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実相寺監督とヨコハマの町2 [実相寺監督が語るウルトラ3]

(実相寺監督)は移動のカットが大好きだ。どんな作品にも移動を使うのだが、外人墓地でそんな手間のかかる事をやったのには、わけがある。

『ウルトラセブン』が終わってからしばらく、私は京都松竹で時代劇をやっており、そこでふんだんに移動車を使わせてもらえたので、『怪奇大作戦』で円谷プロに戻った折、特機の連中に、いかに京都の撮影所はすごいかを聞かせたのだ。

傾斜は言うに及ばず、移動車と小クレーンの併用、大クレーン自体の移動、当時最新のドリーまで、移動でやれないことはなかったのである。特機とは特殊機材の略だろうと思う。円谷プロでは、操演の連中が兼ねていた。

京都での体験を得意げにしゃべると、そんなことは円谷でもできる、と操演の連中が腕をまくったのである。なので『怪奇大作戦』の折には、どんな面倒な移動でも要求することができたのであった。

『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』の作品では、移動のカットもいくつかあるけれども、他人様に威張れるようなカットやスタッフの間で伝説になるようなカットは、一つも無い。だが『怪奇大作戦』は、ずいぶん自分のわがままを通させてもらった作品であった。

横浜での『ウルトラマン』の撮影の折に、もう一か所ロケをしようと決めた名所があった。夢の島中心で撮影をした『空の贈り物』の時、“三渓園”でロケをすることに、ロケハンで決めていたのである。

夢の島の荒れ野から一転、優雅な雰囲気の野点(のだて)のシーンで、怪獣との決着後のオチをどんな形で締めくくろうかと考えて、“三渓園”を選んだのだ。でもそれは実現しなかった。何日も雪にたたられ、他の残ったシーンとの兼ね合いもあり、許可を頂戴していたのに都内でまとめざるを得なくなったからだ。

原富太郎という実業家の邸宅で、移築された古建築の野外博物館であるこの三渓園も、昔は海に臨んでいたのだが、今や埋め立てによって陸地に囲われ、湾岸線の首都高が立ちはだかってしまった。実際に野点シーンのロケをしたのは、目白にある“椿山荘”の庭園であった。

三渓園も大きく昔と眺めが変わっているが、椿山荘を訪れてみると、本館の建物が巨大なビルになっていて、こちらもロケ当時との違いに驚かされた。山県有朋公縁の感じが希薄になっているのは、時代の成り行きだろう。三重塔を背景にロケした辺りを求めたのだが、定かではなかった。

野点を俯瞰の構図で撮るためにカメラを置いたあたりには、白い結婚式用の教会が建てられており、日本庭園との釣り合いを壊していた。でも、それで商売繁盛なら致し方ないと思う。新婚カップルが幸せそうだった。わたしは、そのカップルの子供が新しいウルトラのファンになりますようにと、心の中でつぶやいていた。 (終わり)


★★★★★★★★★★★★
時の流れには、逆らえないものだ。代が変われば、考え方も変わる。椿山荘のような素晴らしい日本庭園の一角に教会が建っているというのは、それが経営の一環としてそうせざるを得ないのなら、他人が口出しをするものではないと、筆者も思うのではあるが。例えて言えば、それは科特隊が巨大な怪獣と戦うのに、馬にまたがり弓矢を使って戦っているような違和感と同じではあるのだが・・・。



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