人造人間キカイダー・キカイダー01の世界観を作った男!(2) ~脚本家・長坂秀佳氏 [キカイダー対談・2]
(前回からつづき)
聞き手;
「その後のストーリー展開については?」
長坂氏;
「ストーリー展開については、俺の独断で決まっちゃっていったみたいだからね、ビジンダーとかワルダーとかさ。最初はワルダーはレギュラー入りする予定は無かったんだと思うんだよね。1回きりのゲストキャラだったと思うんだけど、こいつは面白いなぁと思って、『もっと使いたいんだけど、いいかな?』って聞いたんだ。
顔出しの役者を使うキャラクターじゃないから、ぬいぐるみひとつ出せばいいわけで、それでお話さえ面白く持っていければいいわけだよ。で、こいつを殺したくないって言ったら、『それでは今回の殺され役が、いなくなっちゃいます』って言うんだ。
『倒す相手がいないなら、昔のヤツをもういっぺん倒そう』って言って、前使ったぬいぐるみに手を加えて出すことにして、ワルダーを活かす方向に持って行ったんだ。何がしたかったかっていうと、彼らでメロドラマをやりたかったわけよ。
要するに1話完結で行くんじゃなくて、たて糸をとらえた連続性を持たせてね、ビジンダーをめぐる恋愛ドラマにね。ああいう枠で恋愛ドラマをやるなんてことは、当時としてはもの凄いことだったのよ。普通のドラマで恋愛を描くのは嫌いだけど、あのジャンルでは前例が無かっただけにね。
ヒーローは恋愛をしないような風潮があって、キカイダーは人間の心の二面性に、ずっと悩んで戦ってた。恋っていうのは人間的でもあるし、突っ込んでは描けなかった。そこで『01』ではたて糸に恋愛を置くと、『キカイダー』との完全な差が生まれる。そういう勝算もあったわけ。
ただゼロワンとビジンダーじゃすぐうまくいっちゃうんで、ワルダーっていうフェアで、ビジンダーのことが好きで、ゼロワンもどこかで認めている所がある、そういうキャラクターを出すことで、ゼロワンとビジンダーの関係が際立つし、
ゼロワンとワルダーの個性の差がまた面白くなるんじゃないかって思ったんだ。だからワルダーが出てきた時っていうのは、俺は大喜びだったわけだよ」
聞き手;
「ではお気に入りのキャラクターは、やはり・・・」
長坂氏;
「そう、ワルダーだね。彼にサムライ言葉をしゃべらせることにしたのも俺だし、石ノ森さんのデザイン=素材にいろいろ自分で考えてくっつけていくのが面白かったな。このキャラは自分で創ったっていう自負があるよ。だから思い入れもある。作品としても、『キカイダー01』は愛着がある。俺の土俵だと思っているよ。
『キカイダー』の時は立ち上げたあと途中から入ったから、自分の土俵に持っていくまでに時間がかかった。でも『ゼロワン』になってからは、おれが始めた、俺の土俵だって認識があった。プロデューサー達も、そんなにうるさく言わなかったよ。
おれが楽しんで書いている、よほど不都合が生じない限り、『面白ければいいじゃないか』っていうことでね。平山(亨)さんが割と面白がる人だからね、『キカイダー』と『キカイダー01』それに『快傑ズバット(77年)』は、非常に楽しんでやれた。
設定とかがガッチリと決まっていると、あまりいじれないんだよね。そこを『01』や『ズバット』は、いじれたように思えるんだ。キャラクターに、クセをつけることも出来た。NHKの大河ドラマ並みの大長編をやった気持ちがあるのよ。あそこまでやれたのは、俺だけだと思ってる。
いまでも時間と予算があれば、また喜んであのくらいの作品を創ってみたいと思うよ。石ノ森さんのデザインは素晴らしかった。ものすごい勉強家で、ものすごいデッサン力を持っていた。いちど俺の原作でデザインをやってもらって、作品を作ってみたかったね」
聞き手;
「それは是非とも、見てみたかったですね」
長坂氏;
「S・スピルバーグがすごいのは、工夫すること。考えついたビジュアルイメージをちゃんと再現するスピルバーグは、素晴らしい。恐竜の足音でコップの水が振動するとか、鼻息で窓が曇るとか、日本の怪獣映画でやってないことを、彼はやってるからね。
SFとか怪獣ものをやる人には、いつもそういう発見をして行ってほしいと思う。『仮面ライダーブラック(87年)』をたまたま観て、質感が凄いと思ってビックリしちゃってね。画が素晴らしくよく出来てた、霧の中からライダーが出てくるとか。スーツも昔とは違って技術が上がっているし。
