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ご他界された方々を偲んで【第六回】 [偲んで]

【ご他界された特撮関係の方々を偲んで】と題して、仮面ライダー1号、2号、そしてV3にご出演されたレギュラー・準レギュラーの俳優さん、ショッカー・ゲルショッカー・デストロン怪人の声を演じた声優さんなどを中心に、ご紹介させていただきます。

【第六回】 
富士野 幸夫(ふじの  さちお)氏
生没年月日不明

富士野幸夫(ふじの・さちお)氏は劇団ひまわり出身で、大手殺陣集団・大野剣友会に所属していた俳優です。主に1970年代の特撮番組に数多く出演しており、『仮面ライダーV3』では大野剣友会メンバーで初めて、悪の大幹部であるツバサ大僧正役を務めました。

第五回の郷鍈治氏の時にご紹介したように、視聴率にかげりが見えてきた『仮面ライダーV3』はテコ入れのために、キバ男爵とツバサ大僧正という怪奇色性の強いキャラを新たな幹部として迎えることになります。ですが、それぞれ5話ずつの短期間の登場となったのは、タイアップしている月刊幼年誌向けに、月1回の話題を提供するという意図によるものだったそうです。

富士野幸夫氏についての情報が極端に少ないため、今回はその人物像ではなく富士野氏が命を懸けて演じたスーツアクターについて調べてみました。『スーツアクター』とは、着ぐるみを着用して擬斗やスタントなどの演技をする俳優にしてスタントマンのことを指します。古くは東宝映画『ゴジラ』でゴジラの初代スーツアクターを務めた中島春雄が有名ですが、言葉そのものは日本の特撮映画・テレビドラマで使われてきた和製英語であり、ハリウッド映画など海外では用いられていません。

過去の変身ヒーローものの作品では、変身前の主人公を演ずる俳優自身が全てのスーツアクションを行っていた時代もありました。1960年のテレビドラマ『新・七色仮面』では、千葉真一がスーツアクションを自ら行い、器械体操で培ったアクロバティックな千葉の擬斗・スタントは、後に製作されていく変身ヒーローを題材とした作品にも大きな影響を与えていくこととなります。1971年のテレビドラマ『仮面ライダー』では、藤岡弘が初期の回で自らライダーの衣装を着て演じていたことがありました。撮影中に主人公・藤岡が大怪我を負い、それが仮面ライダー2号・一文字隼人誕生へと繋がっていきます。

また東映のスーパー戦隊シリーズでは、『科学戦隊ダイナマン』以降、最終回やその付近では変身前の俳優自らがスーツアクターとしてアクションを行い、その他の回では普段のスーツアクターが素顔でゲスト出演するのが恒例になっています。映像作品において、現在ではスーツアクターを専業とする者もいますが、当初は(売出し中の)通常の俳優が請け負うことが多かったのです。

しかし、俳優の命とされる「顔」が露出しない事が殆どである事から、敬遠されるのが通常でありました。(東宝の俳優だった古谷敏がこのことでとても悩み、バスの中であることに出会わなかったなら、初代ウルトラマンのスーツアクターを途中で降板していたという有名なエピソードがあります)

一方でゴジラやウルトラマンといった製作会社の看板にまで成長した作品においては、その役を演じた事を誇るようになったケースもあり、『仮面ライダーシリーズ』では主役の仮面ライダーを演じた中屋敷鉄也や高岩成二らは他者には真似のできない演技を構築して、独自のプライドを持つ役者たりえることもありました。

大野剣友会について
1964年、殺陣師の大野幸太郎が演劇及び殺陣を志す人材育成のために設立。初期は時代劇の殺陣を担当し、TVドラマ「柔道一直線」にて現代劇のアクションに進出しました。さらに特撮「仮面ライダー」のアクションと吹き替えを担当すると、「仮面ライダー」は子供達の間で爆発的人気となります。剣友会もTVのみならずアトラクションやライダーショーなどで引っ張りだこになり、岡田勝、中屋敷哲也、中村文弥(ライダーV3でヨロイ元帥を演じた)、新堀和男など、ライダーシリーズのみならず、数々のドラマ・映画のアクションシーンを支える名優たちを輩出しました。

大野幸太郎は国民的ヒーローである「仮面ライダー」を演じることに強い責務を感じ、以下のような心構えを若手たちに厳守させたということです。
・ライダーを演じる事を誇りと思え
・夢を壊さぬよう、人の見ているところでは煙草を吸ったり、寝転がったりするなどのだらしない姿を見せてはならない
・衣装も靴もヒーローの一部であり、地面に置いたり粗略に扱ったりしてはならない

大野は1979年に代表の座を岡田に譲ると、会長職に退きます(2009年逝去、享年76)。大野剣友会は現在も岡田を代表として、映画や舞台で活躍中です。

最後に、富士野幸夫氏が命を懸けて演じたツバサ大僧正のプロフィールです。
【ツバサ大僧正】は、キバ一族全滅直後の第36話~第40話に登場しました。チベット高原を発祥地とする邪宗密教「まんじ教」の教祖であり、飛行能力を持つ怪人達によって構成された「ツバサ軍団」を率いる3代目大幹部として日本支部に就任します。

・黒い服を纏った老人で顔に翼を模した赤い仮面を着けており、呪術や自在に伸びる髪、袖の下から出す超音波が武器
・先端に水晶のついた杖を持ち、吸血コウモリを操る能力を持つ
・冷酷無比な反面、戦闘員相手に実験が成功した際には笑いながら奇妙な踊りをする一面も持つ
一族特有の飛行能力を過信したため、特訓を積んだV3の前に敗北を重ねてしまいます。

その正体は【怪人死人(しびと)コウモリ】
「ヒマラヤの悪魔」という細菌で人間を操り、首都地区に住む団地の人間に暴動を起こさせる計画を実行するためにツバサ大僧正が変身した姿。鉤爪(かぎづめ)と腰にある無数の威嚇用吸血蝙蝠が武器。空中で高速回転させてV3を投げ飛ばすが、「V3マッハキック」によって翼を折られ、ツバサ大僧正の姿に戻ると死期を悟って棺の中に入り、デストロンの繁栄を願いつつ自爆した。

プロデューサー平山亨によれば、劇中で語られない以下のようなプロフィールが設定されています。
・200年前のヨーロッパ生まれで、元はキリスト教の牧師だった。極端な反思想を唱えたために地中海の断崖にある大寺院に200年近く幽閉され、その後1万匹のコウモリと共に人間の生き血を啜りながら驚異的に生き延び、身に着けた超能力で脱出しチベットへ向かった。

改めまして、故人様のご冥福をお祈りいたします(合掌)




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