SSブログ

宇宙人が連れてきた宇宙怪獣たち1 ~形態学的怪獣論11 [怪獣論・怪獣学C]

『ウルトラマン』において純然たる「宇宙怪獣」は意外に少ない。亡霊や落書きや想念の化身を除けば、ベムラー、ドラコ、スカイドン、キーラ、サイゴ、ゼットンを数えるばかりで、ゼットン以外は地球生物の原形を想像しやすい。

当時の映画界を見渡しても、帝王キングギドラは究極のデザインではあるが、発想自体は旧来の流れの中にある。だが昭和42年8月の終わり、ウルトラセブンが初めて紹介された『週刊少年マガジン』37号において、きわめて斬新な一頭の怪獣がカラーで掲載された。

それは今日までセブン怪獣の代名詞として、シリーズを代表する名獣エレキングの登場である。回転する左右のツノはギャンゴ、放電はネロンガ、湖からの出現はベムラーと、それぞれ先達があるにも関わらず、エレキングは強烈無比な個性を放っている。

第一にエレキングには「目」が無い。左右のツノの基部が丸く広がり、あたかも目のような錯覚を与えている。違和感は無く、どことなく愛嬌があり、ふたつとはない稀有なる顔。この発想は古今東西、エレキングただ一頭のみの快挙である。

第二にエレキングには開閉する「口」が無い。三日月形の光線を発射する半透明のスリット(歯型のような凹凸の刻み)はあるが、噛みつくことも食することもできない。にもかかわらず紛れもない「口」としての存在感。

第三にギャンゴでは左右に一直線に伸びていたツノが、エレキングではV字に配置され、しかも三日月形の形状(造型と当初のデザインとは少々異なる)が左右逆回転するために頭部の形態が刻々と変化する。それは存在しない目と開閉しない口の動きを補ってあまりある。

以上の点に加えて、指の別の無い手足や極端に長い尾などからも、エレキングは生物でありながら、同時にロボットとしてのニュアンスも強く感じさせる。それは宇宙人にペットのように飼われ、必要に応じて操縦されるという設定と無縁ではあるまい。別な見方をすれば、主人に仕える忠実な番犬のイメージ。

そういえば、「白地に黒の不定形模様」という画期的な体色は、猟犬ポインターを想起させる。奇しくもウルトラ警備隊の乗用車の名称に通じるが、シリーズ開始当初、デザイナーの頭の中でどのような脈絡があったのかは定かでない。

わずかに黒い斑点として処理された「鼻」のような部分も、犬の面影を残している。すっきりとした白亜の立ち姿は、しなやかでエレガント。それまでのゴジラやキングギドラの呪縛から完全に脱し、もはや「ウルトラ怪獣」としか呼びえないステータスを、エレキングは確立したのであった。  (つづく)


★★★★★★★★★★★★
筆者が最も好きな怪獣は、このエレキングである。あの白黒模様はホルスタインというウシの模様(ツノもあるし)からきているという説を何かで聞いたか読んだかした記憶があるのだが、おとなしい性質の牛から怪獣を発想するよりは、獲物を追う猟犬ポインターなら分かる気もする。

何よりも宇宙人の飼い獣(飼っている獣)であるという点で、犬であることの説明がマトを得ている。とにかくあのデザイン、目も無く口も無いのに、目も口もあるように見える顔の造型は、実に秀逸である。

ちなみに、牛に関わりがある怪獣という意味では、ウルトラマンエースにカウラという超獣が出てくる。牛神の祟りと異次元生物の合体獣であるが、ウシをベースにしたデザインになっている。



スポンサーリンク



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:テレビ

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。