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ウルトラQ(12) [ウルトラQ・ドラマ]

今回は、第27話『206便消滅す』を取り上げます。
監修;円谷英二
脚本;山浦弘靖・金城哲夫
特殊技術;川上景司
監督;梶田興治

◆江戸川由利子は、羽田空港で超音速ジェット旅客機206便の到着を待っていた。晴れ渡った空に向かい望遠鏡を覗いていると、別の用事で羽田へ来ていた一の谷博士が、由利子を見かけて声をかけてきた。

『あら、先生』
『どうしたんだね、おめかしをして・・・』

香港で行われたパイロットの講習会に万城目淳と戸川一平は出席して、その帰途にあることを告げる由利子。二人が香港発の206便に乗っていることを話すと、一の谷博士は嬉しそうに言った。
『香港からの206便というと、ついこの間就航したばかりの、国産超音速ジェット旅客機だね・・・』

由利子は、まるで自分が乗っているかのように嬉しそうな顔をしていた。それもそのはず、由利子たちはこのあと、銀座ですき焼きを食べることになっていたからであった。

だがその頃、羽田へ向かう超音速ジェット旅客機206便のコックピット内では、前方に不思議な光景が広がっていた。雲間に左巻きの巨大な渦のようなモノが見えていた。発見したのは副操縦士であった。

『機長、何でしょう?』

機長はじっとそれを観察しながら、どうするべきか判断しかねていた。その間にも、ジェット旅客機はどんどんその空間へ向かって進行していき、ついに吸い込まれるように渦の中へ消えていってしまった。

羽田空港では、あわただしく人が動いていた。206便に事故が発生しているらしいことが分かり、由利子は自分の会社(新聞社)へ電話して、その事を確認したのだった。

『とにかく、状況を知ることが先決だ。わしの教え子で管制塔の主任をやっている男がいるから、そこへ行ってみよう』

主任管制官に会って、状況を聞く一の谷博士。『どこのレーダー基地にも、206便の機影は映っていないのです。やはり事故を起こしたことは確実ですね・・・』

『どんな事故か、想像つきませんか?』
『さぁ・・・どこかに不時着したか、空中分解か・・・』

空中分解という言葉を聞いた由利子は、目の前が真っ暗になり、倒れそうになった。一の達博士と主任管制官に支えられ、近くの席に座らされた由利子。気が遠くなりかけたとき、管制塔の真上で大きな飛行音がしたのを全員が聞いていた。

『あの飛行音はなんだ?今時分、上空を通過するジェットは無いはずだが?』
『主任。レーダーには何も映っておりません・・・』
『何!』

マイクに向かい、必死に206便を呼ぶ管制官。だが応答は全く無く、ジェットの飛行音が上空から聞こえてくるだけであった。

由利子、一の谷博士、主任の3人は外へ出てみるが、音はすれども姿は見えず。まるで幽霊飛行機のようだと主任は言い、恩師の一の谷博士に意見を求めるのだった。

『先生。これは一体どういうことでしょう?』
『音が特殊な反射をして、こんな現象になったのかな?わしにも見当がつかんな・・・』

だが由利子の直感は、このジェット音が206便だと告げているのだった。3人は全く気付いてなかったのだが、上空に不可思議な雲が浮かんでおり、206便はその不可思議な空間に着陸していたのだった。

206便の機内では、不可思議な空間に突入する際のショックで、全員が気を失っていた。最初に目が覚めた万城目は、一平を起こすと窓の外を見た。そこから見える景色は、何かふんわりとした雲の上にいるような真っ白な世界であった。

一の谷博士に随行していた研究員が、206便の乗客名簿を見せてもらったところ、やはり万城目淳と戸川一平の名前があることが判明した。それから、オリオン太郎という凶悪な指名手配犯が香港で逮捕されて、刑事と一緒に乗っていることも分かった。

206便の機内では、大変なことが起こっていた。刑事に護送されていた指名手配犯オリオン太郎が、刑事が失神している隙に手錠を外し、刑事の拳銃を奪って乗客を脅していたのだ。

コックピットのトビラを開けたオリオン太郎は、拳銃で機長たちを脅して、コックピットから出るように言った。
『どうせ死刑は免れられないオレだ。皆にもお供をしてもらうぜ!』

両手に手錠をかけられた刑事を拳銃で殴り、やけになっている指名手配犯のオリオン太郎。反抗的な態度の万城目に向かって、拳銃を突きつけるオリオン太郎。だが、窓の外の景色といい、様子がおかしいことに気付いた万城目は、冷静に事を運ぼうとしていた。

まず、この自暴自棄になっている男を、冷静にさせて拳銃を奪うことだ。
『君は、ここがどこだか知っているのか!』

オリオン太郎に外の景色を見させて、争っている場合ではない事を解からせようとするのだが、オリオン太郎はコックピット内の通信機を破壊して、外部との連絡を取れなくしてしまうのだった。

飛行機の窓から見える景色は、まるで雲の上にでもいるような真っ白な世界であった。自暴自棄なオリオン太郎はこの世界に興味を持ったのか、機長と副操縦士、それに抵抗した万城目と一平を拳銃で脅しながら、4人を機外へ降ろし、最後に自分も降りていくのだった。