黒がしびれるほどいいんだよなぁ。寝転がって観てたのが、パっと起きちゃうくらい。斎藤さん(当時東映プロデューサー)に電話して、『BLACKのスタッフとやりたい』と言ったこともあったんだ」 (おわり)
★★★★★★★★★★★★★★★★
『キカイダー01』は、前作『人造人間キカイダー』の正式な続編として企画され、『キカイダー』の製作途中から、別班で『01』製作は始まっていく。だが、制作・放送するまでにはクリアすべき大問題があった。1つ目は予算面。
子供向け番組の常識的時間枠である18時~20時に比べ、20時~21時という枠はスポンサー料が高いということである。スポンサー料が高ければスポンサーが付きにくいということにつながり、それは番組制作費用の捻出が困難になることになる。
そして2つ目は、企画制作から放送までの準備期間が足りないということだった。制作決定が73年初頭で放送は同年5月から。敵キャラクターの設定やコスチューム製作が、遅々として進まないのだ。苦悩するスタッフに妙案をだしたのが、今回登場したメイン脚本家・長坂氏だった。
前回の内容で紹介したように、余ったスーツに色を塗って使用した『ハカイダー4人衆』の出現である。これにより『キカイダー』撮影班が撮影終了するまでの時間稼ぎができたわけである。『01』撮影班にスタッフが合流してからは、新しい敵キャラ・シャドウが登場してくる。
キャラクター製作にはダーク破壊部隊のスーツ改造により、お金をかけ無いという資金面の問題もある程度クリアできたことになる。同年10月から『イナズマン』の撮影が始まり伴大介氏の『01』への出演が難しくなると、こんどは女性版ジローともいえる『ビジンダー』の登場、
それにワルダー、敵・シャドウとの戦いが絡み、複雑ながら面白い様相を呈するのである。そしてここで試されたことが、1年後に長坂氏をメインにした特撮ヒーロー番組、『アクマイザー3』で存分に活かされることになる。
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聞き手;
「その後のストーリー展開については?」
長坂氏;
「ストーリー展開については、俺の独断で決まっちゃっていったみたいだからね、ビジンダーとかワルダーとかさ。最初はワルダーはレギュラー入りする予定は無かったんだと思うんだよね。1回きりのゲストキャラだったと思うんだけど、こいつは面白いなぁと思って、『もっと使いたいんだけど、いいかな?』って聞いたんだ。
顔出しの役者を使うキャラクターじゃないから、ぬいぐるみひとつ出せばいいわけで、それでお話さえ面白く持っていければいいわけだよ。で、こいつを殺したくないって言ったら、『それでは今回の殺され役が、いなくなっちゃいます』って言うんだ。
『倒す相手がいないなら、昔のヤツをもういっぺん倒そう』って言って、前使ったぬいぐるみに手を加えて出すことにして、ワルダーを活かす方向に持って行ったんだ。何がしたかったかっていうと、彼らでメロドラマをやりたかったわけよ。
要するに1話完結で行くんじゃなくて、たて糸をとらえた連続性を持たせてね、ビジンダーをめぐる恋愛ドラマにね。ああいう枠で恋愛ドラマをやるなんてことは、当時としてはもの凄いことだったのよ。普通のドラマで恋愛を描くのは嫌いだけど、あのジャンルでは前例が無かっただけにね。
ヒーローは恋愛をしないような風潮があって、キカイダーは人間の心の二面性に、ずっと悩んで戦ってた。恋っていうのは人間的でもあるし、突っ込んでは描けなかった。そこで『01』ではたて糸に恋愛を置くと、『キカイダー』との完全な差が生まれる。そういう勝算もあったわけ。
ただゼロワンとビジンダーじゃすぐうまくいっちゃうんで、ワルダーっていうフェアで、ビジンダーのことが好きで、ゼロワンもどこかで認めている所がある、そういうキャラクターを出すことで、ゼロワンとビジンダーの関係が際立つし、
ゼロワンとワルダーの個性の差がまた面白くなるんじゃないかって思ったんだ。だからワルダーが出てきた時っていうのは、俺は大喜びだったわけだよ」
聞き手;
「ではお気に入りのキャラクターは、やはり・・・」
