SSブログ
怪獣論・怪獣学F ブログトップ
- | 次の5件

怪獣は死んだか? ~形態学的怪獣論46(終) [怪獣論・怪獣学F]

『ウルトラマン80』は、孤高のウルトラシリーズだった。競合する特撮番組も無く、ブームと呼べる盛りあがりも無いまま、冷凍怪獣マーゴドンと共に舞台を去った。その後の怪獣を取り巻く状況の寂しさは、一面「白」の死の世界を思わせた。

怪獣やテレビの特撮番組は今度こそ死んだとの思いは、特撮ファンのみならず、一般視聴者の潜在意識の中にも深く浸透していた感がある。だが一方で、映画界では生誕30周年を記念して大作『‘84ゴジラ』が製作され、一定の成果を収めた。

そして元号が昭和から平成に変わったその年、『ゴジラ対ビオランテ』が封切られ、その後の平成ゴジラVSシリーズが続いて、特撮界はゴジラを中心に活況を呈し始める。

円谷プロはこの頃、ウルトラマンの海外展開を狙い、『ウルトラマングレート』『ウルトラマンパワード』の2シリーズを海外のスタッフと共に制作していた。ともにテレビでの放送ではなくビデオでの展開だったためか、大きな反響があったとは言い難い。

だが、怪獣を見れば、『グレート』のオリジナル怪獣では、双脳地獣ブローズ、ギガザウルス、シラリーなどのユニークな形態が楽しい。『パワード』では周知のごとく、既成怪獣たちのリメークが行なわれたが、拒絶反応も強く、成田亨氏のオリジナルデザインの偉大さと、和洋の感性の違い?を再認識させられる結果となった。

またパイロット版で『ウルトラマンネオス』の制作も始動し、映画では『ウルトラマンゼアス』が大健闘をみせた。だが、ウルトラマンにとって90年代前半で特筆すべきは、『電光超人グリッドマン』ではなかったか。

ヒーローの形態こそガンダムまがいだが、電脳社会を先取りした設定、スタッフの陣容など、平成ウルトラ三部作の母胎はここに育まれていたと言ってよい。登場する怪獣も、電脳空間ではこのような形態は必要ないと知りつつも、怪獣本来の魅力を今一度再現してくれたのがうれしい。

弾力怪獣バモラ、結晶怪獣ギラルスをはじめとして堂々たるラインナップ。悪の総帥カーンデジファーの描き方も、かの異次元人ヤプールを洗練した趣きでニヤリとさせられる。

あるいは早過ぎた登場だったかもしれないこのヒーローだが、確たる信念のもとに真剣に制作された番組と、そこに傾注された努力の数々は、決して無駄にはならない。そのことを証明した奇跡のような新ウルトラマンは、奇しくもウルトラマン生誕30周年の1996年9月7日に、我らの前に出現することになる。

平成のウルトラマン、『ウルトラマンティガ』であり、それは『ダイナ』、『ガイア』へと続く平成ウルトラ三部作の始まりであった。 

(終わり)


★★★★★★★★★★★★
『電光超人グリッドマン』について

『グリッドマン』は、1993年(平成5年)4月から翌年1月まで全39話が放送された円谷プロダクション制作の特撮テレビ番組で、『ウルトラマン80』以来12年ぶりとなる30分枠の実写特撮ドラマであった。

「ハイパーワールド」と呼ばれる異次元空間から逃亡してきた魔王「カーンデジファー」は、ネクラ中学生の藤堂武史のコンピュータに寄生してコンピュータワールドで生きている。

武史が作った怪獣をカーンデジファーがコンピュータワールドで実体化させ、他のコンピュータに侵入、プログラムを破壊して人間界が大混乱に陥るという、当時普及していなかったインターネットやコンピュータウイルスの登場を先取りした設定になっていた。

同じ中学生の主人公・翔直人ら3人は、このコンピュータワールドの異常に気付く。そして、カーンデジファーを追って地球にやってきたハイパーエージェントが、直人の友人・一平が描いたCGグリッドマンに乗り移って電光超人となっていた。

直人はグリッドマンと合体して、魔王カーンデジファーと闘うことを決意する。戦いは全てコンピュータ内の世界のことであるため、怪獣やグリッドマンの存在を知っている人間は直人ら中学生4人だけであり、一般市民に知られるのはかなり後のことになる。

タグ:怪獣
nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:テレビ
- | 次の5件 怪獣論・怪獣学F ブログトップ