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実相寺監督と怪獣の声の作り方(1) [実相寺監督が語るウルトラ1]

の要素は、特撮モノの場合、大変重要だ。特撮モノでは現実に見ることが出来ない世界が描かれると同時に、普段は聞くことが出来ない音響が用意されなければならない。その音が、ドラマの現実感や異次元のような場所の雰囲気を創り上げるのだから、担当者は大変である。怪獣の性格も、音によって決まるといってもいいだろう。

小森護雄氏はウルトラシリーズで音響効果を数多く担当した方であるが、このいわゆる空想SF物は普段耳にしない音を作り、且つそれがドラマとして納得のいくような流れを作るようにしないといけないから、面白い作業ではあるが、ひどく難しいと言っている。

実相寺監督は円谷プロの仕事で小森氏の作る音に出会ってから、たくさんの実相寺作品(劇場用映画からコマーシャルに至るまで)に、小森氏の音響効果技術のお世話になったそうだ。

小森氏によると、ウルトラシリーズで一番苦心したことは、怪獣の大きさや重さを音で表すことだったという。たんに重々しい、低くズッシリとくる音を探せばいいというものでは無く、やたらエコーを効かせて引き延ばした音がイイというのでもなく、怪獣の特徴に見合って、自然に発生しているような音付けにするのが、大変だったようだ。

小森氏;
「とにかく、想像の産物に音を付けて命を与えるわけですから、これという正解に対して答えを出していくのとは違い、いろんな音が考えられるので大変でしたね。まずラッシュ(編集作業の完了して無い映画フィルム)を見て、怪獣の動きなり習性を知ってから、思いつくまでが悩みの最たるものです。ハッとひらめく時もあれば、いくら考えても浮かばない時もある。

怪獣の場合、吠え声というか鳴き声から決めていくんですが、何でこんなバカなことで苦しむんだろうって、ふと思う時もありました。でも怪獣の声ひとつに夢中になれるっていうのは、幸せなんでしょうねぇ」

怪獣の声と一口に言っても、単純に一つ思いつけば終わりという訳では無い。怪獣に感情があるかどうかは別にしても、ある種の感情表現に適した変化をすべて用意しなければならない。うれしい時、悲しい時、痛い時、怒っている時などなど。それに加えて、吐息や寝息なども要求されることがある。

さらには行動する時の足音、風切り音、身体の筋肉や甲羅から発するきしみ音、うなり声なども。怪獣は、ドラマの設定上戦う習性を持っているから、その武器となる光線や吐き出す炎などにも、特別の音を考えなければならない。

小森氏;
「効果の先輩から、面白い話を聞きましたよ。やはり、怪獣の声を作らなきゃならないのに、何日かかっても、なかなか自分で納得するものが作れない。早く決めなきゃならないのに、焦ればあせるほど堂々巡りみたいになって、音が浮かばなかったそうです。思いつく限りのもので音を作っても、これで決定というものが出来ない。

家へ帰るのも毎日夜中で、絶えず怪獣の声のことばかり考えてるから、時には自分でも怪獣のようにうなったりして、奥さんも近寄らなかったらしいですよ(笑)そんな状態で、夜中に風呂に入っていたら、ついウトウトして滑りそうになったらしいです。

とっさに支えるものも無く、爪で曇りガラスを引っ掻いたら、その音がピーンと来たそうです。『これだ、これを怪獣の声にしよう!』ってひらめいて、裸のまま録音機を取りに行ったそうですよ(笑)」

実相寺監督;
「それでも、自分で納得して作った音が監督のイメージと違うからといって、キャンセルになることは無いの?」

小森氏;
「打ち合わせで方向は決めてあるから、そういうことはあまり・・・。ごくまれにありましたかね」

実相寺監督;
「音って聴く人によって受け取られ方が違うから、意見が分かれたらどうするの?」

小森氏;
「音を作る自分を納得させられる音ならば、100パーセント近くクレームが付くことは無かったですね。時間切れで納得できないまま提出した音なんかは、監督はじめとして、周囲を納得させることはできませんでしたね」

実相寺監督;
「もしキャンセルが出たら、作り直すわけ?」

小森氏;
「そうです。一から作り直し。キャンセルされた音を何とか活かそうと考えても、結局は同じ。再出発の方がいいんです」

実相寺監督;
「自分の作った怪獣の声で、一番印象に残っているものを聞かせてよ」

小森氏;
「豚の声かな! 怪獣の声に、本物のブタの声を加工して使ったことがあるんですよ。『帰ってきたウルトラマン』の『タッコング大逆襲』の時だったけど、豚の声を録音するのがたいへんで。半日以上養豚場の中で、いろんなブタの声を録って。

ブタの声を収録したテープの回転を変えたり、一つの声を重ね合わせたりして、怪獣の大きさが判るような音を作っていったんです。音響効果を料理に例えると、素材も大切だけれど、調理の仕方も肝心ということです」  (つづく)


★★★★★★★★★★★★
怪獣の声は誰も聞いたことが無いのだから、それを作るというのは至難のワザだろう。作る人のセンスが問われる仕事といってもいい。事前に監督との打ち合わせがあるとはいえ、怪獣の姿・形をデザインするセンスとは違い、また別の意味で困難を極める作業であろう。今度の怪獣タッコングは、「キーガーギッ」でいきましょう、などとやるのだろうか?

バルタン星人は男性の笑い声だし、ジャミラは赤ん坊の泣き声だということは、声の雰囲気で分かる。元になる素材を生かしているからである。ゴモラとかキーラなら加工を施してあるだろうから、元の素材が全然わからない。
M78星雲の宇宙人(実際にはいないから [笑])の声だって聞いたことが無いのだから、「これでいい」と決定するまでには、大変なご苦労があったと思う。「シュワッキュ!」ご存じウルトラマンの声だ。この発声に決まるまでの道のりを、知りたいと思う。「エイッ」「トリャー」「オオー」などから始まって、最終的にたどり着いたのが、「シュワッキュ!」。 それを声優の中曽根雅夫氏が演じたわけだ。果たしてどのようにイメージしたのだろうか?円谷一監督の才能の凄さの一面を、見た思いがする。


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