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正統か、独創か  ~形態学的怪獣論29 [怪獣論・怪獣学D]

第三話のサドラも、地味ながら味わい深い。テレスドンの変形したデットンと同様、全身はイモムシ状の体節から成る。モチーフがサソリであるときけば、この体節も手のハサミも得心が行く。しかし、サドラ最大の魅力はその顔である。左右に突出したツノもユニークだが、ズルそうな目とめくれ上がった上唇がたまらない。

角度によっては馬のようにも猫のようにも見える表情の妙。恐らくは偶然の所産だと思われるが、このような巧まざる表現の幅こそが、立体造形物ならではの面白さであり、他に代え難き「着ぐるみ」の魅力である。

第四話登場のキングザウルス三世は、極めて正統な怪獣である。足の裏に指紋まであるという高山良策氏の造型は、もはや至芸の域に達し、あたかも実在した生物のレプリカのごとき錯覚すら覚える。だが、確かに正統で誠実ではあるが、それ以上のプラスアルファの魅力があるだろうか。

我らが愛したウルトラ怪獣とは、正統でありながらなお独創性にあふれたものではなかったか。こちらの想像力を凌駕する「突き抜けた遊び心」に満ちたものではなかったか。

不安を抱き始めたところに、タイミングよく空前の傑作が登場した。グドンとツインテールである。池谷氏自身がお気に入りというグドン。その体表はサイがモチーフであるというが、全身に流れるイメージはアリジゴクであると思う。

身体が節に分かれているのは昆虫の特徴であり、さらに首のすくめ方、二本のツノの生え方など、アリジゴクを彷彿とさせる。装甲に身を固めながら、どこか哀調を帯びているのも池谷氏ならではの味だ。何と言っても、両手のムチが画期的だ。

これまで手の変形としては、バルタンのハサミ、メタリノームのフォーク、ドラコの鎌、メトロンの長い爪などがあったが、ムチは初めてである。ドラコのデザインの段階では右手が巻き尺状になっていたが、これも「収納」が考慮されており、グドンのように伸びっ放しのムチというのは例が無い。

地中を掘り進むときも役には立たないし、これでは捕食にも不便だろう。しかしそのような常識を覆し、デザインのユニークさを優先させたことこそグドンの神髄である。しかも、この一見無用のムチは、エサであるツインテールを捕獲するという機能に限って、がぜん説得力を増してくる。

高山氏の造型も、ただ感嘆するしかない。デザインの意向を心憎いまでに把握し、ひび割れた犬のような独特の顔も見事に立体化し、全体を流れるようなラインで貫いている。ムチの生え際も無理が無く、二本のツノの角度の妙に至っては、もはや神業としか言いようがない。どこから見ても、美しく、鋭く、毅然としている。ツノ先端部の曲がり具合一つを見ただけでも、まさに芸術である。

対するツインテール。この独創性は池谷デザインの頂点と言っても過言ではない。全身しとやかな「倒立するエビ」。 ナマズのようなカエルのような顔面に眠たげな目。中に入る人間の足を隠すための下方両サイドの突起物。

本来の顔の位置には、あたかも捕食者の目を欺くがごとき「両目のような発光体」があり、その下には口のような何とも不可思議な空間が開いている。そしてデザイン全体を引き締めるのは、先端の二本のムチである。スダール(ウルトラQに登場)以来の「ル」という語尾で終わる名前が、どこか洒落たイメージを与える。褐色に緑という配色も斬新である。 (つづく)


★★★★★★★★★★★★
エントリーから宇宙人を除けば、ウルトラ怪獣人気選挙ではいつも上位に顔を出している怪獣、グドンとツインテール。新マンは、宇宙人を廃し怪獣をメインに据えたウルトラシリーズとして、原点に戻ったのである。地球外からの侵略から地球内からの侵略へ、原点回帰したのだ。ただ、あのどこかホンワカした雰囲気のある科学特捜隊とは違い、防衛軍の精鋭部隊として失敗は許されない、命を削るような働きをいつも求められていたMATチームは、カッコいいけれども可哀想でもあった。



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