帰ってきたウルトラマン(17) ~座談会;振り返ってみたウルトラマン/ナックル星人&ブラックキングの巻 [新マン座談会・1]
ウルトラマンのスーツアクター・きくち英一氏が、聞き手の某映画監督とふたりでビデオを見て、当時の記憶を思い出しながら各話のエピソードを語るシリーズ。第八弾は、悪賢いナックル星人と用心棒怪獣ブラックキングが登場する・・・
第37話『ウルトラマン 夕陽に死す』
第38話『ウルトラの星 光る時』の二本立てでお送りします。
◆地球侵略を狙うナックル星人はウルトラマンを亡き者にするため、抹殺計画を企てる。まずシーゴラスとベムスターを使って能力を探り、次に精神面で動揺させるために坂田兄妹を容赦なく殺害した。深い悲しみと怒りに平常心を失った郷秀樹=ウルトラマンはもう怖くない。ナックル星人は用心棒怪獣ブラックキングを、ウルトラマンにぶつけてきた。
脚本;上原正三
監督;冨田義治
特殊技術;大木淳
★★★★★★★★★★★★
聞き手;
「いよいよこのシリーズ最大のクライマックスです。僕はこの前後編で、実質ウルトラシリーズは終わったと思ってます」
《アキと坂田、ナックル星人の車にひかれる》
きくち氏;
「殺される?死んじゃうんだ!」
聞き手;
「うわー。これで郷の怒り爆発ですよ。しかしこんな子供番組は、前代未聞です。この後の変身の仕方が良いんです。ビルから飛び降りるんですね。郷秀樹はピンチになるとウルトラマンに変身できることを知っているから、自らをピンチの状態に追い込んだんですね。
変身出来なくて死んでもいいというくらい、郷の心は荒れ狂っていたんですね。そんなくらいだから、戦いも思うようにいかない。だから勝てないんです。ここで変身した後、きくちさんは良い芝居演ってますね」
きくち氏;
「この回は特に力が入りましたね。ナックル星人が、遠矢です。この時は遠矢と話して、人間のアクションのヤシの実割り(プロレスの技)とかやってるでしょう。ブラックキングに入っているのは有川君って言って、JFAの若手でしたね」
聞き手;
「特撮監督は、大木さんですね」
きくち氏;
「大木さんは、夕陽のシーンを巧く撮りますね。この夕陽は画になりますねぇ」
聞き手;
「徹底的にやってますね。ふつうここまでのピンチになると新マンは消えちゃうんですが
、今回は消えない」
きくち氏;
「僕がやられて、宇宙船に鎖でつながれて空を行くこのラストシーン、画がきれいでいいですねぇ」
◆◆◆怪獣役者;遠矢孝信氏の証言◆◆◆
怪獣にばかり入っていると、飽きてくるんですよ。怪獣はその役者の資質というより、とにかく動くという体力勝負のところがある。でも宇宙人、このナックル星人は自分の身体のラインがそのまま出てるから、燃えましたね。この素振りは、東映の任侠映画のチンピラがいいもんをいたぶる、あの感じでやってます(笑)
***引き続き、第38話『ウルトラの星 光る時』をお送りします。***
◆ナックル星人の卑劣な作戦の前に、ついにウルトラマンは力尽きて倒れてしまう。ナックル星で処刑するため、宇宙船に鎖でつながれて運ばれるウルトラマン。ナックル星で逆さ磔にされたまま、処刑の時は刻一刻と迫る。
その時、初代マンとセブンが新マン救出に現れた!二人の力をもらって、新マンは復活する。さあ、友情のウルトラパワーで、ナックル星人とブラックキングを倒せ、ウルトラマン!
