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宮内洋、ヒーロー一本道(2) ~大人の集団『秘密戦隊ゴレンジャー』その1 [宮内洋・1]

『5人揃って、ゴレンジャー!』アカ、アオ、キー、モモ、ミドの5色。『ファイブレンジャー』としなかったところがミソだったと故・平山亨氏も言っていたが、『ファイブレンジャー』よりも『ゴレンジャー』という音の響きがいい、言いやすいということが大事なポイントであった。

言い易ければ覚えやすいし、受け入れやすいということにつながるのだろう。歌舞伎の『ご存じ白波五人男』が発想の原点にあるという、石ノ森章太郎氏の話だ。

ヒーローはひとりで戦うという今までの常識を打ち破った、新しい形のヒーロー像であり、それと同時に女性ヒーロー(ヒロイン)が加わるという流れをも作った。だが見方を変えると、一人ひとりは弱いのかもしれないし、一人でも欠けると必殺技(最終兵器)が出せないという大きな欠点も存在する。

だからチームワークの大切さを教えるには、格好の教材と言える。まさに宮内洋氏の言う『ヒーロー番組は、教育番組である』という線を外していない所は、さすがだ。しかし、何人いても一人ひとりが最善を尽くさないと駄目なことに、変わりはない。

ズルをして一人でも力を抜いたとき、団結力は乱れ相手を倒すことは叶わないだろう。テニスや卓球のダブルスという戦い方は、ペアのうちの一人が強くても相棒が弱いとその弱点を突かれてしまい、勝ち抜くことは困難である。多いことが、必ずしも有利という訳にはいかないこともある。チーム力を発揮することの難しさであろう。

では、宮内洋氏の話をどうぞ。

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メンバーが五人いると団結をモットーとするためには、リーダーが必要になってくる。そのためには隊長を決めなくてはならないので、その役割をアカレンジャーがすることになった。隊長は出ずっぱりである。宮内氏はスケジュールの関係で、ゴレンジャーに出ずっぱりは無理。

そこで宮内氏の演じる色は、アカ以外ということになった。モモとキーは、無理。そこでアオかミドリのどちらかということになって、『どちらでもいい。宮内洋が演じるのだから、どちらの色でも頑張るだけだから、アオを、新命明を演らせて頂きます』ということで、アオレンジャーに決まった。

単なる部下の隊員じゃ無くて、隊長が一目置くような隊員でもいいかと思って石ノ森章太郎先生に相談したら、『隊長アカが宮本武蔵で、アオが佐々木小次郎で演ったらいい』というヒントをもらいスタートしたのが、『秘密戦隊ゴレンジャー』というわけだ。

スケジュールの関係で、新命明が出演せずにアオレンジャーだけが出演した回が何回かあった。この手の作品はオールアフレコなので、声の出演は毎回必ずしていた。

アフレコと言えば、当時キレンジャーを演じていた畠山麦さんが宮内氏の近所に住んでいたようで、いつも一緒に食事をしたり呑みに行ったりしたという。劇中、バリブルーン、バリドリーンという飛行機が登場するが、その操縦席にはいつもアオとキーがいる。キーは役名、大岩大太。

 キー 「新命どん、敵が来よりましたばい」
 アオ 「大ちゃん」

 キー 「あいなァー」
 アオ 「スタンバイ、オーケイ」

 キー 「スタンバイ、オーケイ」
 アオ 「参りましょう」

 キー 「参りましょう」
 アオ 「フライトスイッチ、オン」    「ミサイル発進、ゴー!」

と、このようなやりとりはふたりで考えたもの。最初の回で撮り終わってアフレコのとき、この二人の会話を監督が感心していた。それで次の台本には、しっかりとこのようなやりとりが書き込まれる様になったそうだ。

アオレンジャーが持っている『ブルーチェリー』という武器も、台本ではただのアーチェリーだったのを、アフレコの時に『ブルーチェリー』と宮内氏が吹き込んで、そのまま採用になったものだ。

新命明が単独行動をとる回の話にはタイトルに『青い~』となっており、アオレンジャー編である。このような回はアクションが派手なので、男の子には人気があったようだ。飛行機で飛び、敵中に潜入することの多かった新命明。なかなかアオレンジャーに変身しないのが、宮内氏だ。

新命明でヤッテやってやりまくって、最後にアオレンジャーの登場となる。特に張り切ったのは、静岡県浜松の舘山寺でのロープウェイアクション。命綱を使わずのワンカットアクションを、監督・カメラマン・アクションディレクターと打ち合わせに打ち合わせを重ねた。

そしてさらに、『ロープウェイの屋根の上のロープの接点の所に立ちたい』と主張して決行した。よりスリリングなものを皆に見せたいという気持ちからだったというが、下の湖面までは100メートル、落ちたら一巻の終わりだ。

当時所属していた丹波プロのマネージャーは当然止めに入ったが、辞める宮内氏では無い。台本にはただ、『山を登って敵のアジトに侵入』と書いてあるだけなのに、こんな危険なスタントをしてのけるのが、男・宮内洋なのである!  (つづく)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
驚きである。いや、さすがというべきかもしれない。台本に普通に書いてあることを、わざわざこんなに《命がけの仕事》に書き替えてしまうなんて!もちろん、計算つくされた行動の上に演るのだから勝算はあるわけだが、程度の差はあれ危険なことは危険、それを命綱無しで実行してしまうとは、さすがヒーローを演じるために生まれてきた男、宮内洋である。



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