宇宙人像の模索 ~形態学的怪獣論40 [怪獣論・怪獣学E]
2体ずつ敵役を登場させるという設定は、かなりの苦闘を撮影現場に強いたのかもしれない。スノーゴンを操るブラック星人やレッドキラーを操るズール星人など、あえてその存在理由を問われるものも中にはあった。その一方で、力作と呼ばれるものも生み出されている。
まずバルダック星人。腹部に顔があるという点では、『セブン』のブラコ星人の系列に属するが、デザイン画を見ると、さらに積極的に全身のシルエットを変えんとする姿勢がうかがわれる。
頭頂部のハート形の形態、鳥のような口、つり上がった目など、全体の整合性を多少犠牲にしてでも、楽しくユニークなものをという、高橋昭彦氏の横溢(おういつ:あふれて盛んなこと)一品とみるべきだろう。
オリジナリティでこれに並ぶのは、熊谷健氏がデザインしたササヒラー。全体を三角形の中に見事に収めている。両足の裾の広がりは、袴(はかま)がヒントだろうか。モチーフは不明だが、顔・肩・首の区別無く幾何学模様を配しているなど、抽象芸術の香りさえ漂う。赤い模様はウルトラマンを模しているのかもしれない。
ストラ星人はW字形の兜のような頭部の形態と、腹部のパラボラアンテナという立派なオリジナリティを持ち、前の二つと比較すると小粒ではあるが、十分健闘している。
グロテス星人は、全身黄色という配色がユニークだ。頭部の形態は、恐らくは「魔人像」のいわゆる鍬形の部分の大胆なアレンジではないだろうか。武士の兜をかぶった宇宙人といってもいい。変形した両手の銃は、和洋折衷を狙ったものか。武器との合体という点は、超獣の先駆けではあるのだが。
番組強化案として登場したリバイバル怪獣達について。最高の人気を誇るバルタン星人は、そのジュニアという設定で登場した。いわゆる初代バルタンの子孫である。ゆえに両手のハサミも含め、全体的に手足も短く、小さめということなのだろう。
その意図は十分理解できるのだが、やはり造型面での状況悪化は如何ともし難い。デザイン的には初代の雰囲気を残しているが、例えば頭部のV字触覚の切り貼りのような造型、目玉焼きのような眼球、脚の節に施された飾りなど、惜しみて余りある。
ゼットンも然り。こちらは初代とまったく同じデザインのハズだが、初代の造型とは天と地ほどの開きが生じた。材質的な問題か、全体に緊張感が無く、バランスも崩れ、初代の持つ「洗練された美しさ」を喪失している。頭部のZ字触覚が、すべてを物語っている。
硬質感が皆無で、そればかりか前方に垂れ下がっているのだ。口と胸の発光体もどこか侘しい。初代ゼットンは単なる腕力でウルトラマンを倒したのではない。その優雅さ、知性、美しさなど形態が象徴する総合力によって、「最強」を強烈に印象付けたのだ。
過去の例をみる限り、初代を凌駕した二代目の例はほとんどない。過去の遺産に助けを借りず、常にオリジナルを生み出し続けなければならない宿命の過酷さ。だが、それを乗り越えてこそ称賛はある。
時代はやがて、「怪獣過剰」の段階へ突入していこうとしていた。第二次怪獣ブームは、昭和47年4月以降さらに活況を呈し、空前の特撮ヒーロー乱立時代が到来する。 (終わり)
★★★★★★★★★★★★
『帰ってきたウルトラマン』は昭和46(1971)年4月からの放送である。で、翌昭和47年に始まった特撮ヒーロー番組というと、
『アイアンキング』 『レインボーマン』
『ウルトラマンA』 『快傑ライオン丸』
『人造人間キカイダー』 『超人バロム1』
『トリプルファイター』 『変身忍者嵐』
『レッドマン』など。
『科学忍者隊ガッチャマン』や『デビルマン』などもアニメながら少年の筆者には面白かったので、テレビを消している時間がまったく無いのであった。(大げさ!)おじさんになっても、これら主題歌の1番なら全部歌える自信は95パーセントある!子供の時に身についたものは、勉強もアニソンもなかなか忘れないのだ!