長坂氏;
「そう、ワルダーだね。彼にサムライ言葉をしゃべらせることにしたのも俺だし、石ノ森さんのデザイン=素材にいろいろ自分で考えてくっつけていくのが面白かったな。このキャラは自分で創ったっていう自負があるよ。だから思い入れもある。作品としても、『キカイダー01』は愛着がある。俺の土俵だと思っているよ。
『キカイダー』の時は立ち上げたあと途中から入ったから、自分の土俵に持っていくまでに時間がかかった。でも『ゼロワン』になってからは、おれが始めた、俺の土俵だって認識があった。プロデューサー達も、そんなにうるさく言わなかったよ。
おれが楽しんで書いている、よほど不都合が生じない限り、『面白ければいいじゃないか』っていうことでね。平山(亨)さんが割と面白がる人だからね、『キカイダー』と『キカイダー01』それに『快傑ズバット(77年)』は、非常に楽しんでやれた。
設定とかがガッチリと決まっていると、あまりいじれないんだよね。そこを『01』や『ズバット』は、いじれたように思えるんだ。キャラクターに、クセをつけることも出来た。NHKの大河ドラマ並みの大長編をやった気持ちがあるのよ。あそこまでやれたのは、俺だけだと思ってる。
いまでも時間と予算があれば、また喜んであのくらいの作品を創ってみたいと思うよ。石ノ森さんのデザインは素晴らしかった。ものすごい勉強家で、ものすごいデッサン力を持っていた。いちど俺の原作でデザインをやってもらって、作品を作ってみたかったね」
聞き手;
「それは是非とも、見てみたかったですね」
長坂氏;
「S・スピルバーグがすごいのは、工夫すること。考えついたビジュアルイメージをちゃんと再現するスピルバーグは、素晴らしい。恐竜の足音でコップの水が振動するとか、鼻息で窓が曇るとか、日本の怪獣映画でやってないことを、彼はやってるからね。
SFとか怪獣ものをやる人には、いつもそういう発見をして行ってほしいと思う。『仮面ライダーブラック(87年)』をたまたま観て、質感が凄いと思ってビックリしちゃってね。画が素晴らしくよく出来てた、霧の中からライダーが出てくるとか。スーツも昔とは違って技術が上がっているし。
黒がしびれるほどいいんだよなぁ。寝転がって観てたのが、パっと起きちゃうくらい。斎藤さん(当時東映プロデューサー)に電話して、『BLACKのスタッフとやりたい』と言ったこともあったんだ」 (おわり)
★★★★★★★★★★★★★★★★
『キカイダー01』は、前作『人造人間キカイダー』の正式な続編として企画され、『キカイダー』の製作途中から、別班で『01』製作は始まっていく。だが、制作・放送するまでにはクリアすべき大問題があった。1つ目は予算面。
子供向け番組の常識的時間枠である18時~20時に比べ、20時~21時という枠はスポンサー料が高いということである。スポンサー料が高ければスポンサーが付きにくいということにつながり、それは番組制作費用の捻出が困難になることになる。
そして2つ目は、企画制作から放送までの準備期間が足りないということだった。制作決定が73年初頭で放送は同年5月から。敵キャラクターの設定やコスチューム製作が、遅々として進まないのだ。苦悩するスタッフに妙案をだしたのが、今回登場したメイン脚本家・長坂氏だった。
前回の内容で紹介したように、余ったスーツに色を塗って使用した『ハカイダー4人衆』の出現である。これにより『キカイダー』撮影班が撮影終了するまでの時間稼ぎができたわけである。『01』撮影班にスタッフが合流してからは、新しい敵キャラ・シャドウが登場してくる。
キャラクター製作にはダーク破壊部隊のスーツ改造により、お金をかけ無いという資金面の問題もある程度クリアできたことになる。同年10月から『イナズマン』の撮影が始まり伴大介氏の『01』への出演が難しくなると、こんどは女性版ジローともいえる『ビジンダー』の登場、
それにワルダー、敵・シャドウとの戦いが絡み、複雑ながら面白い様相を呈するのである。そしてここで試されたことが、1年後に長坂氏をメインにした特撮ヒーロー番組、『アクマイザー3』で存分に活かされることになる。
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