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キカイダーの音楽・渡辺宙明先生の世界 ~キカイダーには『宙明節(チュウメイブシ)』の原典が詰まっている [キカイダー対談・1]

70年代から特撮番組やアニメ番組で数々のヒット主題歌を作ってきた作曲家といえば、『渡辺宙明』先生と『菊池俊輔』先生のおふたりである。

渡辺宙明先生の代表作と言えば『マジンガーZ』だと思うが、人造人間キカイダーやキカイダー01でも、聞いていて歌っていて心地よさを感じるのは、先生の力量がいかんなく発揮されているからだと思う。

ささきいさお氏の回で話していたように、子供番組だから子供向けにという考え方を止めて、一つの作品として作ろうという考え方が良かったのだろう。

筆者も含めて当時子供として見ていたそれらの番組の主題歌を、大人になってカラオケで歌ってもおかしくないのは、まさに子供向けに出来ていないからであろう!ちなみに筆者は、『新造人間キャシャーン(菊池俊輔先生作曲)』や『マジンガーZ』がお気に入りで、酔った勢いで歌うこともあるぜっーと!

では、宙明先生のインタビューをどうぞ。


★★★★★★★★★★★★
司会;
「人造人間キカイダーは、マジンガーZと双璧をなす渡辺さんの代表作ですが、どういった経緯でお話があったんですか?」

渡辺先生;
「東映さんとはそれ以前からお付き合いがありまして、『キカイダー』の少し前にも、『五番目の刑事(69年)』という刑事ドラマをやらせていただいたんです。そのあとに東映の某部長さんから『SFドラマがあるんだけど、やってみないか』とお声をかけていただいたんです。」

司会;
「そのSFドラマが『キカイダー』だったと・・・」

先生;
「そうなんです。SFドラマと聞いてもっと違ったものを想像していたんですが、企画書を見せて貰ったら、“変身ヒーローもの“で、私が抱いていたイメージとは違っていたので驚いてしまって(微笑)。でもそれなら、『他に無いようなテイストの曲を作ってやろう』という意欲がすぐに湧いてきましたね。

それで行きつけのレコード店でヒーローもののレコードをいくつか買ってきて、聴いてみたんです。マーチ調のものなどがありました。当時の主流はそんな感じでしたが、じゃあ自分は、ロック調でやってみようと考えました。

それ以前に私がやった『忍者部隊月光(65年)』では、プロデューサーが音楽好きでしたから、ベンチャーズのようなエレキバンドのテイストを採り入れたりしていました。その時に少し研究していたので、土台はもう出来ていたのかもしれません。

確か『花笠お竜(70年)』でもロック風の音使いをしていたので、『キカイダー』の作曲で特に苦労したということは、ありませんでしたね」

司会;
「実際に作曲するに当たって配慮された点を、お聞かせください」

先生;
「そこまでの活動の中で構築されてきた自分の音楽の理想像とか、日本人向きの音楽の理想像というのがありまして、そのあたりを意識しながら作曲にあたりました。あとはアクションものですから、パンチの効いた音楽にしようと。

それから作曲をして行くうちに段々と哀愁を帯びた感じが入って来ましてね。打ち合わせで石ノ森先生と何度かお会いして話をしているうちに、先生のカラー(イメージ)が私の中にも入ってきて、無意識のうちにそういう曲調になってしまったんじゃないかと思っています(微笑)」

司会;
「主題歌については、いかがでしょう?」

先生;
「主題歌はメイジャーだと明るすぎるのでマイナー系にして。私の場合、主題歌はほとんどマイナーです。マイナーペンタトニックという手法がありまして、これを使ってやろうと考えました。これはロックや日本民謡でよく使われる手法です。

『ゴーゴーキカイダー』や『Zのテーマ』をはじめとする主題歌で私はよく使っていまして、いわゆるファンの皆さんが言っている“宙明節”の源泉といえるかもしれないですね」

