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成田怪獣デザイン最後の輝き ~形態学的怪獣論15 [怪獣論・怪獣学C]

イカルス星人は、堂々たる悪役として申し分のない面構えをしている。ペスターを思わせるコウモリ顔。洗練されているが、どこか愛嬌を感じさせる顔である。丸い眼球の直前に配置された眉毛のような構造が、アクセントとして利いている。

首から肩にかけてはバサバサとした剛毛が生え、まるであごひげをたくわえた海賊の風貌を思わせる。胸から下は一転して、白地にウロコのような模様が配させるのみ。意外なほど単純な構成だが、堂々たる個性と力強さを持っている。

三角形にまとめられた上半身、なで肩、肉厚のスーツがもたらす重量感。ずんぐりむっくりなのに、なぜかとてもカッコよく見える不思議さがある。体型的には「人間型」だが、顔は完全な動物で、「面長」でもなければ「変形」でもない。セブンの宇宙人のラインナップは、第1クールではこのようなイカルスをはじめとしたバラエティ豊かなものが多い。

第2クール以降は路線変更の影響か敵役が徐々に地味になり、ドラマはどんどん深刻化していく。それはまるで、成田氏の特撮美術、否、ウルトラシリーズへの情熱の陰りとも呼応しているようだ。そんな中で最後の輝きとでもいえるのが、プロテ星人だ。

プロテ星人の形態は実に不思議だ。何がモチーフか判らない。当時は「目玉焼き」と呼んでいたものだ。夜の闇を背景にすると、頭部の扇形の部分が真珠貝のように輝き、決して道化になってない。とても魅力的な宇宙人だが、これまでのデザインに通じる方法論のようなものがみえてこない。

どこかに発想の突破口を探りつつ、未完に終わったのかもしれない。そうした思いも、成田氏最後のウルトラ作品であるプラチク星人をもって潰える(ついえる)ことになった。

プラチク星人は、ワンタンのようなものを身に付けた形態でモノトーンの色調、とても地味であるが、実はこの外形よりもあとに出てくるガイコツの方に、重点を置いてデザインしたものだと成田氏は述べている。ペギラから始まった成田氏のウルトラでのデザインは、ここに完結する。(おわり)


★★★★★★★★★★★★
どんなものにも、翳りはやってくるものだ。筆者が小中学生時代の頃、ウォークマンを発売して世界市場を席巻したソニーが、21世紀に入ってアップアップしているように、「栄枯盛衰」いい時もあれば悪い時もあるのだ。成田氏の場合も、そういう時期に来ていたのではないだろうか。

「戦艦大和の怪獣アイアンロックス」とか「恐竜戦車」などは、あれのどこが怪獣なのか?と思うほど、オリジナリティに欠けている。メトロンやバルタンを生み出した成田氏の作品とはとても思えない。発想力には限界があるのだ。

ウルトラへの情熱が冷めたのではなく、発想力が枯渇してきたのだと筆者は思う。ひとりで怪獣デザインをしてきた成田氏にも、休みが必要な時が来たのだ。ちょうどそれは、怪獣達との戦いで身体にダメージを受けたセブンが、M78星雲へ帰るときが来たように・・・。



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コメント 1

通りすがり

「アイアンロックス」と「恐竜戦車」は成田さんの意にそぐわない要望で、それで嫌気がさして辞めたので、
確かに初期のデザインに比べればパワーダウンはあったかもしれませんが(予算やコンセプトのせいもあると思いますが)、
あんなデザインを自らするほど枯渇してはいないと思います。
ギラドラスの没デザイン(気に入っていたので心の離れた円谷で使わないよう自ら没にした)の甲狼を見るととてもネタ切れとは思えないので…
by 通りすがり (2016-08-18 17:08) 

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