マグマ大使(9-1) [マグマ大使・ドラマ3]
今回は、第45話『日光に現れた海坊主の謎』を取りあげます。
原作:手塚治虫
音楽;山本直純
脚本;石堂淑朗
特撮演出;堺 武夫
特撮美術;入江義夫
特殊造形;照井 栄
監督;船床定男・菊地 奛
〖怨霊怪獣 海坊主〗登場
◆日光の杉並木道路を軽快に飛ばして行く、真っ赤なスポーツカー。屋根の無いオープンカーなので、風を切って走る音に負けない様に、カーラジオから流れてくるエレキギターの軽快なサウンドのボリュームを大きくして、運転する若い男。
隣に乗っている若い女も体でリズムを取りながら、ご機嫌な様子だ。
『もうすぐ日光ね!』
笑顔でそうささやく女に、笑顔で応える男。
『一丁、飛ばしていこうか!』
真っ直ぐにつづく杉並木道路の前方に人影が見えたので、かなりスピードを出しているこのスポーツカーの運転手は、クラクションを鳴らした。すると、その人影は突然巨大化して、周りの杉並木と同じかそれ以上の高さになってしまった。
急ブレーキをかけて車を止めた若い男も女も、急いで車から降りると、男は女の手を引っ張りながら、今来た道を逃げて行くのだった。どの位歩いてきたのか、ふたりは交番を見つけると、目の前で起きた出来事を2人の巡査に告げた。
恋人達でさえ見たことが信じられない出来事を、この2人の巡査たちはあっさり受け入れた。
『真っ白なのっぺらぼうの海坊主が、突然ヌーッと大きくなって、車の前に立ちふさがったんですよ!ホントですよ!』
『ホントですわ。まるで人間のお化けみたいなのが・・・恐い!』
海坊主のような怪物は、ふたりが逃げた後に残った真っ赤なスポーツカーをむんずとつかむと、杉並木に向かって投げ捨てた。車は大破、炎上してしまう。だが、海坊主はそのあと煙のように姿を消して、いなくなってしまうのだった。
『その海坊主みたいなヤツを見たのは、実は君達だけではないんだよ・・・』
警察では、複数の目撃者がいるこの現象について、極秘に調べているという。しばらくは、この件を他言無用にしてほしいと言う巡査の言葉に従う若い男女。
NPI東京支局の村上達も、この極秘情報について把握はしていた。今回で13件目の発生になるこの現象を、部屋に入ってきた村上が木田に知らせた。
『13番目の事件が起こったよ・・・』
『例のウミボ・・・。やっぱりゴアの新手ですかね?』
『かもしれん。そうでないかもしれん。今度のは、怪獣っていうよりお化けみたいで変だよ』
『事件の当事者だけに見えて、よくある第三者の目撃というヤツが、全くないですからね』
『それに13番目ともなれば、ゴアがなんらかの形で姿を現さないのはおかしい・・・』
国際緊急出動隊(スクランブル隊)でも、それは同じだった。ゴアが送り込んだ宇宙怪獣なのか、それともお化けなのか、単なる錯覚かもしれない。海老名隊長も判断しかねていたのである。この怪現象について情報を収集していたスクランブル隊では、ある共通点を見つけていた。
・普通の大人ほどの大きさから、奈良の大仏ほどに大きくなること
・事件の直後にはすぐに姿を消してしまうこと
・被害者は若者ばかりであること。
海老名隊長が、今度のゴアの狙いを村上に訊ねると、村上は逆に問い返した。
『今度の一連の事件は、果たしてゴアのしわざでしょうか?ゴアのしわざにしては、少し単純すぎるような気がします。それに、もう13度目なのに、ゴアからの挑戦の言葉一つありません』
いつもと違い、ゴアは沈黙を守っている。ゴアのやり方とは明らかに違うのだ。木田は、村上が考えていることを代わりに発言した。ゴアではない、新たなる侵略者の出現である。
同じことは、実はゴアの側でも起こっていた。怪物・海坊主の正体をつかみきれず、海坊主が先に、地球を侵略してしまうかもしれないとあせるゴア。ゴアにとって、地球人に侵略を諦めたと思われることは、ゴアのプライドが許さないのだ。
