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正統派怪獣からの脱却  ~形態学的怪獣論3 [怪獣論・怪獣学B]

自然界にあるあらゆる生物や静物の形・模様・デザインを使って怪獣化した『ウルトラQ』とは異なり、また同時期スタートした『マグマ大使』のように2週間で怪獣1体という緩やかローテーションとも異なる、週に1体必ず格闘できる怪獣を登場させる『ウルトラマン』では、従来からの『二脚恐竜型』『四脚恐竜型』『人間型』を適度に織り交ぜて、視聴者に与える印象を多様化する必要に迫られた。

絶えず新鮮な感動と美を追い求めることが、ウルトラのスピリットでもあった。まずそれは、すでに使った怪獣の着ぐるみを改造する「再生怪獣」に現れた。ネロンガ、マグラ―を経て生まれた怪獣ガボラの「ひれ」である。

この「ひれ」は翌週放映したジラースでは「エリマキ」という形で現れ、まったく別のシルエットをもった怪獣に再生して見せた。さらに言えば、ガボラで頭に付いていたこの「ひれ」をもっとうしろの尾の方に移動させて、ケムラーの「甲羅」に変化させたとみることもできる。

そしてこれに続くように、既成概念を打破する画期的な試みが提示された。人間がふたりで演じる着ぐるみの誕生であった。第一話放映からまだ1クール内という時期に、このアイデアには驚かされる。

その第一弾は「ドドンゴ」である。某ビール会社のトレードマークを彷彿とさせるそのデザイン。しかし、中国の「麒麟」は鹿の体に牛の尾と馬のヒヅメを持つ一角獣という妖怪の一種であるというから、ドドンゴとは印象が異なる。

四脚恐竜型の怪獣の着ぐるみでは、後ろ足を折りたたまないと人間が入れない点が問題だった。人の手が脚より短いこと、人と動物では後ろ脚の屈曲が異なることが原因であるためだ。馬や鹿のようなシルエットの四脚怪獣はできないものか。これを解決したのが、人間を二人入れるという発想であった。

まさにコロンブスの卵である。後脚はともかく、前脚の屈曲の様子は驚くほど動物に近づいた。ふたりで操作するので、まさに「怪獣二人羽織(*)」である。これはウルトラマンに対しては大きさで威圧感が生まれ、大怪獣の風格が出るという効果があった。

デザイン自体のシャープな印象も秀逸だが、造型の見事さは特筆に値する。独特の悲しみを帯びた端正な顔、首から尾にかけて流れるようなライン、躍動する全身のしなやかさ。高山造型の代表作のひとつと言えるだろう。
(*)「かいじゅうににんばおり」と読む。 「二人羽織」は、演芸会等での笑いを誘う出し物のひとつ。

ドドンゴは第二次怪獣ブームの中で、多くの継承者を生んだ。ブロッケン、ジャンボキング(いずれもウルトラマンA)を見ると、姿形の妙という以上に、話の要所を飾るための大怪獣としての存在という印象が強い。

ストーンキング(ジャンボーグA)はよく言えばオマージュだが、独自性という点では苦しいものがある。動きのしなやかさ、前半身と後ろ半身の自然なつながりなどは、どれもドドンゴを凌駕できていない。それだけドドンゴが偉大だったということだ。

ドドンゴが前後に人を配したのに対して、左右並列に人を配したのが「ペスター」でをある。2匹のヒトデをコウモリの顔でつなぐという発想は、ただ事では無い。成田亨氏の感性の豊かさにただただ、脱帽である。単にヒトデを並べるだけでなく、腹部を白く抜き、周囲を放射状のシマ模様にまとめた点が秀逸だ。

背部は一面びっしりと平坦なうろこで覆われ、重厚感をだしている。全体の大きさもさることながら、着ぐるみの重量も相当なものらしく、脚の辺りのタルミも味わいがある。惜しいことに格闘に向いて無いためか、ウルトラマンとは一度も相まみえることなく終わった。

ウルトラマンが消火作業の合間に放ったスペシウム光線の一撃で、あっけなく絶命してしまったのである。ドドンゴは実在する四つ足の獣に類似の形態が見られるが、ペスターのような形態は、自然界には見られない。そのあまりの独自性ゆえに、このようなシルエットを持つ怪獣は、今日に至るまできわめて少ない。

わずかにフリーザーキラー(オリジナリティの面で問題あり)や、顔は二つあるが体が左右に並列という点でダブルキラー(ともにジャンボーグA)、エイリアンメンジュラ(ウルトラマンティガ)などが散見されるに過ぎない。

前後にふたりの着ぐるみは、他にも『怪獣王子』のネッシーなどにもみられるが、左右並列の着ぐるみはさすがに円谷プロ以外の作品には出ていないようだ。それだけペスターのイメージが、のちのデザイナーにとっても強烈すぎるのだろう。

究極の多角形としての円、または球がある。すでに『ウルトラQ』のバルンガが先駆であるが、そのバリエーションが『ウルトラマン』のブルトンである。変形怪獣もここまで来ると、ウルトラマンとも絡みようがない。

球体怪獣は他にも、グローバー(ジャイアント・ロボ)があり、球体に変形する怪獣としてグロン(仮面の忍者 赤影)、ウータン(ジャンボーグA)、円盤状怪獣としてタイヤ―魔、ベンバーン(以上サンダーマスク)、バルガラス(流星人間ゾーン)、球体怪獣の変形としてタッコング(帰ってきたウルトラマン)、ブラックエンド(ウルトラマンレオ)などがある。いずれも正統派怪獣達に混じって、斬新な形態で楽しませてくれる者達だ。 (つづく)


★★★★★★★★★★★★
筆者には、名前を聞いただけでシルエットや映像がすぐに浮かぶほど、懐かしいペスターやドドンゴだが、この種の姿の怪獣で知らない名前を聞くと、どんな姿なのか検索して調べずにはいられないほど、この二人羽織の怪獣にはとても情愛のようなものを感じている。

だがいずれの場合も、元祖を超えるような出来映えのものは中々出現しないようだ。それは、この元祖の2匹それ自体が、特異な姿をしているからで、後に続くデザインを描くことが非常に困難なためだ。前後・左右には、ドドンゴ、ペスターを超えるような怪獣はもう出現することは無いと思う。

あと残っているとすれば、マジンガーZのピグマン子爵のような、肩車をした形態の怪獣ぐらいだろう(笑)


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