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異星人のシルエット  ~形態学的怪獣論4 [怪獣論・怪獣学B]

デザイナーの成田亨氏は、ウルトラQの中で、セミ人間(正式にはチルソニア星人)とケムール人という2体の宇宙人をデザインしている。セミ人間は文字通り、人間の頭部をセミに置き換え、全身に透明なスーツを着せた比較的オーソドックスなスタイルだが、ケムール人はエジプト絵画の技法を取り入れた画期的デザインとなった。

見えない部分も同時にみえるという技法によって生まれたこの頭部は、顔そのものなのかヘルメットの変形なのか明確でないが、さらにケムール人は、肉体そのままなのか特殊な宇宙服をまとっているのか判然としない、という大きな特徴を持っている。これはウルトラマンをはじめとして、その後の宇宙人に共通する特徴である。

ウルトラセブンのような戦闘タイプのものでは、やはり特殊宇宙服であろうとの予想になろうが、では頭部はどうなのかという疑問が依然として残る。同じことはセミ人間の発展型のバルタン星人にも言える。あの外観は生物の体そのものなのか、武装しているのか。

あの巨大なハサミから、どのようにして高度な文明を築き上げたのか。それらに対する回答は、たぶんこれからも出されることは無いだろう。それはそれでいい。ファンタジーなのだから。そしてこの「感性」こそが、他に類をみない独自のデザインをこれから輩出していく原動力になったのだから。

ザラブ星人は、バルタン星人を経て登場した『ウルトラマン』における二種類目の宇宙人である。ボディは「海底原人ラゴン」の流用であるらしいが、肩から上のデザインが印象的なため、ほとんど気にならない。正確にいえば、ザラブ星人には肩が無い。

バルタンにつづく宇宙人をデザインするにあたり、成田氏は「人間のシルエット」を崩すところから始めようと考えたのではないだろうか。それは「人体から発して別のシルエットを提示する」という革新的な発想である。その手始めが、「肩を消す」ことだった。

ザラブ星人のデザイン過程想像図は、「人面のデフォルメと失われた肩」ということになる。まず銀色に輝く人間の顔がある。真っ先に鼻を消す。そして目を吊り上げ、眼球を消し、全体を図形的に処理して単純な凹凸で表現する。さらに口はヒトデやイソギンチャクのような、円形が放射状に開閉する形態とした。

耳は単純化して陥没させ、口と目の間の「ほお」はエクボのようにへこみを施す。ここまでならよく出来た「悪党仮面」、ザラブを異星人たらしめているのは、まぎれもなくあの「失われた肩」なのである。そしてそれは、生身と宇宙服との別を「曖昧」にしたからこそ成し得たデザインなのである。

この方法はジャミラにも応用された。厳密にいえばジャミラは宇宙人ではなく、変化した地球人の姿である。しかしデザイン的には、人間から発して人間とは異なるものへという点で、まさに一致している。

顔はザラブよりも人間の面影を残し、鼻孔や唇はある程度生々しく、首と肩の一帯はアメフトのプロテクターのように張り出している。このシルエットは強烈だ。通常の肩の位置を変えて人間のシルエットを崩したという点で、同義である。

さらに言えば、三面怪人ダダも結果的には頭部の大きさのために、肩は失われている。三つの顔が場面場面で変化するという画期的なこの試みは、当初の狙いほど上手くいったかどうかは不明だが、単なる「かぶり物」を超えた面白さを見せてくれた。

考えてみると、三つの顔が変わる必然性など、ドラマの上ではまったくない。言うなれば、デザイン側からの発想で見せるというところに、『ウルトラマン』の凄さがあると思うのである。 (つづく)


★★★★★★★★★★★★
どちらかといえば、日本人の思う宇宙人が人間型であるのに対し、欧米人の思う宇宙人は、動物とか昆虫のような、人間の顔形からは外れている印象がある。映画『スターウォーズ』の酒場で楽しんでいる様々な姿の宇宙人たちや、ジャバ・ザ・ハットのような爬虫類型、軟体動物や昆虫を原型にもつ姿をしたものが多い。

そしてエイリアンやプレデターに代表されるようなクリーチャーと呼ばれる造型物の登場により、異星人は新たな質感の変化を見せるのだが。手足は二本ずつ付いているが、顔は人とは似ても似つかない物が欧米型宇宙人。それに対し、サングラスやヘルメットをかぶっているが、見た感じはあまり違和感の無い人間に近い形をした宇宙人を、私達は子供の頃のゴジラやガメラの映画で観てきた。

そのイメージを変えるような事件を、円谷プロの成田亨というデザイナー、そして高山良作という造形家が起こす。ウルトラQのケムール人が出現し、ウルトラマンでバルタン星人が出現する。いままで銀色の宇宙服を着ていた人っぽい宇宙人とは似ても似つかぬ、新しいタイプの宇宙人像を生み出したのだ。

これを革命と言わずして何と言うか。本文にも書いてあるが、服を着ているのかいないのか判断が付かない体つき。これはウルトラマンにも言えることだ。もし裸の状態なら、鳴動・点滅するカラータイマーは、素肌に直に付いているということになる。

今までの常識を打ち破った宇宙人を創造してくれたこのお二方に対し、我々は拍手を惜しまないものである。



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