そこでゴアは、謎の怪物・海坊主がゴアの手先であると地球人に思わせる作戦に出た。東京のド真ん中にゴアの円盤が出現して、高速道路を襲い5重衝突事故を起こしたという情報が、スクランブル隊に入ってきた。
海老名隊長は、一連の事件はやはりゴアのしわざかと思うのだった。しかし本当の海坊主は、同じ頃、日光付近で別のダンプカーを襲撃していたのである。
『た、太郎!』
日光二荒山神社(にっこうふたらさんじんじゃ)の宮司・原田伍助が、袴姿のままフラフラと夢遊病者のように歩いて神社に戻ってきた。
それに気付いた巫女たちが、宮司を奥の間へと連れて行った。妻との間に子がいなかった伍助は、引き取った孤児の太郎を大事に育て、慈しんでいた。
だがある日、太郎は小学校帰りに交通事故に遭い、二度と伍助のもとに帰らぬ人になってしまったのである。ショックのあまり伍助は、太郎の名を叫びながら、時々神社を出て徘徊するようになってしまったのである。
宇宙の果てで異変が起きていた。「かに星雲」の中で超電磁波が異常増殖していることを、部下の人間モドキに知らされたゴア。かに星雲の異変と謎の怪物・海坊主。ゴアにも分からぬ事態が、ゴアを不安にさせた。
ゴアと海坊主は無関係だと考える村上は、木田と次長に次のように話した。
『海坊主の事件は、いずれも日光と東京とを結ぶ道路でおきているのに、ゴアの円盤が現れた場所は東京のド真ん中だ。この辺に謎を解くヒントがあるのでは・・・』
村上はスクランブル隊へ、木田は日光へと、それぞれ向かっていく。日光へ到着した木田は、日光駅前でマモルとガムに会う。ガムが日光へ来た目的は、アースの指示によるものだった。海坊主とゴアとは、アースも無関係だと考えていた。
人間を傷つける海坊主が、どうしてゴアの手先ではないのかと、モルが反論した。明快に答えられないアースだが、それよりも今アースが気にかかるのは、かに星雲だった。かに星雲内で、異常な超電磁波が増殖している。とにかく、ガムの目で怪物・海坊主を見てくるよう、アースはガムに指示をした。
二荒山神社の原田宮司は居眠りから覚めると、部屋に入ってきた妻のヒデに、ゆっくりとした口ぶりで妙なことを言った。
『今日は杉並木で、スポーツカーの若い連中を脅かしてやった。次はいろは坂で、ダンプカーを脅かしてやったんじゃ、ハハハハ』
『あら、ニュースをお聞きになったんですか?大きな海坊主の化け物が、また出たそうですよ・・・』
『人間など、みんな死んでしまえばいい。この地球も、滅びてしまえばいいんじゃ!』
机上に飾った太郎の写真を見ながら、そう言う伍助。太郎が死んでしまって以来、すっかり人が変わってしまった主人を心配する妻のヒデ。
ゴアは、かに星雲の超電磁波が地球のある場所に充満していることに気付いていた。それは、二荒山神社付近であった。日光に着いた木田達は、タクシーでいろは坂にさしかかろうとした時、いろは坂で暴れている海坊主を目撃する。
ガムが熱線砲を発射するが、海坊主に効果が無い。マモルはマグマ大使を呼んだ。マグマ大使がやって来て、いろは坂で海坊主と対峙する。マグマの熱線砲を浴びた海坊主は、どこかへ消えてしまった。
マグマに助けてもらった木田やマモルはお礼を言いながら、質問した。
『あの海坊主は、一体何物ですか?』
『ゴアの送った怪物ではないらしい。あの怪物は、あなた方人類の心と関係があるのです』
マグマが言った「人類の心と関係がある」とは、一体どういうことか?また、海坊主がゴアの手先で無いとするならば、その正体は一体何者なのか? (つづく)
★★★★★★★★★★★★
当ブログには写真の掲載が無いので残念だが、今回登場の海坊主の姿を、ぜひ見て欲しい。お金がほとんどかかっていない着ぐるみだ(笑)。さすがはピープロである。それはまるで、七輪の上で焼かれてプーっとふくらんだおもちに手足が生えた怪獣のようである。
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原作:手塚治虫
