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三角形のシルエットがもつ力強さ  ~形態学的怪獣論8 [怪獣論・怪獣学B]

セブンの第一クールに登場したアイロス星人は、全ウルトラ怪獣を代表する傑作のひとつであると思う。斬新な形態、鮮やかな色彩、宇宙人とも怪獣ともつかないデザイン。セブンが最強の必殺技ワイドショット初めて披露してようやく倒したのも、このアイロス星人が持つ形態の圧倒的な力強さがあったればこそ、画面上でも納得できる。

顔はカミキリ虫、頭髪のアレンジかと思われるような頭部、そして最大の特徴は左右に広がる巨大な翼と、脚の部分を消した変則的シルエットである。顔から頭部への複雑な凹凸の処理、それとは一転して両翼は単なる平面のままという対比、雪を頂く富士のような白と青のコントラストも鮮やかで、華麗な美しさを誇っている。

やや後方に翼をいっぱいに広げてポーズを取るアイロス星人は、堂々たる勇者の姿を感じさせる。三角形の組み合わせを持つシルエットは、第2クールの大傑作ギエロン星獣に継承されている。アイロス星人で意識的に消去された脚が、ギエロンでは二つの三角形として復活した。

刃物を連想させる両翼、随所にみられる鋭角的処理法、動きのおもしろさ。色彩こそ地味だが、これは出現理由を考えれば無理もないことで、画面いっぱいに噴出される放射能ガスの黄色ともども、悲壮感を醸しだしている。

ストーリーの完成度とテーマの重さから、「超兵器R1号」は不朽の名作であることは間違いないが、怒れる哲学者のごとき風貌を持つギエロン星獣の形態が無ければ、本作のインパクトも何割かは減弱されたのではなかろうか。

ポール星人と冷凍怪獣ガンダーも、ある意味では三角形のバリエーションに属する。ポール星人は胴体を消去するという、操演怪獣ならではの画期的な試みがなされている。人体の制約を受けないデザインは、デザイナーにとっては楽しくやりがいもあるようだ。

ガンダーの造型は正面からは大小ふたつの三角形にまとめられている。しかし背面は直線的に立体化された多角形としてデザインされており、もはや生物から出発したというよりは、幾何学的な形態の集合によって導かれたデザインであると言えよう。彫刻家成田亨氏の面目躍如足るものがある。

様々なパターンをやり尽した成田氏が、円谷プロを辞めるか否かで悩んでいた第二クールの最中に、提示してみせたデザイン方法。それはおびただしい数の怪獣デザインが出尽くした現在こそ、最も参考にすべき手法であるように思えてならない。

印象的で長く愛され続ける怪獣デザインは、そこに至る道程は険しく困難である。だからこそ我々はその苦難の末に生み出された怪獣デザインを愛し、その造型を愛し、日本人の英知と感性の珠玉の結晶として、「怪獣」というものを誇りをもって愛し続けることができるのであろう。

追伸として、特撮を語る上で見落としがちなものがある。例えばヴィラ星人の口の上で動く6本の触手。ランダムでありながら全体としては見事に調和した繊細な動きで、まるで生きているかのようである。これは造型に生命を吹き込む技術、『機電室』の仕事である。

すぐれた特撮はひとりではできない。様々な才能が結集してこその感を強くする。怪獣たちはまず、奇跡のようなデザインと造型があり、これに命を与える職人たち『円谷プロ機電室』の存在によって支えられているということを忘れてはなるまい。機電室と倉方茂雄氏の仕事が、今後さらに大きく評価されるべきであると、確信する。 (つづく)


★★★★★★★★★★★★
ギエロン星獣は誰が見ても、一級品の宇宙怪獣だと言えるのではないか(もちろん好き好きだが)。超兵器R1号の破壊力にも耐えた身体は再生能力を持ち、セブン必殺のアイスラッガーをはね返した鋼鉄の翼。しかもR1号の放射能を自分のものにして、口から灰を吐き出すというスゴイ能力の持ち主だ。これは人間が作ってしまった、最強の宇宙怪獣だと思うがどうだろう。

ガンダーについては、もっとセブンとの闘いに時間を割いてほしかったと思う。雪の中でのダンの彷徨(ポール星人との幻想的な戦いも含め)が長かったし、ミクラスとの戦いもあったため、セブンとの対戦が少なかったのが残念だ。好きな怪獣のひとつである。

機電室の倉方氏については、全くその通りだと思う。怪獣が本当に生きているがごとく見えるのは、口や目、触手や尻尾などのような部分が、手足と違和感無く連動することで、躍動感ある生き物のように見せることができるわけで、僕達はデザインのすばらしさばかりに目が行ってしまうが、「機電室」の仕事の大事さをもっと知ると、怪獣の見方がより楽しくなるように思うのである。

宇宙恐竜ゼットンの電飾部分の動きが素晴らしいし、火の玉を吐くときにツノが傾きを変えるときが、何とも言えずカッコイイなぁと、いま突然、思い出したのである。


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