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四足怪獣の王道「ネロンガ」  ~形態学的怪獣論1 [怪獣論・怪獣学B]

ベムラーやレッドキングが二脚怪獣の決定版なら、ネロンガは四脚怪獣の決定版を意図してデザインされたという。成田亨氏のデザインでは、ウルトラQに出てくるゴルゴスに似て、うずくまる山のような体形に顔が付いている。

色彩を派手にしようと、背中にトラの模様をヒントにして黄色を導入したということだが、当初からネロンガはパゴス(ウルトラQ怪獣)の改造が決まっていたらしく、形態的にさほどの独創性は感じられない。顔も東宝怪獣バラゴン以来の「鼻にツノ、耳に飾り」というパターンを継承している。

下あごから生える2本のキバが、唯一の特徴とも言える。だがこのキバこそが、ネロンガをユニークな顔を持つ怪獣へと変貌させた理由であった。

ネロンガはもっとも似顔絵の描きにくい怪獣のひとつである。記憶だけを頼りに一度描いてみると判るが、ほとんどバランスを取るのに失敗し、まとまりの無い顔になってしまうだろう。元々ネロンガの顔は、うまくバランスを取るようには出来ていないのである。

下あごからキバが生える怪獣の先駆けは、言うまでもなく「ガメラ」である。ほとんど唯一の装飾であるこのキバがガメラの顔を単なるカメと区別している点で、驚くべき独創性と言わざるを得ない。

ガメラの場合、2本のキバは下あごから外側に向かって逆ハの字に開いているため、顔に刺さることは無く、下あごの形は大きく広がる必要が無い。

ところが、ネロンガは違う。何気なく描かれた下あごのキバを収めるため、造型家佐々木明氏は、キバの生える部分を思い切り外側へ広げたのである。さらにキバがぶつかる上あごの部分を、内側へ若干えぐった。

このためにネロンガの正面からの顔は、あえて言えば、「ドリフ・志村けん氏のアイーン」顔とでもいうべき、独特の表情を持つものになった。まるで笑っているかのように、閉じることもできない大きな広がった口。強烈な個性の顔の持ち主となった。

怪獣デザインにおいては、いわゆるカッコイイ怪獣は、頭も口も鼻孔も小さくなる傾向がある。その方が全体のシルエット的にも、また細部のバランスにおいても、まとまりが良いのである。ネロンガは、まさにこうした流れの反対側に位置している。

整然という概念からは外れた存在の、常識外れの不思議な魅力の顔を持つ怪獣である。ネロンガの表情を独特にしている要素のもう一つは、「目」である。もう少し正確に言うと、眼の周りを覆う高まり、つまり「眉」の部分である。

通常ここは、凶暴な表情を演出するために吊り上がることが多い。だがネロンガの眉は、むしろ下がっている。このため角度によっては、困ったような、泣いているような、何とも不思議な表情を醸しだす。

顔面の鼻先から生えているツノは、単なる円錐形では無い。円錐をいちど潰して、二か所に折り目を付けてから、再度膨らませてできたような円錐形をしている。さらに耳に相当する部分から出た触覚は、後ろになびいている時はツノとキバとほぼ平行に位置し、触覚を回転させて前方へ向きを変えると、ツノの頂点で三つがまとまるような形態を取る。

ネロンガのデザイン画ではこの触覚は描きこまれていないので、いつ、どんな理由で造形する時に付け加えられたのかは、不明である。怪獣ネロンガの着ぐるみに入っているのは、ご存じゴジラに入った中島春雄氏である。ネロンガの着ぐるみはゆったりと出来ている感じで、それが怪獣の重量感・巨大感を表現するのに、大いに効果を発揮している。

ウルトラマンにその巨体を叩きつけられると、画面全体がダイナミックに躍動するのだ。中島春雄氏の演技が、ネロンガでなければ出来ない動きを見事に表現していて、「怪獣に命を吹き込むこと」の良いお手本を見せてくれている。

ウルトラマンの水準の高さを支えている両雄、洗練されたバルタンと土臭さのネロンガ。怪獣デザインの原点としてのネロンガの魅力は、今も新鮮である。


★★★★★★★★★★★★
筆者はネロンガという怪獣は、正直なところ、あまり好きではない。やはりカッコよさという点では、マイナス点が大きい。バルタン星人のスマートさが、その差をより広げる。だが、記事は、「四足怪獣の元祖はネロンガにあり」という。それは、なんとなく納得である。

何事も元祖は、カッコわるいのだと思う。そこからすべてが始まるのであり、そこから進化して、より良いものが生まれていくのだから。「ネロンガ」がビッグバンを起して、「大怪獣」という宇宙が限りなく広がっていくのである。


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