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第2クールは混成チーム ~形態学的怪獣論34 [怪獣論・怪獣学E]

アントラーの系譜を継ぐノコギリンも、快作だ。クワガタとカブトムシの融合した頭部、背中の彩色、硬質の手足など苦心のあとが見られる。着ぐるみの質感がもう少し硬質であればと、惜しまれる。熊谷氏は第2クールでは、他にビーコン、ザニカ、バキューモンも手掛けておられる。

このうちバキューモンは未だに怪獣ドラマ史上最大規模を誇る設定であるが、この抽象的なテーマに対して熊谷氏は、「人面」のデフォルメを忍ばせた(人の顔のように見えるデザインを施してある)ユニークなデザインを試みている。

結局ドラマでは黒煙のようなブラックホールとして描かれるにとどまったが、超巨大怪獣というコンセプトはのちに『ウルトラマンガイア』の中で、丸山浩氏が独自の解釈で答えることになる。

第2クールでは、熊谷氏以外のデザインが3点ある。東宝特美の(初代ゴジラを手掛けた)利光貞三氏によるサータン。熊谷氏との個人的な関係で、すでに完成していたデザイン画を登用し、あえて着ぐるみとしては難しいものへ挑戦した、とのこと。

さらには、ゴキネズラ。東宝の末安昌美氏の実弟で、円谷プロの営業におられた末安正博氏のデザインだという。カッパとネズミのイメージだそうだ。目の位置、頭部の形態、全身の躍動感など、きわめてユニークだ。そしてザゴラスの原案と第3クールの最初を飾るグロンケンは米谷佳晃氏のデザインである。

特にグロンケンはノコギリを生物に融合させた「超獣の元祖」とでも呼ぶべき傑作で、腹部のノコギリは東宝の怪獣ガイガンよりもこちらの方が早い。生物としての整合性よりもシナリオに書かれたキャラクターを優先し、なお且つ生物らしさも損なわれない、画期的なものである。

着ぐるみもオオカミのような堂々たる顔にみごとなノコギリを早やし(?)、デザインの意匠をさらにパワーアップさせている。またひとつ、『新マン』の自由度は広がったのである。

米谷氏からご指摘いただいた点を加筆しておく。グロンケンはキックボクシング→カンガルーのイメージでデザインされ、オリジナルの原画が存在するという。これまで各誌に掲載されたデザイン画は原稿ではない。造型用の指示のために新たに描かれたラフデッサンであるという。

当時米谷氏は、描く対象によって使用する画材(絵具、色鉛筆、紙質等)を変え、相当なこだわりを持って制作をされていたようだ。換言すれば、その情熱こそが新たな傑作を産みだしたのだといえよう。

様々な人々の参画の背景には、週一回のローテーションを何とかこなす必要があったと同時に、少しでも新しい怪獣を送り出そうという気運を大切にする制作姿勢があった。ドラマも怪獣も更なる充実を見せ始めた第2クール。

ザニカ、バキューモンの回でふたたび20パーセント台に回復した視聴率は、ついに最終回まで大台を割ることは無かった。『新マン』の世界はより独自の展開を深め、絶頂の秋へと突入するのである。 (つづく)


★★★★★★★★★★★★
バキューモンは、外から見た時に人面に見えるようなデザインになっていたのだが、映像のように無機質のブラックホール的な怪物として描くことで正解だったと、個人的には思う。バキューモンは生物だが、生物だから顔が必要と言う道理は無い。

ミドリムシやゾウリムシのように、顔らしい顔が無い生物だっているからだ。むしろ、顔が無い生物の方が一層不気味である。丸山浩氏が『ウルトラマンガイア』で描いた超巨大天体生物《ディグローブ》と巨獣《ゾーリム》が、形ある怪獣では最大規模になると思われる。


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