音楽;山本直純
脚本;石堂淑朗
特撮演出;堺 武夫
特撮美術;入江義夫
特殊造形;照井 栄
監督;船床定男・菊地 奛
〖怨霊怪獣 海坊主〗登場
◆日光の杉並木道路を軽快に飛ばして行く、真っ赤なスポーツカー。屋根の無いオープンカーなので、風を切って走る音に負けない様に、カーラジオから流れてくるエレキギターの軽快なサウンドのボリュームを大きくして、運転する若い男。
隣に乗っている若い女も体でリズムを取りながら、ご機嫌な様子だ。
『もうすぐ日光ね!』
笑顔でそうささやく女に、笑顔で応える男。
『一丁、飛ばしていこうか!』
真っ直ぐにつづく杉並木道路の前方に人影が見えたので、かなりスピードを出しているこのスポーツカーの運転手は、クラクションを鳴らした。すると、その人影は突然巨大化して、周りの杉並木と同じかそれ以上の高さになってしまった。
急ブレーキをかけて車を止めた若い男も女も、急いで車から降りると、男は女の手を引っ張りながら、今来た道を逃げて行くのだった。どの位歩いてきたのか、ふたりは交番を見つけると、目の前で起きた出来事を2人の巡査に告げた。
恋人達でさえ見たことが信じられない出来事を、この2人の巡査たちはあっさり受け入れた。
『真っ白なのっぺらぼうの海坊主が、突然ヌーッと大きくなって、車の前に立ちふさがったんですよ!ホントですよ!』
『ホントですわ。まるで人間のお化けみたいなのが・・・恐い!』
海坊主のような怪物は、ふたりが逃げた後に残った真っ赤なスポーツカーをむんずとつかむと、杉並木に向かって投げ捨てた。車は大破、炎上してしまう。だが、海坊主はそのあと煙のように姿を消して、いなくなってしまうのだった。
『その海坊主みたいなヤツを見たのは、実は君達だけではないんだよ・・・』
警察では、複数の目撃者がいるこの現象について、極秘に調べているという。しばらくは、この件を他言無用にしてほしいと言う巡査の言葉に従う若い男女。
NPI東京支局の村上達も、この極秘情報について把握はしていた。今回で13件目の発生になるこの現象を、部屋に入ってきた村上が木田に知らせた。
『13番目の事件が起こったよ・・・』
『例のウミボ・・・。やっぱりゴアの新手ですかね?』
『かもしれん。そうでないかもしれん。今度のは、怪獣っていうよりお化けみたいで変だよ』
『事件の当事者だけに見えて、よくある第三者の目撃というヤツが、全くないですからね』
『それに13番目ともなれば、ゴアがなんらかの形で姿を現さないのはおかしい・・・』
国際緊急出動隊(スクランブル隊)でも、それは同じだった。ゴアが送り込んだ宇宙怪獣なのか、それともお化けなのか、単なる錯覚かもしれない。海老名隊長も判断しかねていたのである。この怪現象について情報を収集していたスクランブル隊では、ある共通点を見つけていた。
・普通の大人ほどの大きさから、奈良の大仏ほどに大きくなること
・事件の直後にはすぐに姿を消してしまうこと
・被害者は若者ばかりであること。
海老名隊長が、今度のゴアの狙いを村上に訊ねると、村上は逆に問い返した。
『今度の一連の事件は、果たしてゴアのしわざでしょうか?ゴアのしわざにしては、少し単純すぎるような気がします。それに、もう13度目なのに、ゴアからの挑戦の言葉一つありません』
いつもと違い、ゴアは沈黙を守っている。ゴアのやり方とは明らかに違うのだ。木田は、村上が考えていることを代わりに発言した。ゴアではない、新たなる侵略者の出現である。
同じことは、実はゴアの側でも起こっていた。怪物・海坊主の正体をつかみきれず、海坊主が先に、地球を侵略してしまうかもしれないとあせるゴア。ゴアにとって、地球人に侵略を諦めたと思われることは、ゴアのプライドが許さないのだ。
そこでゴアは、謎の怪物・海坊主がゴアの手先であると地球人に思わせる作戦に出た。東京のド真ん中にゴアの円盤が出現して、高速道路を襲い5重衝突事故を起こしたという情報が、スクランブル隊に入ってきた。