《逆さ吊りされた新マンを、初代マンとセブンが助ける》
聞き手;
「いよいよ最高の見せ場です。(逆さ吊りにされたウルトラマンの中に)きくちさん、中に入ってるんですか?」
きくち氏;
「本当に逆さづりにされてるんですよ。頭に血がのぼって、きつかったですねぇ」
聞き手;
「それは辛いでしょうね。この初代マンとセブンには、誰が入ってるんですか?」
きくち氏;
「セブンはベムスターの回でもやった望月君。初代マンは斎藤君」
聞き手;
「初代マンの飛行ポーズが、昔と変わってるんですが」
きくち氏;
「これね、帰ってきたウルトラマンの飛び人形を改造して初代マンにしたの。だから手が開いてる。前と違うって言われてもね、当時はそこまで見てるとは思わなかったですよ」
聞き手;
「宇宙を飛ぶ三人のウルトラ戦士。無敵の状況です。こんなに夢を与えたシーンは、無いですね。これで初代マンとセブンの出番は終わり。これくらいがちょうどいいんですよ。これ以上でるとね・・・」
《ウルトラマンとブラックキングの戦い、ブラックキングの崩した岩が隊長に当たる》
きくち氏;
「何気ないシーンですが、本編と特撮の打ち合わせをよくやってないと出来ないシーンです」
《ウルトラマンのカラータイマーが赤になるが、ナレーション『だがウルトラマンは負けない。初代マンとセブンの友情が心の支えになっているのだ』と言った瞬間強くなる》
聞き手;
「いい!良いテーマだ。人間の心の持ち方次第だっていう。しかし、ワンカットでやってるんですね」
きくち氏;
「ここね、結構長回しで、俺が殴っても遠矢が全然反応しない。ちょっとしてから、吹っ飛んだね(笑) たぶん、くたびれていたんだろうね」
◆◆◆怪獣役者;遠矢孝信氏の証言◆◆◆
本気で殴れって監督に言われて、最初は疑問感じながらやってたんですが、ナックル星人の時、今回は人間アクションでいこうってことにしたんです。人間の形してるからホントに殴らないとアクションが少しずれる。のぞき穴をモロに殴られて、『うっ、この野郎!』なんて思ったこともあります。でも、先輩だから、あとで呑ましてもらって、それで後腐れ無しです(笑)
★★★★★★★★★★★★
昨日の記事を読んだ方は覚えていると思うが、怪獣造形は、新マンから開米プロが引き受けている。それまで高山良作氏が受け持っていたすべてを、引き継いだわけだ。このナックル星人とブラックキングも、よく出来た造形だと思う。(ブラックキングは熊谷健氏、ナックル星人は作者不明)
熊谷健氏は映画界の人であったが、1963年に円谷プロに入社。『帰ってきたウルトラマン』ではプロデューサー補として活躍された。中盤からは池谷仙克氏の後を受けて、怪獣デザインを担当した。熊谷氏によると、人気怪獣とは、
①二本足怪獣で、おもちゃにしたときに格闘させて遊びやすい
②ドラマチックな登場や死に方をしている
③角やムチなど特徴ある武器を持っている
この3条件を備えていることだという。なるほど、シーゴラスやベムスター、ゼットンやバルタン星人は、いずれもこの3条件を満たしているように思える。その意味では、ブラックキングは条件②を満たしてないため、人気が今ひとつであるようだ。筆者の好きなエレキングはこの3条件を満たしていると思うが、どうだろう。
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第37話『ウルトラマン 夕陽に死す』
第38話『ウルトラの星 光る時』の二本立てでお送りします。
◆地球侵略を狙うナックル星人はウルトラマンを亡き者にするため、抹殺計画を企てる。まずシーゴラスとベムスターを使って能力を探り、次に精神面で動揺させるために坂田兄妹を容赦なく殺害した。深い悲しみと怒りに平常心を失った郷秀樹=ウルトラマンはもう怖くない。ナックル星人は用心棒怪獣ブラックキングを、ウルトラマンにぶつけてきた。
脚本;上原正三
監督;冨田義治
特殊技術;大木淳
★★★★★★★★★★★★
聞き手;
「いよいよこのシリーズ最大のクライマックスです。僕はこの前後編で、実質ウルトラシリーズは終わったと思ってます」
《アキと坂田、ナックル星人の車にひかれる》
きくち氏;
「殺される?死んじゃうんだ!」
聞き手;
「うわー。これで郷の怒り爆発ですよ。しかしこんな子供番組は、前代未聞です。この後の変身の仕方が良いんです。ビルから飛び降りるんですね。郷秀樹はピンチになるとウルトラマンに変身できることを知っているから、自らをピンチの状態に追い込んだんですね。
変身出来なくて死んでもいいというくらい、郷の心は荒れ狂っていたんですね。そんなくらいだから、戦いも思うようにいかない。だから勝てないんです。ここで変身した後、きくちさんは良い芝居演ってますね」
きくち氏;
「この回は特に力が入りましたね。ナックル星人が、遠矢です。この時は遠矢と話して、人間のアクションのヤシの実割り(プロレスの技)とかやってるでしょう。ブラックキングに入っているのは有川君って言って、JFAの若手でしたね」
聞き手;
「特撮監督は、大木さんですね」
きくち氏;
「大木さんは、夕陽のシーンを巧く撮りますね。この夕陽は画になりますねぇ」
聞き手;
「徹底的にやってますね。ふつうここまでのピンチになると新マンは消えちゃうんですが
、今回は消えない」
きくち氏;
「僕がやられて、宇宙船に鎖でつながれて空を行くこのラストシーン、画がきれいでいいですねぇ」
◆◆◆怪獣役者;遠矢孝信氏の証言◆◆◆
怪獣にばかり入っていると、飽きてくるんですよ。怪獣はその役者の資質というより、とにかく動くという体力勝負のところがある。でも宇宙人、このナックル星人は自分の身体のラインがそのまま出てるから、燃えましたね。この素振りは、東映の任侠映画のチンピラがいいもんをいたぶる、あの感じでやってます(笑)
***引き続き、第38話『ウルトラの星 光る時』をお送りします。***
◆ナックル星人の卑劣な作戦の前に、ついにウルトラマンは力尽きて倒れてしまう。ナックル星で処刑するため、宇宙船に鎖でつながれて運ばれるウルトラマン。ナックル星で逆さ磔にされたまま、処刑の時は刻一刻と迫る。
その時、初代マンとセブンが新マン救出に現れた!二人の力をもらって、新マンは復活する。さあ、友情のウルトラパワーで、ナックル星人とブラックキングを倒せ、ウルトラマン!
