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宮内洋、ヒーロー一本道(7)  『ジャッカー電撃隊』その2 ~演じた4大ヒーローの中で、番場壮吉の腰と目線の位置が一番高い [宮内洋・2]

(前回からつづき)
番場壮吉は変装の名人である。男が化粧をする昨今ではあるが、役者は演ずるが故に化粧をする。役に成りきるために装う。第32話『どっちが本物?危うしビッグワン』では、カメレアン大隊長なるものと変装合戦をした。実に楽しく演れた。なんとこの脚本が、あの長坂秀佳先生のものであった。

ジャッカー電撃隊全35話中、ただ一話のみの長坂脚本であった。また第29話『行くぞ七変化、鉄の爪対ビッグワン』は文字通りの七変化。敵も番場壮吉も変装で対抗するコスプレ合戦なのだが、ここで登場するのが『ある時は片目の運転手、またある時は〇〇、そしてその実体は△△』の名調子である。

昔から映画でおなじみの多羅尾伴内(*)のこの名セリフ、演っていても実に気持ちのいいものだ。この脚本が、上原正三大先生のもの。上原正三先生は『仮面ライダーV3』はもとより『秘密戦隊ゴレンジャー』でもメインライターとして書かれていた方で、宮内にとっては大先生だ。役者・宮内洋をよく知っておられる方だと思う。

(*)たらお ばんない 「七つの顔の男」シリーズに出てくる架空の探偵の名。片岡千恵蔵主演で、七変化の活躍をする。

さて、変装するとその都度、セリフの言い回し方、立ち振る舞いが全部変わらなくてはいけない。そのような時に、ズバットの所で書いた『電車の中の教え』が役立つのである。各シリーズ作品の中で、風見志郎を演り、新命明、早川健と演じて、今度の番場壮吉。

この間、休みなくヒーローを演ってきたので、違いを出さなくてはならない。風見志郎から新命明はスンナリ行けた。新命明から早川健も、まあまあスンナリ行けた。ところが番場壮吉に至っては、少々役作りに行き詰ってしまっていた。どう演ずるべきか?他と変えて、どう違ったように見せるべきか?

そこで考えたことは、『ジャッカー電撃隊』はグループであること。『ゴレンジャー』の時と違って隊長であること、それも行動隊長である。このように、要素をいろいろ考えた結果、他との違いに「年齢」を持ってきたのである。風見志郎より、新命明より、早川健より、今の番場壮吉がいちばん年上とした。

そうすることによって、やっと番場壮吉という役を自分の中に確立することが出来た。これまでも、何か新しい役を演じる時には、年齢を考えてきた。ビデオを見ればお分かりと思うが、演じる役の年齢に応じて、アクションの時の腰の位置の高さが違っている。従って4大ヒーローの中では、番場壮吉の腰がいちばん高く、目線もまたいちばん高い所から見るようになっているのである。

同じ様な作品を演じる時などは、『電車の中の教え』によって日頃から自分で貯めておいた財産を、「芸のタンス」の引き出しの中から引っ張り出して、それを消化していく。役作りというものは、そういうものだ。その経過の中で少し違うかなと自分で感じれば、微調整していけばよい。番場壮吉も、そうやって出来上がった。

テコ入れ策でもあった「行動隊長・番場壮吉役」を張り切って演じたのではあったが、『ジャッカー電撃隊』は35回で終了となってしまった。役作りに苦労した番場壮吉だけに、残念な気持ちも強かった。でも街角で、子供たちがステッキ代わりに棒切れを振り回し、『ビッグワンだ!』とか言いながら遊び回っているのを見て、ずいぶん慰められたものだった。

『ゴレンジャー』も『ジャッカー電撃隊』も、オープニングは竹本弘一監督である。残念ながら他界されてしまったが、その竹本監督が生前、『子供番組というのは、子供が大人になる過程でずっと心に残っていくものだから、・・・・』と言われたことがある。

絶体絶命のピンチに、もうこれ以上無い最高のタイミングで参上するヒーローの姿に、子供の誰もが拍手を送ったものだと思う。だから変身のタイミングを語るとき、このことを必ず例に持ってくる。あまりに早く変身しすぎてはいけない、観客がドキドキしないからである。

またあまり遅すぎてもいけない、観客の不安感が溜まりすぎてしまうからである。画面の危機に観客がハラハラドキドキして、もうこれ以上遅れると正義の人たちの身に不幸が降りかかるという、ギリギリのタイミングこそが変身の最適なタイミングなのである。
(おわり)


★★★★★★★★★★★★
筆者は、この『ジャッカー電撃隊』を見たことが無い。年齢的に見る世代にいなかったからであるが。そこで当時見ていた人達の感想を読ませてもらって分かったことは、『ゴレンジャー』の後番組で、『ゴレンジャー』人気の高さ(2年間放送していた)がわざわいしてか人気が出ず、路線変更したものの人気は持ち直せず、打ち切り(9か月間の放送)になったことが残念という感想が多かった。路線変更は、敵の怪人をゴレンジャーぽい〇〇仮面にしたり、味方に新キャラクターを投入したりと、テコ入れを行ったわけである。記事に出てくる「ビッグワン」がその代表格であろうが、結果上手くいかなかったようだ。オープニングテーマはなかなかカッコイイ曲だし、エンディングも変わった感じの歌で、さすが(渡辺)チュウメイ先生であると思う。

いわゆる「戦隊シリーズ」には含まないという意見もあるようで、いろいろと見解はあると思うが、シリーズ化するまでの過渡期的作品であったという所だろう。このような作品を経験して何かを学び、今日ある「戦隊シリーズ」のような寿命の長いシリーズが生まれてくるのだろう。



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コメント 1

おえういあ

失礼します。
偶々、ここへ辿り着きました。
上原正三が『仮面ライダーV3』の脚本をも書いたとお書きですが、
上原はライダーシリーズでは
後年のテレビシリーズ『BLACK』と劇場版『J』しか
執筆していません(シリーズ第一作の企画には関わった)。
『V3』の主演俳優である宮内洋の自伝本『HERO真髄』に
上原が『V3』の脚本を書いた旨記されているので
恐らくそれを参照なさったものと思われますが、
あれは宮内の記憶違いによる誤記であり
事実とは異なります。
一応、記させて頂きました。悪しからず。

by おえういあ (2017-03-13 05:21) 

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