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バルタン星人という美しさ ~バルタン星人の登場が怪獣・星人のデザインに与えた影響は大きい [怪獣論・怪獣学A]

バルタン星人の登場は、この後に出てくる数多くの怪獣・怪人の姿形に、デザイン的に大きな影響を与えることとなった。まず全体像として、最も早く影響を受けたと思われるのは、1967年の『キャプテン・ウルトラ』に出てくる金属人間メタリノームであろう。

割れた頭部と両手の先で3つの巨大なY字型を作ることや、半球形の眼、身体を覆う節などが、『キャプテン・ウルトラ』におけるバルタン星人であるといってもよい。

『キャプテン・ウルトラ』は、バンデル星人を中心に展開する1クール目では登場する怪獣はわずかに3匹だけであるが、2クール目は路線変更して毎回怪獣を登場させる。メタリノームは2クール目に登場し、金属人間という不気味な設定が、番組を代表する敵役としての知名度を上げている。

『ウルトラセブン』以降のウルトラシリーズでは、メタリノームのように怪獣と人間の接点を狙ったデザインという観点から見ると、必ずバルタン的発想のものが見受けられる。これを『バルタンの系譜』と呼んでいいだろう。

名称だけ列挙すれば、ゴドラ星人、メトロン星人(以上セブン)、バット星人(新マン)、ギロン人、アンチラ星人、巨大ヤプール(エース)、ムルロア、テンペラ―星人(タロウ)といった具合で、まったくの人間型宇宙人に徹した『レオ』ではちょっと見当たらない。

これらの宇宙人たちは、顔面部の処理法や手指の形態が似ていることが、バルタン星人を基本にしていることを思わせる。ことに宇宙からの侵略をテーマにしていた『セブン』では、いかにバルタンを超えるか、いかにバルタンから脱却するかをデザインテーマにしていたのではないかとも思えるような、さまざまな宇宙人たちが登場してきた。

『セブン』以降のシリーズにおいても、バルタンの系譜に属するこれらの星人たちは、シリーズのキーとなる重要なドラマに登場したものばかりであり、バルタンの強い影響を思わせる。

その他怪獣も含めて、バルタンの頭部(V字あるいはY字型頭部と眼球の位置関係)を連想させるのは、ギエロン星獣、プロテ星人、ペガ星人(以上セブン)、グロテス星人(新マン)、スノーギラン(エース)などが浮かんでくる。

武器としての手の変形では、ドラコ(初代マン)、サドラ、グドン、グロンケン、レッドキラー(新マン)、ブロッケン、バラバ、ホタルンガ(エース)、アストロモンス(タロウ)等々、多くの怪獣が該当する。

さらに本家『ウルトラマン』で言えば、最終回の宇宙恐竜ゼットンこそ、バルタンの系譜に属するものである。顔の中心にひし形の口、黒目の無い眼部、頭部に生えるV字型の突起など、共通点が多い。

極論すればゼットンは、最終回を飾るにあたり、それまで最も人気の高かったバルタン星人とレッドキングの要素を合体させたものであるといえる。最強の宇宙恐竜という設定を与えられていながら、恐竜のような姿ではなく人間型の怪獣であるのは、発想の根底にバルタン(宇宙人)を置いているからではないだろうか。

人間型怪獣の場合、脚にはあまり装飾を施せない。動き回るためである。そのためデザイン上の工夫は上半身に集中する。『仮面ライダー』に出てくるような怪人たちは、その典型である。

低予算というハンディの中で試行錯誤を繰り返した結果、怪人に関わるアイデアを上半身に集中させ、左右非対称の技法を積極的に取り入れたショッカー怪人は、最初は実在する生物のデフォルメという形だったが、やがて2種類の生物を合体させたゲル・ショッカー怪人へと進化し、生物と武器を合体させて作ったデストロン怪人に至って頂点を迎える。

生物と武器・機械の合体という発想は『ウルトラマンエース』の超獣が先んじているが、デストロン怪人たちの方がより見た目での訴える力が上であった。両手にハサミを持った最初の怪人とも言えるバルタン星人。そのデザインの影響力は、その後のおびただしい数の後継者たちの中に、脈々と生き続けている。


★★★★★★★★★★★★
バルタン星人は、美しい姿をしていると思わないだろうか。その要因は、あの大きなハサミにある。身体の大きさに対して不似合に大きなハサミが全体として良いバランスを保っていて、それが美しく見えるのだ。成田亨氏のデザイン画では、あんなに大きなハサミにはなってない。

むしろ成田氏のそれは、2代目バルタン星人に近い。であるから、描いた成田亨氏はもちろん素晴らしいのだが、造形を担当された高山良作氏の、デザイン画にプラスアルファを加える造形家としての「腕」が素晴らしい、と言わせてもらいたいのだ。

燕尾服のような腰からお尻にかけての部分も、バランスを取るのに役立っている。そして下半身には、ゴツゴツしたような装飾物が何もない。ちょうどショッカー怪人のベルトから下がタイツだけで簡単な造作になっているように、バルタンも上半身に比べて下半身にはほとんど装飾が無い。

この上下のバランスの良さがバルタン星人の魅力であり、美しさなのである。『キレテ コシ キレキレテ!』




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