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まずバルダック星人。腹部に顔があるという点では、『セブン』のブラコ星人の系列に属するが、デザイン画を見ると、さらに積極的に全身のシルエットを変えんとする姿勢がうかがわれる。
頭頂部のハート形の形態、鳥のような口、つり上がった目など、全体の整合性を多少犠牲にしてでも、楽しくユニークなものをという、高橋昭彦氏の横溢(おういつ:あふれて盛んなこと)一品とみるべきだろう。
オリジナリティでこれに並ぶのは、熊谷健氏がデザインしたササヒラー。全体を三角形の中に見事に収めている。両足の裾の広がりは、袴(はかま)がヒントだろうか。モチーフは不明だが、顔・肩・首の区別無く幾何学模様を配しているなど、抽象芸術の香りさえ漂う。赤い模様はウルトラマンを模しているのかもしれない。
ストラ星人はW字形の兜のような頭部の形態と、腹部のパラボラアンテナという立派なオリジナリティを持ち、前の二つと比較すると小粒ではあるが、十分健闘している。
グロテス星人は、全身黄色という配色がユニークだ。頭部の形態は、恐らくは「魔人像」のいわゆる鍬形の部分の大胆なアレンジではないだろうか。武士の兜をかぶった宇宙人といってもいい。変形した両手の銃は、和洋折衷を狙ったものか。武器との合体という点は、超獣の先駆けではあるのだが。
番組強化案として登場したリバイバル怪獣達について。最高の人気を誇るバルタン星人は、そのジュニアという設定で登場した。いわゆる初代バルタンの子孫である。ゆえに両手のハサミも含め、全体的に手足も短く、小さめということなのだろう。
その意図は十分理解できるのだが、やはり造型面での状況悪化は如何ともし難い。デザイン的には初代の雰囲気を残しているが、例えば頭部のV字触覚の切り貼りのような造型、目玉焼きのような眼球、脚の節に施された飾りなど、惜しみて余りある。
ゼットンも然り。こちらは初代とまったく同じデザインのハズだが、初代の造型とは天と地ほどの開きが生じた。材質的な問題か、全体に緊張感が無く、バランスも崩れ、初代の持つ「洗練された美しさ」を喪失している。頭部のZ字触覚が、すべてを物語っている。
硬質感が皆無で、そればかりか前方に垂れ下がっているのだ。口と胸の発光体もどこか侘しい。初代ゼットンは単なる腕力でウルトラマンを倒したのではない。その優雅さ、知性、美しさなど形態が象徴する総合力によって、「最強」を強烈に印象付けたのだ。
過去の例をみる限り、初代を凌駕した二代目の例はほとんどない。過去の遺産に助けを借りず、常にオリジナルを生み出し続けなければならない宿命の過酷さ。だが、それを乗り越えてこそ称賛はある。
時代はやがて、「怪獣過剰」の段階へ突入していこうとしていた。第二次怪獣ブームは、昭和47年4月以降さらに活況を呈し、空前の特撮ヒーロー乱立時代が到来する。 (終わり)
★★★★★★★★★★★★
『帰ってきたウルトラマン』は昭和46(1971)年4月からの放送である。で、翌昭和47年に始まった特撮ヒーロー番組というと、
『アイアンキング』 『レインボーマン』
『ウルトラマンA』 『快傑ライオン丸』
『人造人間キカイダー』 『超人バロム1』
『トリプルファイター』 『変身忍者嵐』
『レッドマン』など。
『科学忍者隊ガッチャマン』や『デビルマン』などもアニメながら少年の筆者には面白かったので、テレビを消している時間がまったく無いのであった。(大げさ!)おじさんになっても、これら主題歌の1番なら全部歌える自信は95パーセントある!子供の時に身についたものは、勉強もアニソンもなかなか忘れないのだ!
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