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キカイダーや新マンを造形で支えた男!(1) ~開米プロ・開米栄三氏 [キカイダー対談・2]

開米栄三氏は、怪獣造形会社「開米プロダクション」の代表取締役会長である。東宝怪獣ゴジラのぬいぐるみの制作や『キングコング対ゴジラ』のキングコングのぬいぐるみ制作を担当し、リアルな東宝怪獣の造形に貢献した。

その後は円谷プロの『ウルトラQ』で「マンモスフラワー(ジュラン)」等の造形を手掛けたあと、1966年に独立して特殊造形会社「開米プロダクション」を設立。

ピー・プロの『マグマ大使』の怪獣造形、松竹「ギララ」、日活「ガッパ」の造形指導、大映「ギロン」、「ジャイガー」等の制作を担当した。1971年(昭和46年)、円谷プロ『帰ってきたウルトラマン』では高山良策氏に代わって、「開米プロ」で怪獣造形を担当。

以後「ウルトラマン80」まで、ウルトラ怪獣全般の造形を務めた。1972年(昭和47年)東映の『人造人間キカイダー』の「キカイダー」や「ダークロボット」など等身大ヒーローキャラクターを担当し、「変身ブーム」を支えた。

当時、撮影中に傷んだぬいぐるみを補修するのがたいへんだったようで、のちに型崩れせずに長持ちするぬいぐるみ作りの手法を考案した。これにより、ヒーローショーなどの激しいアトラクション興行にも対応できるようになったという。
では、インタビューをどうぞ。

★★★★★★★★★★★★
聞き手;
「近年昔の作品が見直される機会が増えて、こちらも取材を受ける機会があるのではないですか?」

開米氏;
「取材と言っても、うちは造って収めたらそれで終わりでね。東映作品の場合だと、そのあとは補修で戻ってきたのを直すくらいだから。キカイダーの顔のアクリルが割れたとか、スーツが破れたとか、そういった時だけ持ち込まれてね。で、この作品は屋外撮影がほとんどでしょう。

岩とか砂利とかで擦れてスーツの痛みが激しかったから、ひざがよく破けて。最初はキカイダーのスーツはワンピースだったんだけども、そうすると全身一着まるまる生地を換えなきゃならなくなるから費用がかさむっていうんで、それで途中から上下に分けたんだよ」

聞き手;
「そういう理由があって、ツーピースになったんですか」

開米氏;
「当時、革でこのスーツを造ると一着30万円くらいかかったんだけど、レザー(模造皮革)なら7~8万円くらいで済んだんだ。それを上下割にすればコストを抑えられるからね。

まぁ、最初に一着造って、あとは補修、補修で半年、1年持たせていこうということだよね。ブーツなんかも泥でメチャクチャになっちゃうんだよ。アクションが激しいからね、東映作品は」

聞き手;
「『人造人間キカイダー』は特にアクロバティックなアクションが求められていたようですからね。スーツは酷使されていたんでしょうね?」

開米氏;
「それで足場の悪い所でアクションをするには向かないので、ブーツは踵(かかと)のあるのは止めようということになったんだよ。底がベタッとした方がしっかり接地していいだろうってことで。石ノ森さんも、踵のあるやつだといかにも靴を履いてますっていう感じになるから、止めましょうって言ってたね」

聞き手;
「露出しているメカニック部分の造形も、大変だっただろうと思いますが?」

開米氏;
「大変というかね、この電子部品もこっちで秋葉原の電気街に行って探してきてね。パーツや、ジャンク屋を回って見繕って、結構な量を買いこんできたけど、実際にスーツに合わせてそれっぽく造っていくと、使えるのはそんなに多くなかったりしてね。

それから今度はプラモデルを見つけて、オートバイの車輪とかそういうのもパーツに活用していたね。スーツのうでや脚の所のメカ部分は、一旦本物の部品をくっつけたものを造って、そこからシリコンで起こしてラテックス抜きして、それを張り付けたわけ。

とにかく張り付けていって隙間を適当に埋めていくという作業だったら、同じものは造れないんだよね。だから壊れて修理すると、その前後でちょっと違っちゃってて、ファンの人達はそれが判っちゃうんだよね(笑)」

聞き手;
「そういった素材選びというのも、重要なポイントだと思うのですが」

開米氏;
「うん。とにかく新しい素材を探してくるのが大変だったね。今はいろいろ専用に開発する人達がいるから質も上がってるし専門店もあるけど、当時はそんなこと考えられなかったよ。キカイダーのスーツなんか、多少ではあるけど伸縮するんだよ。

普通のレザーならしないけど、このキカイダーに使った素材は伸縮するレザー素材で、はじめて日本で出来たレザー素材なんだよ。色も当時は7色くらいしか無かったんだけど、革を染めたのと違って光沢がある。今なら革を染めたやつでもツヤがあるけどね。

革のようで光沢があるというのは、当時は他に無い質感だったんだ。でもそのあと、ここで扱ったレザーの技術は、『愛の戦士 レインボーマン』で活かされたしたね」
(つづく)


★★★★★★★★★★★★
まえがきで書いたように、開米プロが昭和の特撮に貢献した所の大きさは、計り知れない。アメリカでは人形をひとコマづつ動かす技術が主流となり、それが現在のSFX映像にも使われているそうだ。日本は「着ぐるみに人が入る」という形態を考案し、それを進化させてきた。

着ぐるみの素材進化やミニチュア造形技術の進歩に、着ぐるみ造形技術の進歩が加わって、よりリアルな特撮映像を撮ることが出来るようになったわけである。


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