そして4人を先導させると、拳銃を4人に向けたまま、進むよう促した。白い雲に覆われて足元がよく見えないため、ゆっくり進んでいく4人。拳銃をかまえて、その後から進んでいくオリオン太郎。しばらく行くと、ゼロ戦の残骸を見つける4人。

他にも十数機の飛行機の残骸が、雲の中に沈んだまま動かない。風防が開いた状態でゼロ戦のコックピットに人が乗っており、それは少し動いたようにみえた。一平がそっと近づいて頭に触れると、まるで砂が崩れるようにパイロットの姿は崩れ落ちてしまった。

『ゼロ戦、グラマン、B29爆撃機。みんな、第二次大戦中の飛行機ばかりですよ・・・』
飛行機に詳しい機長はそう言うと、本物に出会えたことを嬉しく思ったのか、顔に笑みが広がっていた。

機長たちがいなくなった機内では、スチュワーデスが通信機を直せる者を客の中から探し出して、修理に取り掛かっていた。

ひょんなことから一平が転んでしまい、立ち上がると両手に何か水晶のようなキラキラ光る物体をつかんでいた。それを見たオリオン太郎は宝石と勘違いして、白く見えない足元に手を突っ込んで探り出すのだった。

これをチャンスとみた万城目は、スキを見せるオリオン太郎の後ろから襲いかかり、拳銃を奪い取ろうと格闘になった。格闘の最中に、オリオン太郎が思わず発砲した弾丸の一発は機長の右腕に当たり、もう一発は副操縦士の頭をかすめた。

苦しみもがく機長たちを横目に見て、格闘しながら万城目は、怪我をしたふたりを早く飛行機に連れ戻すよう、一平に促すのだった。

万城目はオリオン太郎との格闘に勝ち、底なし沼のような場所に足を取られたオリオン太郎は、沈んだまま上がって来なかった。
『た、助けてくれ・・・ああ・・・』

突然、遠くの方からケモノの咆哮が聞こえてきた。振り向くと、十数メートルはあろうかと思われる巨大なアザラシが、こちらへ迫ってくる・・・。万城目と一平は重症の機長と副操縦士をそれぞれ抱えて、急いで206便に戻っていった。

スチュワーデスが応急処置を施したが、機長も副操縦士も、旅客機を操縦できる状態では無かった。口にキバが生えた巨大なアザラシ怪獣は、206便に近づいて来ている。窓からその様子を見て、パニックになっている乗客たち。一体、どうしたらいいのか!

『僕が操縦しましょう。僕もパイロットです』
『お願いします・・・』

万城目は機長に了解を得ると、一平を連れてコックピットへ向かった。必死にエンジンをかけようとするふたり。だが、セスナ機とジェット機では、計器類にかなりの違いがあった。破壊された通信機が客によって修理を終え、使えるようになった。

『ディス・イズ・セブン・ツー・オー・シックス。オーバー』
万城目の通信が、管制塔に傍受された。

『206便、現在地を知らせよ!オーバー』
『それが・・・現在地は不明です!』

『206便に、コンパスは無いのか!』
事情を知らない主任管制官は、いらだった。

『万城目君、わしだ、一の谷だ。いったいどこにいるのかね・・・説明してくれ』
『それが、よくわからないんです。機体に物凄いショックを受けて、我々は失神していたんです・・・』

管制塔とのやりとりの間にも、怪獣トドラはどんどん206便に近づいていた。咆哮がさっきより大きく聞こえてきた。
『ここは巨大なアザラシの住む、恐るべきところです!』

『なに、巨大なアザラシ?!どうやら206便は、ある種の特殊な空間に迷い込んでいるらしい・・・』

機体後方から近づいて来る怪獣トドラに、操縦かんを引いてジェットの排ガスを浴びせながら、206便は離陸を始めた。ゴーという音と共に、不可思議な空間を飛び立つ206便。ややあって、前方の雲の中に左巻きの渦が見える。

『一平、あれが現実につながる壁かもしれんぞ。よし、いくぞ!』
『はい、先輩!』

凄い振動で操縦かんが持っていかれそうになりながらも、踏ん張っている万城目。管制塔のレーダーには、相変わらず何も映らない。だが、206便は竜巻のような渦巻きから脱出することに成功していた。やがて管制塔のレーダーに、206便の機影が映った。

『主任、206便です!』
スチュワーデスが、進行方向左側の窓から富士山が見えることを、コックピットの万城目達に伝えに来た。これで当機は、間違いなく羽田へ向かっていることが確認されたのだ。

不可思議世界から現実世界へ、戻ることができたのだった。コックピット内でサムズアップ(親指を立てて合図)する万城目と一平の顔に、ようやく笑顔が戻ってきた。 (終わり)


★★★★★★★★★★★★
怪獣トドラは、アザラシというよりはセイウチに近い。口のから下方向に生えたキバは、セイウチの特徴に似ている。



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ゆうのすけ

ウルトラQは リアルタイムでは見たことありませんが
夢の中の出来事のような 正体不明の恐怖感に どきどきしますよね。^^
by ゆうのすけ (2016-10-13 05:22) 

レインボーゴブリンズ

ゆうのすけさん、いつもありがとうございます(^O^)/ 当時幼稚園児だった自分は、白黒TVで(ペギラとか)見て怖かった記憶があります。ウルトラQが白黒フィルムで撮られていることが、今でも怖さにつながっている様に思います。
by レインボーゴブリンズ (2016-10-14 22:36) 

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