司会;
「実際の収録はどのように行われましたか?」

先生;
「最初に私が作ったメロディをピアノの弾き語りで、東映、石森プロ、日本コロムビア、テレビ朝日(当時NET)、旭通信社のプロデューサーさんや担当諸氏に聞いてもらい、それから編曲、収録という流れでした。

キカイダーは、歌はコロムビアさんの本社スタジオで録っているんですが、バックのオーケストラは旧スタジオで収録しました」

司会;
「ジロー、サブロー、イチロー、ギルといったメインキャラクターが楽器を奏するということで、それぞれモチーフの楽器を用いたテーマ音楽があったのが特徴的でしたが」

先生;
「そうですね、あれは面白い設定でしたね。音楽的につながりが出来ましたから。ジローのキターはクラシックのギタリストに来て頂いて、別の日に演奏してもらったものです。これはエレキギターによる別バージョンもありまして、ハンペン(服部半平)がジローを真似てギターをつま弾きながら登場した(第20話)際に、使われていました」

司会;
「サブローの口笛は、生音ですよね?」

先生;
「そうです。ただBGM録音で奏者を呼んだ覚えが無いので、おそらく挿入歌『サブローのテーマ』を収録した時に、別録りしたんでしょう」

司会;
「特に聴いていて目立つのが曲のテンポなんですが、子供番組とは思えないのですが」

先生;
「あまり子供番組ということを意識してやっていませんでしたからね。追跡とか捜査をイメージした感じの曲だとブルージー(ブルース風)な音使いで仕上げていて、それがチェイスシーンのようなアクションがらみのものだとロック調になって、テンポもグッと早めています」

司会;
「ハカイダーとの対決テーマとか、刑事ドラマ調のアダルトな感じのメロディもおおいですね」

先生;
「マジンガーZを手掛けた後なので、その影響が出ているというかマンガチックなイメージもありますね。私は『マジンガーZ』で音使いが少し変わって、音に厚みを持たせる手法が解ってきたんです。だからそれ以前と以降ではまるで違うんです」

司会;
「続いてキカイダー01についてお聞かせください」

先生;
「1回目がイチローの変身、イチローのトランペットや主題歌・挿入歌アレンジが主で、その後ビジンダーの登場に合わせてビジンダーのハープの音楽を録り足しています。キカイダーの2回目録音の時に不足分を録ってあったので、ストックは十分あったんです」

司会;
「ボーカルを担当された方には、どんな印象をお持ちですか?」

先生;
「秀夕木(ヒデ夕樹)さんが上手かったですね。イナズマンFやスパイダーマンでも歌ってもらいましたが、できればもっと歌って頂きたかったですね。亡くなられてしまったのが、非常に残念です。子門真人さんが独特の美声と唱法で、印象的です。

哀愁漂う曲にピタリとはまるんですよ、『キカイダー子守唄』など気に入っています。水木一郎さんにはマジンガーZ以来、数多くの私の曲を歌ってもらっています。ファンの方に人気の高い『ハカイダーの歌』も、力強さとシャープなイメージが共存していていい感じでした」

司会;
「振り返ってみて、キカイダー、キカイダー01という作品をどうお思いですか?」

先生;
「『キカイダー』と『キカイダー01』には、今後も使っていきたい音使いがあります。ファンのみなさんがおっしゃっている“宙明節” “宙明サウンド”の本質、原典が詰まっていると思うんです」


★★★★★★★★★★★★
渡辺宙明先生は、60年代半ばの映画『夕陽のガンマン』や『荒野の用心棒』の作曲家、エンニオ・モリコーネの影響を受けているという。影響を受けた音楽は、まず頭の中に叩き込んでおいて自分なりにこなしてから、それを自分のものとして出していくという手法で作るそうだ。

そうして出来上がったのが、マカロニウエスタン調の曲、『ぼくらのキカイダー』や『サブローのテーマ』などの哀愁漂う秀逸なメロディである。


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