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ウルトラの星、光る時⦅1⦆ ~形態学的怪獣論37 [怪獣論・怪獣学E]

動物細胞と植物細胞を掛け合わせた究極の生命ともいえる細胞を、自分の手で作りだしたいと願うマッドサイエンティストの物語。そこに「青年期の孤独」を重ね合わせた物語だ。放映されたレオゴンは、小林晋一郎氏のオリジナルデザインではない。

原案の形態は、全身緑色のベムラーといった趣だった。脚本に「トカゲと食虫植物ウツボカズラとの合成」と書いてあったら、プロの仕事はこのようになるのかと思わせる出来映えのレオゴンは、米谷佳晃氏のデザインである。

米谷氏はウツボカズラにとらわれず、潜望鏡のように前方に湾曲した2本のツノとしてこれを処理し、全身を四脚型の堂々たる体躯に描いた。湖での格闘シーンを考慮し、水上に現れる背面を無防備にしないために一対のツノを付与したとのことである。

こうして、当時高校生だった小林晋一郎氏の原案を、練達のプロたちが誠実に映像化して出来上がったのが、「許されざるいのち」であった。

昭和46年12月24日。当時のアイドル天地真理の「水色の恋」が巷に流れていたその夜は、ハヤタとモロボシ・ダンがウルトラの星を輝かせるために史上初めて共演した、記念すべき夜でもあった。

『新マン』最大のクライマックスは、『ウルトラマン夕陽に死す』と『ウルトラの星、光る時』の前後編であろう。ウルトラマンの死という表現もショッキングだが、主人公の最愛の恋人坂田アキの死は、テレビを観ていた誰もがショックであったと思う。

他番組とのスケジュール調整のため降板のやむなきに至った榊原ルミ氏の事情は、今では広く知られている。しかしそれを死によって決着させるという手法に、当時多くのファンが胸を痛めたのではないだろうか。

子供番組、ウルトラシリーズのイメージ、『新マン』独自の家庭的暖かさ、それらのハートウォームな世界を根底から否定するような、残忍な設定。そのために用意された「稀代な悪役」こそ、ナックル星人とブラックキングだった。

意外にも、ナックル星人は『新マン』において明確な形態を持って登場した初めての宇宙人である(高橋昭彦氏デザイン)。ゼラン星人もメイツ星人も、亡霊のようなデザインだった。初の本格的宇宙人であるナックル星人は、凶悪無比、極悪非道とはどこか違う雰囲気がある。

デザイン画を見れば、顔面はサングラスをした強盗のようなイメージだが、白地の全身に散在する赤い半球体と手首足首の飾りは、どこかピエロを連想させる。変身後のいかにも悪役然とした態度よりも、冷静で理知的な変身前の研究所所長の姿に、むしろ凄みを感じる向きもあるかもしれない。 (つづく)


★★★★★★★★★★★★
郷秀樹の心を乱すために、冷酷無慈悲な作戦を計画実行したナックル星人は、地球では子供達にやさしい宇宙電波研究所の所長という顔を持っていた。演じたのはウルトラシリーズではよく顔を知られた成瀬昌彦氏である。

ウルトラセブンでは、第四惑星のロボット長官や宇宙のスパイ・プロテ星人の仮の姿・杏南大学の丹羽教授など、頭脳明晰で冷酷無比という役どころを見事にこなしておられた。残念なことに、1997年11月に73歳で亡くなられている。忘れがたい名バイプレイヤーであった。

ご冥福をお祈りいたします。(合掌)



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