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混とんの幕開き ~形態学的怪獣論30 [怪獣論・怪獣学D]

ツインテール。この独創性は池谷デザインの頂点といっても過言ではない。驚異の高山造型は「造型に不可能無し」を印象づける出来映えで、尾の先端にまで緊張感のある配慮や柔らかな質感、全身を貫くシルエットの美しさなど、言葉を失う程である。

人間の体形を隠すという命題も見事にクリアし、あれほど自由に動き回ってもなおバランスが崩れないのは、高山造型ならではの奇跡である。共に一対のムチを持つ巨獣同士が、その武器をビュンビュンと振り回して激突する格闘シーンは圧巻であった。

池谷氏の意匠が、高山氏の造型を通して見事に表現されている。食うも食われるも命がけ、という生存競争の厳しさを象徴するかのような二大怪獣の壮絶な死闘は、歴史に残る屈指の名場面となった。

23パーセントの視聴率でスタートし、順風満帆に思われた「新マン(帰マン)」は、黄金週間をはさんでグドン、ツインテールの豪華共演による前後編の傑作を送り出したにも関わらず、その後の5、6月は10パーセント台の視聴率に甘んじることとなった。

全盛期、40パーセントに迫る快進撃を続けた「初代マン」とは比較にならない。時代の流れとはいえ、製作者側の大いなる期待は、早くも翳りを見せ始めたのであった。それは何故か。

重厚ではあるが、どこか沈鬱で説教臭の残るストーリー。毎回のように繰り返される「怪獣を見た」「いや、見ない」の不毛の議論。完璧なる超人であったはずのウルトラマンは、挫折し、努力し、成長するヒーローとなっていた。

新たに導入された「家族」「恋人」という設定も、重要な意味を持ったのはわずかで、本来の魅力を発揮するまでには至らなかった。かつてのスマートで洗練されたイメージであるウルトラマンとは異なる、「もどかしさ」が全編に流れていた。

そしてそれに呼応するかのように、怪獣達もまた精彩を欠いた。堅実でオーソドックスな池谷デザインはこの時期も常に新たな視点を模索し、「同一パターンの反復」という手法を様々な形で展開して、怪獣デザインの可能性を開拓した。

だが、12話までに登場した怪獣のうち実に10体までが二脚恐竜型という体形的類似点であることに加え、ほとんどが山間や岩場での「土にまみれた」戦闘という場面的な類似点があった。そのようなストーリー展開が、怪獣達の個性を弱めてしまった。新シリーズをけん引していくだけの破天荒な面白さに、欠けていたのだ。

振り返れば第二次怪獣ブームの幕開きとなった昭和46年。その嚆矢(こうし;物事の始まり)となった『宇宙猿人ゴリ』は、2週間に1体のローテーションではあったが、続々とユニークな怪獣を放った。

サタンローズ(ジャイアントロボに登場)型のヘドロンで幕を開け、正統派ツノ竜タイプのゼロンを着ぐるみで、カミナリ竜タイプのミドロンをモデルアニメーションで動かし、その後も重量感溢れるゴキノザウルス、暗黒のキングギドラというべきネズバードン、巨大な顔面のダストマンなどが『新マン』に先行する3か月の間に登場した。

いずれも洗練や完成度という形容とは若干の隔たりはあるものの、予算その他の諸条件を逆手に取ったような、まさにピープロの反骨精神ここに炸裂!といわんばかりの大迫力で、視聴者を引きずり込んだ。

ことにハトとネズミの合成怪獣ネズバードンは、同番組を代表する傑作中の傑作で、ウルトラとは一風異なる高山良策氏の大胆な造型によって、圧倒的な恐怖感をかもしだしていた。 (つづく)


★★★★★★★★★★★★
(ネズバードンの姿は、2本ある腕のそれぞれ先端にネズミ怪獣の顔が付いていて、背中にはハトの羽根が生えている。まさに首が2本のキングギドラのイメージである)

『帰ってきたウルトラマン』は超人ではなく、修行が必要な宇宙人に成り下がっていた。この当時、世の中はスポ根ブームで、歯を食いしばって試練に耐え、それを乗り越えて勝利をつかみ、爽やかな汗をかきながら喜びの涙を流すような主人公が人気だった。

初代ウルトラマンは、ゼットンに出会わなければ負けなしだった。当時脚本・監督を担当していた飯島敏宏氏は、ウルトラマンは絶対に負けない存在だと思って、いつも監督をしていたそうだ。それが負けるということは、相手はものすごい悪であるということだと、振り返って述べている。

そういう意味では、新ウルトラマンは、しょっちゅうと言っては語弊があるが、敗北⇒訓練⇒挫折⇒再訓練⇒勝利的なストーリーで、人間の成長そのままであると言える。今はそう感じるが、当時子供だった筆者をはじめとする視聴者は、ウルトラマンが登場すれば、それでよかったのである!



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