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更なる飛躍へ ~形態学的怪獣論35 [怪獣論・怪獣学E]

第1クールを模索期、第2クールを確立期とすれば、第3クールこそはまさに『新マン』の充実期だったと言えよう。第2クールは、伊吹隊長という強力な指揮官を得て、MATは戦闘集団の色彩を明確にし、組織としての魅力は倍増、際立ち始めた隊員の個性やユニークな怪獣の特性などを軸に、物語は快調に滑り出した。

脚本・演出の面で、市川森一氏の復帰、山際永三、石堂淑朗、真船 禎の三氏の参入も大きかった。そして怪獣デザインにおいては、プロデューサー補だった熊谷健氏が自ら筆を振るう一方、米谷佳晃、高橋昭彦(井口昭彦)両氏の参加により、バラエティ豊かな怪獣を輩出することになる。

例えばバリケーン。クラゲの笠をかぶったタコのごとき軟体動物の集大成。ヘドラに通じる左右アンバランスな縦長の巨大な目。吸盤を思わせる真っ赤な口。笠を縁取る剛毛とざんばら髪のように垂れ下がった海草のような触手。おまけに頭部が回転して空を飛ぶのだ。

実相寺昭雄氏の脚本とも合わせ、見事なまでに人を食っている。言い換えれば、これ程の異端児を許容できる広さこそ、『新マン』ワールドの魅力であったのだ。

個性を極めることと、正統派であること。この両者は決して矛盾するものではない。それを証明したのが、『新マン』屈指の傑作オクスターである。水牛の顔とツノ。たったそれだけのキーワードから導き出されたかのような抽象芸術とも言うべき奇抜なフォルム。

既成概念にとらわれないという意味では、あのツインテールにも比肩しうる独創的な発想。手なのか足なのか不明。どこから肩でどこから背なのかも判然としない。だがそれらはいささかも疵(きず)ならない。高くそびえる山のごとき巨体から突き出した2本のツノを描きこんだ時点で、このデザインは勝利している。

これが実質的なデザイン・デビューとなる高橋昭彦氏の気概に満ちた会心の一作だ。造型もまた秀逸だった。白と赤の鮮烈なコントラスト。急角度の崖のような背面を覆う褐色の剛毛。適度な湾曲を備えた竹筒のような2本のツノ。

デザインの意匠を汲んでさらにパワーアップした顔面は、目も口も鼻の穴も堂々たる自己主張をして大胆不敵な面構えである。デザインより側方に移動し、先端を鈍的にカットしたキバの繊細さ。水底に沈んだ奇妙なる伝説の、最後に残った悲劇の守護神として、オクスターの形態は非常によく似合っていた。

米谷佳晃氏の手になる囮怪獣プルーマは、典型的な二脚恐竜型であるが、頭頂部から背面全体にかけてまるで雪ん子の雪蓑(雪みの)のような甲羅に覆われている点が極めて斬新である。甲冑怪獣の想定らしいが、そういえば両脚の模様は鎖帷子(くさりかたびら)のようにも見える。

胸から腹にかけての装飾も、強化された筋肉、あるいはサイボーグ化された保護板といったところか。造型もよくこれに応え、甲羅を覆う一面の鱗状模様や顔面の表情も秀逸で、単なる囮では勿体ない存在感がある。  (つづく)


★★★★★★★★★★★★
中盤以降、侵略宇宙人が連れてくるプルーマやレッドキラーなどの怪獣達が充実している感がある。宇宙怪獣と地球怪獣(もともと地球に生息していた怪獣の意)をデザインする上で、ストーリー的に配慮しているのかなぁ、と思わせる何かを感じるのだ。

脚本が先に出来ていて後からデザインを考えるならば、そういった部分を考慮することは可能だと思う。その逆で、出来上がったデザイン画を見て、脚本家がそれにあったストーリーを考えるというのは、素人考えながら、かなり困難なのではないだろうか。

だとしたら、ストーリーと怪獣デザインが合致した『新マン』の質は、スタッフの気合がよく合った、初期ウルトラ三部作に劣らない素晴らしい作品だといえると思う。



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