風化せず、色あせないものだ。とりわけ、撮影をした場所は、そのままであってほしい、といった勝手なことを空想する。

しかし、東京近郊の通勤圏拡大による開発は、そんな感傷を吹き飛ばしてしまう程の勢いで、止まることは無い。生田オープンあたりもその好例だろう。もう感傷に浸る場所さえ、探さなくては見つからない時代になった。百合ヶ丘と柿生の間にできた新百合ヶ丘が、今や川崎の副都心になろうかという時代になっていた。

昔、電車少年だった頃、小田急の駅名を思えて、和泉多摩川、登戸多摩川(現・登戸)、稲田登戸(現・向ヶ丘遊園)、東生田(現・生田)、西生田(現・読売ランド前)、柿生、鶴川・・・、と暗誦したものであった。西生田から柿生までは駅が無かった(現・百合ヶ丘、新百合ヶ丘を設置)。

たとえ駅を作ったとしても、当時はタヌキくらいしか乗客はいなかった程のひなびた地域だった。まして、多摩センターへの分岐も無かったわけで、最近設定された多摩急行という種別が、向ヶ丘遊園という一大要衝を通過することなど、想像もできなかったことだ。  (おわり)


★★★★★★★★★★★★
監督が鉄道好きであったことに、驚いている。筆者も鉄道少年だった。鉄道が好きな人は、「時刻表」をバイブルとしてよく読む。時刻表にはいろいろな情報が詰まっていて、何時間見ていても飽きないものだ。監督も、時刻表を愛読していたのだろうか。
小田急の向ヶ丘遊園とか、東急電鉄の多摩川園や二子玉川園遊園など、子供の頃に遊びに行った遊園地が閉園になっていくのは、大変寂しい限りである。いずれも怪獣ショーを見に行った記憶しかないが、親はたいへんだったと思うが、「親子のふれあい」にはとても貢献したと思う。時代が変わっても、上演場所が変わっても、このような野外ショーは、親子の絆を深めるのに、きっと役立つと思う。



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