仮面ライダー1号秘話(12) ~1号ライダー本郷猛こと藤岡弘、氏が語るライダー撮影秘話! [仮面ライダー1号・その2]
《自分より大切な “何か” 》
あの頃、私はアパートに一人暮らしだった。早朝から撮影所に行って撮影の合間に昼と夜、弁当を二回食べ、深夜部屋に戻って夜食を食べて風呂に入ってバタン、キューという毎日が続いていた。
当時の最高のごちそうは、麺の上にお湯を注いだインスタントラーメンに生卵をかけた卵ラーメン、そして朝の牛乳だった。そんな食事でよく栄養のバランスがとれたなと自分でも不思議だけれど、とにかく卵と牛乳を採るとヤル気とファイトが湧いてきた。
毎日の撮影をこなすのに無我夢中で、おいしいものが食べたいとか、どこかに食事に行きたいとかいう気持ちは湧いてこなかった。その頃の私にとって、はじめてもらったテレビの主役、仮面ライダーの仕事は、ある意味で、自分自身よりも大切なものだったのだ。
自分の全存在をかけて取り組まなければならないもの。自分自身を捨てられるもの。今ここで燃え切らなければならないもの。いろいろと言い方はあると思うけれど、周囲の期待やスタッフの熱意を考えると、自分が大切とか怪我が怖いとか、何が欲しいあれが食べたいなどと言っている暇は無かった。
撮影が終わって家で風呂に入ると、湯に浸かった瞬間に跳び上がるほどの痛みを感じる。それまで緊張していて気が付かなかったけど、ハードな撮影で身体のあちこちに傷や打ち身ができている。傷口に湯がしみる。
そういったことに初めて気づくのが、お風呂の中。それでも湿布薬や赤チンを塗る程度で布団にもぐり込み、翌日の為に一分でも長く睡眠をとる。そういう毎日だった。
振り返ってみると、燃えることのできることに出合ったことは幸せだったと思う。それまでの養成所時代の自分は、ヤル気と根拠のない自信はあっても、自分を賭ける対象が無かった。自分より大切な何かが見つかれば、身体の傷や多少の“ひもじさ”なんて大したことは無い。
無我夢中になれるものが見つかれば、文字通り「我を無にして、夢の中」に浸れる。少なくとも何か物を創ろうという人間にとって、こんなに幸せなことはない。恋愛だってそうだろう。自分が一番大切だと思っているうちは、本当の恋愛なんてできない。
あの人のためなら死んでもいい、自分よりあの人のことが大切だと思えた瞬間に、相手も無我の心境になって愛をささげてくれる。それが真の愛だ。命を賭けて命よりも大切なもの。それが愛であり、愛こそすべてのエネルギーの根源だと思っている。
恋愛でも仕事でも、自分より大切な何かを見つけること。別な言葉で言えば、それは「大儀」だ。そしてそれと出合った時に無我夢中で頑張ること。燃え尽きること。それが、生き甲斐につながるのだと思う。
★★★★★★★★★★★★
今回の内容は、人生教訓とでもいえる内容のものだ。長く生きている先輩として、若い僕達に教えてくださったことと思い、よく肝に銘じておきたい。
ところで、前半の内容と同じことを、他の人も言っていたなと思って、思い出した。モロボシ・ダンを演じた森次晃嗣氏である。朝一番電車でロケ現場に出かけ、最終で帰る毎日だったと。大熱が出てもスタッフに迷惑はかけられないから、這ってでも行ったと。そんな毎日を1年間やり遂げた、無我夢中で演ったと言っておられた。ダンの役は、“自分よりも大切なもの”だったに違いない。
言い方は少し違うけど、古谷敏氏もウルトラマンをいつ辞めようかって考えながら、毎日やっていたという。でもある日、小学生の集団がバスに乗って来て、ウルトラマンの話を皆で楽しそうにしている姿を見て、考えさせられたそうだ。これではいけない・・・と。
三人とも、あの時しっかり取り組んでおいたから、半世紀たって高齢になった今でも、ファンからの声援をもらえるのだと、同じ言葉が3人の口から出てくる。
おかげで、永遠のヒーローはいつまでも輝いている。仮面ライダー、ウルトラマン、ウルトラセブン
