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実相寺監督と特撮と乗り物 [実相寺監督が語るウルトラ1]

特撮のドラマや映画で鉄道が出てくる場合、たいていは破壊されるために映っていることが多い。物語の中で、長い特急電車や貨物列車が、「キャーッ」という乗客の悲鳴や「ドーン」という音と共に壊されていく様で、怪獣の凶暴さや力強さを表現することが多いからだ。

特撮の中の鉄道は、ほとんどの場合、怪獣の凶暴さの引き立て役でしかないわけだ。一度、鉄道を使って怪獣を攻撃するという展開があったら、面白いかもしれない。だが、それは非常に困難なことなのである。攻撃に際して、致命的な欠点が鉄道にはあるからだ。理由は本文中に出てくるので、お楽しみに。


★★★★★★★★★★★★
り物と特撮ものとは密接な関係だが、飛行機、船、自動車に比べて、鉄道が画面に現れる回数は少ないような気がする。『ウルトラマン』も、鉄道が出てくるという印象がまるでない。風景としてもミニチュアセットの道具としても、ほとんど出ていないのではないだろうか。

『ウルトラQ』の際には、飯島敏宏監督の「地底超特急西へ」と円谷一監督の「あけてくれ!」があったけれど、他にはあまり思い出せない。ひとつにはレギュラーの科学特捜隊が、鉄道と無縁ということもあるだろう。最新の海底探査用の潜航艇まで持ちながら、鉄道関係の機器は所有して無いのである。

これは考えてみれば当たり前の話で、変幻自在の宇宙人や怪獣相手には、軌道に縛られていては、どうにも動きがとれないからである。もっとも、S21特殊潜航艇も地中を突き進むベルシダーも、出番は少なかった。でも、怪獣出現の風景などで、鉄道が無縁なのも寂しい気がしてならない。

あの『ゴジラ』第一作の八ッ山陸橋あたりでの驚愕や、田町車両区での襲撃シーンを思い浮かべると、鉄道描写が少なかったことは、残念に思う。満田監督の意見は、どうだろう。『そりゃあ、ミニチュア作るのが面倒だからよ。いちいちレールなんか敷かなきゃならないし』などと、あっさり言われるかもしれない。円谷プロを支えた人達は、みんな鉄道が大好きだったのに。

生誕の地・須賀川のご親戚の方の伝聞によると、円谷のおやじさんは、幼いころから鉄道が大好きで、むずかっていても、汽車を見に連れていけば、ピタッと泣きやんだそうである。飛行機少年になる前の挿話だが、幼少の頃に抱いた憧れが、後年に名場面を生んだことに、つながっていったのだろう。

実相寺監督も鉄道好きではあるが、円谷プロで撮った作品の中で、鉄道を描写したものは数回しかない。『ウルトラマン』の「地上破壊工作」で、パリ本部から来たアンヌ隊員がモノレールに乗って都内へ出るシーンを、実際の東京モノレールの車内で撮影した。

『ウルトラマンダイナ』の「怪獣戯曲」を撮った折、天王洲アイル駅近くで、怪獣ブンダーが落下するシーンを撮って、モノレールがその描写の中に映っている。それから『恐怖の宇宙線』で、貨物の引込線から隊員たちが怪獣の様子をうかがうシーンがある。それには貨物しか映っていないのだが。このシーンを撮った場所は、晴海である。

倉庫と、あとは国際見本市用の円形ドームが目立っていた晴海だったが、最近訪れたときには、もうどこだったか特定できないほど変貌していた。あのドームも消え失せているし、亀戸からつながっていた旧越中島貨物線もない。

もう一つは『怪奇大作戦』の「呪いの壺」で、主人公が実家へ帰る場面である。山陰本線でC57蒸気機関車がけん引する列車を撮った。山陰本線の八木駅で撮ったものだが、機関車のナンバーはC57127であった。

『ウルトラQザ・ムービー 星の伝説』では、話の主要な軸が浦島伝説にあり、その浦島伝説の地名が色濃く残る東神奈川界わいでロケをしたが、「浦島寺」と言われる慶運寺のロケの折、その頃京浜急行を代表する特急車両だった2000系を背景に写すために、撮影のタイミングを合わせたものである。

鉄道の話をしてしまったが、初代「ウルトラマン」での代表的な乗り物と言えば、大空から宇宙へも自在に飛び出していける『ビートル』だろう。ビートル操縦席のカットは作品中によく出てくるので、みなさんにもおなじみと思う。

あのセットは本部よりもはるかに小さくて、撮影しにくいものだった。セットは操縦席周りだけが作られていた。少し怪しい記憶だが、飛行中の揺れを表現するために、セットの下に古タイヤを噛ませていたと思う。そして天井からロープでカメラを吊ることがあった。

飛行中のカットを撮ることが多かったため、カメラマンもカメラを手持ちにしたり、吊り下げたり、画面を変化させるためにいろいろと苦心していたものであった。広い風防ガラスの面は照明さん泣かせで、ライトの無用な反射と映りと抑えることに、苦労していた。

しかし、そういった制約されたレギュラーセットというのは、けっこう面白いもので、監督やカメラマンの個人差というか個性が、一番正直にでる箇所でもあった。

『ウルトラセブン』のウルトラホークの操縦席になると、ずいぶん長大になり、撮影もしやすかった。ビートルの方は、操縦席周りとは別に、隊員たちの乗り降りを撮影するためのドアの部分が別に造られていて、トラックの荷台にそれを載せて、どこにでも持ち運べるようになっていた。

ただしそのドア部分は大きさに余裕が無く、ちょっとカメラを引くとすぐバレてしまうため、撮影に苦心した。それを一度だけ、ロケに持ちだした。「真珠貝防衛指令」で、沖合にいるガマクジラを攻撃する隊員たちが、海岸の岩場に降り立つシーンである。

三浦半島の城ケ島に面した磯で撮影した。当時海岸の情景といえば、決まってそのあたりを使っていたからであった。   (おわり)


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