海老名隊長は、一連の事件はやはりゴアのしわざかと思うのだった。しかし本当の海坊主は、同じ頃、日光付近で別のダンプカーを襲撃していたのである。
『た、太郎!』
日光二荒山神社(にっこうふたらさんじんじゃ)の宮司・原田伍助が、袴姿のままフラフラと夢遊病者のように歩いて神社に戻ってきた。
それに気付いた巫女たちが、宮司を奥の間へと連れて行った。妻との間に子がいなかった伍助は、引き取った孤児の太郎を大事に育て、慈しんでいた。
だがある日、太郎は小学校帰りに交通事故に遭い、二度と伍助のもとに帰らぬ人になってしまったのである。ショックのあまり伍助は、太郎の名を叫びながら、時々神社を出て徘徊するようになってしまったのである。
宇宙の果てで異変が起きていた。「かに星雲」の中で超電磁波が異常増殖していることを、部下の人間モドキに知らされたゴア。かに星雲の異変と謎の怪物・海坊主。ゴアにも分からぬ事態が、ゴアを不安にさせた。
ゴアと海坊主は無関係だと考える村上は、木田と次長に次のように話した。
『海坊主の事件は、いずれも日光と東京とを結ぶ道路でおきているのに、ゴアの円盤が現れた場所は東京のド真ん中だ。この辺に謎を解くヒントがあるのでは・・・』
村上はスクランブル隊へ、木田は日光へと、それぞれ向かっていく。日光へ到着した木田は、日光駅前でマモルとガムに会う。ガムが日光へ来た目的は、アースの指示によるものだった。海坊主とゴアとは、アースも無関係だと考えていた。
人間を傷つける海坊主が、どうしてゴアの手先ではないのかと、モルが反論した。明快に答えられないアースだが、それよりも今アースが気にかかるのは、かに星雲だった。かに星雲内で、異常な超電磁波が増殖している。とにかく、ガムの目で怪物・海坊主を見てくるよう、アースはガムに指示をした。
二荒山神社の原田宮司は居眠りから覚めると、部屋に入ってきた妻のヒデに、ゆっくりとした口ぶりで妙なことを言った。
『今日は杉並木で、スポーツカーの若い連中を脅かしてやった。次はいろは坂で、ダンプカーを脅かしてやったんじゃ、ハハハハ』
『あら、ニュースをお聞きになったんですか?大きな海坊主の化け物が、また出たそうですよ・・・』
『人間など、みんな死んでしまえばいい。この地球も、滅びてしまえばいいんじゃ!』
机上に飾った太郎の写真を見ながら、そう言う伍助。太郎が死んでしまって以来、すっかり人が変わってしまった主人を心配する妻のヒデ。
ゴアは、かに星雲の超電磁波が地球のある場所に充満していることに気付いていた。それは、二荒山神社付近であった。日光に着いた木田達は、タクシーでいろは坂にさしかかろうとした時、いろは坂で暴れている海坊主を目撃する。
ガムが熱線砲を発射するが、海坊主に効果が無い。マモルはマグマ大使を呼んだ。マグマ大使がやって来て、いろは坂で海坊主と対峙する。マグマの熱線砲を浴びた海坊主は、どこかへ消えてしまった。
マグマに助けてもらった木田やマモルはお礼を言いながら、質問した。
『あの海坊主は、一体何物ですか?』
『ゴアの送った怪物ではないらしい。あの怪物は、あなた方人類の心と関係があるのです』
マグマが言った「人類の心と関係がある」とは、一体どういうことか?また、海坊主がゴアの手先で無いとするならば、その正体は一体何者なのか? (つづく)
★★★★★★★★★★★★
当ブログには写真の掲載が無いので残念だが、今回登場の海坊主の姿を、ぜひ見て欲しい。お金がほとんどかかっていない着ぐるみだ(笑)。さすがはピープロである。それはまるで、七輪の上で焼かれてプーっとふくらんだおもちに手足が生えた怪獣のようである。
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2016-06-02 19:25
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