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あの頃、私はアパートに一人暮らしだった。早朝から撮影所に行って撮影の合間に昼と夜、弁当を二回食べ、深夜部屋に戻って夜食を食べて風呂に入ってバタン、キューという毎日が続いていた。
当時の最高のごちそうは、麺の上にお湯を注いだインスタントラーメンに生卵をかけた卵ラーメン、そして朝の牛乳だった。そんな食事でよく栄養のバランスがとれたなと自分でも不思議だけれど、とにかく卵と牛乳を採るとヤル気とファイトが湧いてきた。
毎日の撮影をこなすのに無我夢中で、おいしいものが食べたいとか、どこかに食事に行きたいとかいう気持ちは湧いてこなかった。その頃の私にとって、はじめてもらったテレビの主役、仮面ライダーの仕事は、ある意味で、自分自身よりも大切なものだったのだ。
自分の全存在をかけて取り組まなければならないもの。自分自身を捨てられるもの。今ここで燃え切らなければならないもの。いろいろと言い方はあると思うけれど、周囲の期待やスタッフの熱意を考えると、自分が大切とか怪我が怖いとか、何が欲しいあれが食べたいなどと言っている暇は無かった。
撮影が終わって家で風呂に入ると、湯に浸かった瞬間に跳び上がるほどの痛みを感じる。それまで緊張していて気が付かなかったけど、ハードな撮影で身体のあちこちに傷や打ち身ができている。傷口に湯がしみる。
そういったことに初めて気づくのが、お風呂の中。それでも湿布薬や赤チンを塗る程度で布団にもぐり込み、翌日の為に一分でも長く睡眠をとる。そういう毎日だった。
振り返ってみると、燃えることのできることに出合ったことは幸せだったと思う。それまでの養成所時代の自分は、ヤル気と根拠のない自信はあっても、自分を賭ける対象が無かった。自分より大切な何かが見つかれば、身体の傷や多少の“ひもじさ”なんて大したことは無い。
無我夢中になれるものが見つかれば、文字通り「我を無にして、夢の中」に浸れる。少なくとも何か物を創ろうという人間にとって、こんなに幸せなことはない。恋愛だってそうだろう。自分が一番大切だと思っているうちは、本当の恋愛なんてできない。
あの人のためなら死んでもいい、自分よりあの人のことが大切だと思えた瞬間に、相手も無我の心境になって愛をささげてくれる。それが真の愛だ。命を賭けて命よりも大切なもの。それが愛であり、愛こそすべてのエネルギーの根源だと思っている。
恋愛でも仕事でも、自分より大切な何かを見つけること。別な言葉で言えば、それは「大儀」だ。そしてそれと出合った時に無我夢中で頑張ること。燃え尽きること。それが、生き甲斐につながるのだと思う。
★★★★★★★★★★★★
今回の内容は、人生教訓とでもいえる内容のものだ。長く生きている先輩として、若い僕達に教えてくださったことと思い、よく肝に銘じておきたい。
ところで、前半の内容と同じことを、他の人も言っていたなと思って、思い出した。モロボシ・ダンを演じた森次晃嗣氏である。朝一番電車でロケ現場に出かけ、最終で帰る毎日だったと。大熱が出てもスタッフに迷惑はかけられないから、這ってでも行ったと。そんな毎日を1年間やり遂げた、無我夢中で演ったと言っておられた。ダンの役は、“自分よりも大切なもの”だったに違いない。
言い方は少し違うけど、古谷敏氏もウルトラマンをいつ辞めようかって考えながら、毎日やっていたという。でもある日、小学生の集団がバスに乗って来て、ウルトラマンの話を皆で楽しそうにしている姿を見て、考えさせられたそうだ。これではいけない・・・と。
三人とも、あの時しっかり取り組んでおいたから、半世紀たって高齢になった今でも、ファンからの声援をもらえるのだと、同じ言葉が3人の口から出てくる。
おかげで、永遠のヒーローはいつまでも輝いている。仮面ライダー、ウルトラマン、ウルトラセブン
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