《逆さ吊りされた新マンを、初代マンとセブンが助ける》
聞き手;
「いよいよ最高の見せ場です。(逆さ吊りにされたウルトラマンの中に)きくちさん、中に入ってるんですか?」
きくち氏;
「本当に逆さづりにされてるんですよ。頭に血がのぼって、きつかったですねぇ」
聞き手;
「それは辛いでしょうね。この初代マンとセブンには、誰が入ってるんですか?」
きくち氏;
「セブンはベムスターの回でもやった望月君。初代マンは斎藤君」
聞き手;
「初代マンの飛行ポーズが、昔と変わってるんですが」
きくち氏;
「これね、帰ってきたウルトラマンの飛び人形を改造して初代マンにしたの。だから手が開いてる。前と違うって言われてもね、当時はそこまで見てるとは思わなかったですよ」
聞き手;
「宇宙を飛ぶ三人のウルトラ戦士。無敵の状況です。こんなに夢を与えたシーンは、無いですね。これで初代マンとセブンの出番は終わり。これくらいがちょうどいいんですよ。これ以上でるとね・・・」
《ウルトラマンとブラックキングの戦い、ブラックキングの崩した岩が隊長に当たる》
きくち氏;
「何気ないシーンですが、本編と特撮の打ち合わせをよくやってないと出来ないシーンです」
《ウルトラマンのカラータイマーが赤になるが、ナレーション『だがウルトラマンは負けない。初代マンとセブンの友情が心の支えになっているのだ』と言った瞬間強くなる》
聞き手;
「いい!良いテーマだ。人間の心の持ち方次第だっていう。しかし、ワンカットでやってるんですね」
きくち氏;
「ここね、結構長回しで、俺が殴っても遠矢が全然反応しない。ちょっとしてから、吹っ飛んだね(笑) たぶん、くたびれていたんだろうね」
◆◆◆怪獣役者;遠矢孝信氏の証言◆◆◆
本気で殴れって監督に言われて、最初は疑問感じながらやってたんですが、ナックル星人の時、今回は人間アクションでいこうってことにしたんです。人間の形してるからホントに殴らないとアクションが少しずれる。のぞき穴をモロに殴られて、『うっ、この野郎!』なんて思ったこともあります。でも、先輩だから、あとで呑ましてもらって、それで後腐れ無しです(笑)
★★★★★★★★★★★★
昨日の記事を読んだ方は覚えていると思うが、怪獣造形は、新マンから開米プロが引き受けている。それまで高山良作氏が受け持っていたすべてを、引き継いだわけだ。このナックル星人とブラックキングも、よく出来た造形だと思う。(ブラックキングは熊谷健氏、ナックル星人は作者不明)
熊谷健氏は映画界の人であったが、1963年に円谷プロに入社。『帰ってきたウルトラマン』ではプロデューサー補として活躍された。中盤からは池谷仙克氏の後を受けて、怪獣デザインを担当した。熊谷氏によると、人気怪獣とは、
①二本足怪獣で、おもちゃにしたときに格闘させて遊びやすい
②ドラマチックな登場や死に方をしている
③角やムチなど特徴ある武器を持っている
この3条件を備えていることだという。なるほど、シーゴラスやベムスター、ゼットンやバルタン星人は、いずれもこの3条件を満たしているように思える。その意味では、ブラックキングは条件②を満たしてないため、人気が今ひとつであるようだ。筆者の好きなエレキングはこの3条件を満たしていると思うが、どうだろう。
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